準備だよ!全員集合!

文字数 3,019文字

1.
夏休み初日。
「やっほー、よしゅあー、来たよー!」
いつもの登校とは想像もつかない張り切りようで、葉一が来た。
・・・・・朝の早天祈祷に。
「よしゅあちゃんねー、まだねてるよー!」
「まったくぅ。牧師先生が誰より寝坊とか失格じゃないのー」
「いいえ、よしゅあ先生はきっと、自室で祈ってるのです!」
「ホント、よしゅあはオネボウデー、コマリマス!!オコシてキマスー!」
「それより、みんなでおこそー!せーの!」
「「「「(大音量)よーしゅあくん!早天祈祷しよー!!!!!」」」」
・・・・・人数、増えた(泣)
ぼたんちゃん、葉一、樹太郎くん、ダリアが加わった声に、しぶしぶ玄関にむかう。
・・・ってか、牧師館にいるはずのダリアがなんで一緒に外で大声だしているの・・?


キャンプは来週おこなわれることになった。
皆の都合のため一泊二日。
近くの山に連れて行ってもらっての川遊び、バーベキュー。
教会でのカレーづくり、花火など。
夜にはワーシップ・ライブが予定されてて、
これにはキャンプに参加しない、教会員の皆さんも来られる予定だ。
観客がいるかも、という話にハッスルした葉一・ダリアの案で、
キャンプまでの短い日数、たまに集まって、『バンド練習』がなされることになった・・・
(けど、朝の早天祈祷から来なくてもいいんだけど!!!)


朝ごはんのあと、礼拝堂で機材のセットをする。
「このアンプはさー、兄貴がかっこつけてガンガン蹴ってたからぼろいんだよねー」
ベースの、この傷は床に叩きつけたんだってさー、
という葉一がもってきた機材はかなり痛みがはげしかった・・
「あのさ、お前の兄貴、パンク系?ロック系?」
「んー、多分エアバンド系!」
演奏中に縄跳びしてたり、スイカ食ってたよ、という言葉に
「へぇー、そういう演奏もあるんだ!」
「カッコイイデスね!」
と信じるぼたんちゃん、ダリアだった・・・

ひまわりちゃんが、かなり大きいキーボードを樹太郎くんと運んできた。
樹太郎くんがかなり赤い顔をしているのは、重いからだけじゃなくて・・・
・・・ひまわりちゃんの恰好のせいなんだろうな・・・
本日のひまわりちゃんの恰好は、頭にピラピラした黒とレースのカチューシャ?
に、ツインテール、メイド服のような黒とレースブラウスの組み合わせに、ブーツ。
樹太郎くん、それ、好み?
み、見てるだけで暑いし、・・ひょっとして、その恰好で練習するの・・?
何事にも動じない、葉一が、そっと目をそらした。
うん、なんとなく見ていて、自分の黒歴史が掘り返されるよね・・・
もしかしたらエアバンドでカッコつけてる君のおにいさんに似てるかもしれないけど・・・

「そういえば、カホーンって、だれがやるんだっけ?」
「え、お前は、、、ベースだもんな、あれ、ダリアがボーカルで、お前がベースで、
 ひまわりちゃんがキーボードで・・・」
そのキーボードに、『緋摩我璃』と書いてあるのは見なかったことにする。
・・・うん、名前書いとくの、大事。
「樹太郎ちゃんはー?楽器、やったことあるー?」
「お、俺、人前にでるのはちょっと・・・」
そうだよなー、人には向き、不向きがあるし。
ここにはいないんだけど、さくらとゆりさんは一緒に歌うんだっけ?
うーん・・・
「ふっふっふ・・・」
不敵な笑いが、旧会堂からきこえた。
あれ、また、トラじーちゃんのパターン?と思うと、
「話はききましたよ!!!!!!!」
と、でてきたのは、タケばーちゃんだった。
そして、ひらり、とカホーンにまたがると、
我々に、見事なカホーンさばき?を披露してくれたのだった・・・!

