男には、負けるとわかっていても戦わねばならないときが・・・

文字数 3,105文字

「どーいうことだよー!!」
教会の、旧会堂。
ノートパソコンでスカイプをつないで、カナダの叔父をよびだした。
時差?関係あるかー!
     
みんな、先ほどのダリア?さんの言葉にかたまっていたけど、
葉一の、
「ま、ま、ここじゃ、なんですから・・」という声で我に返り、
葉一の案内にしたがって、教会にはいった。
(お前の教会じゃないだろ・・・)
     
ぼたんちゃんが、
「ここはね!台所!ここがね!トイレで、この扉からが、礼拝堂だよ!」と、
ダリアさん、ゆりさん、葉一に教会の中を紹介しはじめたけど、
こちらは一緒についていくどころじゃない。
ダリアさんに少しきいた話では、どうやら叔父がからんでいるらしい。
     
『あー、よしゅあ?元気か?』
「元気だよ・・!それで、いま、ダリアさんがきてるんだけど!」
『おー、よかった、無事着いたか!
 やまのべ教会は田舎だから、空港から行くのは難しいと話しててな!
お前にむかえに行かせようと思ってたんだが、ダリアが一人で行く、ときかなくて  な!』
「そ、それより、ダリアさん、変なこと言ってるんだけど・・」
『変な事?』
「許嫁とか、フィアンセとかいってましたけどっ!」
“ぼたんちゃんの教会ツアー”に参加しないで、ずっと隣に座っていた
 さくらが会話に割り込んできた。
『おお、さくらじゃないか!元気か?大きくなったなぁ!』
「おじ様、お久しぶりです、、、それで、許嫁って?」
『あれ?ダリアから、きいとらんのか?ダリアは、親同士が決めた許嫁で・・・』
初耳です。
『まぁ、二人が小さい頃に親同士がした約束でな!
 兄さんも召されてしまったし、どこまで本気だったかわからんが、ダリアと、その両親がかなり積極的でな!
先生との約束を果たして、二人が結婚して、ゆくゆくは二人でやまのべ教会を、とー」
      
ぶち。
さくらが、ものすごい笑顔で、パソコンのケーブルをぬいた。
「ご、ごめーんよしゅあ・・・手がすべっちゃったぁ★」
さくらさん、セリフ、なんだか棒読みですよ・・・★

教会めぐりがおわったらしいみんなと、お茶をすることにした。
えーと、お茶はこの棚の中だっけ、、
みんなには先にテーブルでくつろいでもらって、キッチンカウンターをはさんだ台所でお茶の準備を始めたんだけど、
どこになにがあるのかいまいちわからない・・・

いつもは婦人会の方々がお客様をもてなしたりしてくれてるから、
俺が、お客をもてなすことってなかったからね・・・!
    