タケばーちゃんが、目をつぶり、カホーンで、いや、体全体でリズムをうちならす。
ぽかーんとみていると、
葉一が準備していたベースをうばいとり、
グラサンをかけたトラじーちゃんが、マイクの前に立った。
ひまわりちゃんのお母さん、カンナさんがキーボードを弾き始める。
(いつの間に!)

 Yo-,Yo、 キャンプだYo!
 Hanabi に Sanbi, , noriよく イnori、(he-y!)
Nayami に Hagemi , oriよく naori,
樹太郎 iyasu jesus (jesus!)
我らを moyasu 信仰 jesus!

キャキャキャーン!と、ベースがうなった。
突如はじまったラップに、観客は総立ちだ。
会場は暑い熱気につつまれる。
だれもがトラじぃのラップとタケばぁのカホーンを打ち鳴らすモーションに目が釘付けだ。
ここから、新たな伝説がはじまる。
俺たちは伝説が生まれた瞬間にたちあったのだ。
トラじぃの、
「Thank You!」に、アンコールと拍手が鳴りやまない。
なんだこれ・・・!
・・・・・・・なんだ、コレ・・・!
っってか、これ、だれトクシーン・・・?!


2.
 いやまぁ、いい見本?になった。
バンドってどうやんのかわかってなかった俺たちにとって、指針になったもんね・・・
トラじーちゃんに葉一は指使いをならっているし、
樹太郎くんは自分の祖父・祖母の新たな一面に感化されたのか、それを興味深く見ている。
ひまわりちゃんはコード進行?のやり方をカンナおばさんに教えてもらってて、
ダリアとぼたんちゃんはタケばーちゃんのカホーン講座に夢中だ・・・

「ホントに、アメージングでシター!
エルヴィン・ジョーンズのサイライカとオモイマシター!」
「タケおばーちゃん、かっこよかったー!こうやって叩くんだねー!」
「あら、ぼたんちゃん、筋がいいわねぇ。リズムは、こうやってとるんですよ・・」
「えへへ、ぼたん、カホーン、できるようになるかも!」
「あ、それなら、ぼたんちゃんがカホーンする?」
思いついて言うと、全員がこっちを見た。
「え・・よしゅあちゃん、ぼたんはまだ小学生だから・・・」
??
「ぼたんちゃんが、カホーンできるなら、やったらよくない?
 俺たちも助かるし。
 皆シロートみたいなものなんだから、年齢は関係ないよ」
「ソ、ソウデスね!ワタシ、ぼたんチャンはマダチイサイ、ト、カロンジテました!
 イエス様のソバにー、コドモタチがキタトキ、デシタチは、コドモタチをカロンジテ、シカリマシタ! 
デモ、イエス様は、『コドモタチをわたしのトコロに、コサセなさい、
 トメテハイケマセン』と、イワレマシタ!」
ワタシ、クイアラタメマスー!
と、ダリアがぼたんちゃんに謝った。
トラじーちゃんが、うんうん、とうなずきながら、
「思えば、その聖書の言葉は先生が大すきなところじゃった・・・
 先生は、子どもだからとか、信仰が未熟だから、と考えないで、
 常に『よしゅあの世代を、教会は育てる必要があるZE★』、といっとったのう・・・」
「先生は、ご自分の名前がもぉせ、だから、息子の名前は絶対、よしゅあだ、と
 言い張ってましたねぇ。・・・最初は、イサクにする予定だったのに。」

・・・・聖書のマニアックな知識で話すとみんな、わからないと思うんですよ?
ほら、葉一とか、樹太郎くんとか、首をひねってるし。
・・・・聖書よめ。
「お前のとーちゃんて、もぉせって名前だったんだな・・」
葉一が、つぶやいた。
あ、気になるとこ、そっち?
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