「よしゅあちゃん、お客様用のお茶はここにあるよ!お菓子は下の戸棚!」
みかねたのか、ぼたんちゃんが助けにきてくれた。
小さいのに、テキパキとうごく姿が頼もしい・・・!
「お客様用のティーカップじゃなくていいよね!
よしゅあちゃん、そこのおぼんとって?」
言われるままに、おぼんをさしだす。
「ぼたんちゃん、俺より詳しいね・・!尊敬するな・・」
「えへへ、日曜日はママたちとランチ準備のお手伝いしてるもーん!
よしゅあちゃんもたまには台所のお手伝いしなきゃね!」
「やっぱり?いつもPA機材の片づけしかしてないからなぁ・・・」
「じゃあ、今度のランチのときにぼたんがおしえてあげる!」
「へぇー、日曜ランチしてるの?ここで?」
 葉一が手伝いにきてくれた。
 葉一は基本、女の子に優しい紳士だ。
いまも、俺だけが台所でわたわたとしてたら、
女の子たちとテーブルで楽しく話したり、
ニヤニヤとこちらを見てたりする気がするんだけど、
ぼたんちゃんが小学生なのにみんなのお茶の支度をする、となると
さっと、手伝いにこれるんだなぁ・・・
「そうだよー!教会のみんなで、礼拝のあと、カレー食べたりするの!」
「へぇ。ぼたんちゃんもつくるの?」
「ううん、あたしはまだ準備を手伝ったりするだけ!
  でもママは、一回で三リットルのカレー作るよ!」
「すごいね・・・!あ、よしゅあ、ここは俺にまかせて、早くむこうにいけよ、
 ・・・すんごい、空気が痛いから・・・・!」
  ??
ちらっと、むこうのテーブルを見ると、あいかわらずニコニコしたダリアさんと、
口元は笑っているんだけど目が怖いさくらと、
うつむいているゆりさんが三角形を描くように座っていた。
葉一とコソコソ話す。
「空気、痛いか?」
「お前、あの空間のいたたまれなさがわからないのは大物だよ・・!
 ・・ダリアさんの“フィアンセ”発言から、女子の空気が怖くなったの、
 かんじないの?」
「??」
「あー、なんでこんなのがモテるんだろ!」
「え、よしゅあちゃんってモテるの?」
「いや、ぜんぜん。お前、変な事いうなよ・・」
外国人に緊張してるだけだろ。
「えー、そうなんだー・・よしゅあちゃん、モテるんだ・・・」
ショックうけすぎじゃない?
・・・・いや、ホントはモテないから、その反応で正解なんですけど。
    
お茶を飲みながら、簡単に自己紹介をした。
といっても、一人ひとり名前と年齢を言っただけで、ほとんどは
ダリアさんのことを聞く時間になったんだけど。

ダリアさんは、本名 ダリア・A・パワーズ といって、
なんと一つ年下の16歳だった。カナダの教育ではグレード11といって、
日本の高校二年生にあたるらしい。
夏休みを利用して、日本に遊びにきたそうで、
今は多少しゃべれる日本語を、もっと話せるようになることが目標らしい。
なるほどー。
語学留学に近いのかな?
「ダリアさんって、かなり日本語話せますよね?どうやって勉強したんですか?」
「ヨウイチ、サン付ケナイデOKデス。
ニホンゴは、教会のヒトと、アニメでレンシウしました!」
「そ、そうなんだ!
そんなに上手くなるなら、私も英語のアニメで勉強しようかな・・」
「デズニーは、エイゴもニホンゴも、マナビヤスイです!」
と、わきあいあいと会話がはずんだところで
「それでー、ダリアさんは、よしゅあちゃんと結婚するの?」
いきなり、ぼたんちゃんが爆弾を落とした。
あやうく、お茶をふくとこだった!
「そ、そんなの・・」
「さ、さっき、よしゅあのおじ様は「親同士が昔決めたこと」っていってたし、
 なにも、決まったわけじゃないでしょー!」
「シマス!」
「「「ふぁっ!」」」
・・・・だれだ、今おかしな声だしたのは?お、俺?
「サキホド、ミをテイシテ、私をタスケテクレタ、よしゅあナラ、私はトツゲまーす!」
「ト、嫁げ・・・・!」
「ツキマシテは、キョウからヒトツキ、コチラでオセワにナリマース!」
はい?
「あ、もしかして、さっき玄関に運んでたトランクケースって、そのため?」
「ハイ!」
いつの間に。
「よしゅあノ、オジサンから、
ヘヤはタクサンアイテルからモンダイナイと聞イテます!」
問題ありすぎですよ!
硬直した俺の顔を、ダリアの特徴的な、濃いブルーの瞳がのぞきこんできた。
「よしゅあ、・・ダメ?
 私がイルの、メイワク?クニに、カエレ?」
   
・・・私は、賢明なる 読者の皆さんにおききしたい・・・
こ、こんな、金髪碧眼褐色肌の美人に、じっ・・と見つめられ、
イッショにイタイ・・・と、つぶやかれたら、
断ることができようか!いや、できない!に、ちがいない・・・!
たとえ、幼馴染から「スケベ!さいてー!」とののしられても、
同級生の少女から、「ど、同棲するってこと・・?フケツ・・」と言われても、
親友から、「お前も男だったか・・・」と誹謗されても・・・!
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