ぼたんちゃんの夏やすみ☆恋という名の戦争だよ!

文字数 2,573文字

1.

みーんみーん。しゅわしゅわ。
セミの大合唱がにぎやか。
「「「「「あ・・あつい・・・!」」」」」
ただいま、おひるの十二時。
「・・だっ、だれだよ・・こんな真夏にピクニックとか言い出したのは・・・!」
「よ、よしゅあ先生じゃないんですか・・・」
「日焼け止め、もっと塗ってくればよかったかも・・・」
「日傘にするべきだった・・・番傘、重い・・・(小声)」
ふぅふぅ。
駅からちゃいろ山の登山口までちょっと歩くんだけど、この道がひかげもなくて暑い!

♪もりにてー とりのねをきき
そびゆるやまにのぼり たにまの・・・

ダリアちゃんだけ、ごきげんな様子で歌いながら先頭を歩いていく。
おいついて、となりにならぶと、ダリアちゃんがなにを歌っていたのかがわかった。
わがたま~って、つづく、有名な賛美歌だね!
「コノ歌ハー、ハイキングにピッタリの歌デス!
ワタシ、コノ曲チョウ好キなのデ、サビだけ、イロンナ言葉で歌えマス!」
♪Then sings my soul~
ダリアちゃんはそれからドイツ語とか、ポルトガル語とか、韓国語とか、台湾語?とか、説明をつけながら聞かせてくれた。
ことばは違うのに、同じ歌がいろんな国の教会で歌われてるのって、なんかすごいね。
ダリアちゃんの歌声に、みんなも聞き入っているようだった。
(もしかしたら、暑くてうなだれていただけかもしれないけど・・・)


・・・ようやく、ちゃいろ山のハイキングコースから、しばらくいったところ、
休憩所につきました!
木々がおいしげったところから少しはなれて、屋根つきのテーブルとベンチのコーナー。
ほんの少し、涼しいかな?
このテーブルに、お弁当をひろげて、っと・・・
「なんか、美味しそうなのと、摩訶不思議なものが混在していますね・・・」
ひまわりちゃんのことばどおり、
大きなお弁当箱の中には形が整っていてつやつやと輝いているようなおにぎりと、
いびつな形だったり、昆布や赤いいちごジャム?!がはみだしているおにぎりが並んでいた・・・。
・・・同じおにぎりなのに、このちがいは一体!
でも樹太郎くんが別につくってくれたおかずのお重、すっごくおいしそうだから細かいことは気にしなーい!

さて、食べるぞってなったとき、一瞬、変な間があいた。
さくらさんがチラっ、と よしゅあちゃんを見て、よしゅあちゃんの顔がちょっと、固まる。
・・あー、食前のおいのり、かぁ・・・
さくらさんは何度も教会にきたことがあるけど、
クリスチャンじゃないからか、『お祈りする』時間が好きじゃないみたい。
というか、よしゅあちゃんがクリスチャンっぽくふるまったり、牧師してることがキライみたいな・・・?
「デハ―、よしゅあ、オ祈リをシテくだサイ!」
ダリアちゃんが空気をよまないで言う。
この、さくらさんの何か言いたげな目での圧力!
よしゅあちゃんの、緊張したような顔!
そして、ダリアさんの、何も考えてなさそうな笑顔での圧力!
こ、こわい・・・!
空気が凍りついた一瞬、私とひまわりちゃんと樹太郎くんは目をあわせて、
「こ、この(摩訶不思議)おにぎり、さくらさんが作ったんですか?お、おいしそうですね!」
「ダリアさんのイチゴジャムおにぎりもすごく美味そうだと思います!」
「よしゅあちゃん、私がお祈りするね!『神様この食事を感謝して』」
「「「いっただきまーす!」」」
「えっ?えっ?」
うやむやのうちに、私達は食事を開始したのだった・・・!
ううん、私達、充分戦ったというか、争いを回避した!感動!


2.

「よしゅあ、私ガ、ハジメテ作っタオニギリ、食ベテ♪よしゅあの好キなイチゴジャムたっぷりデース!」
「いやだ。」
「よしゅあ、失礼でしょー!でも、それなら、(はみでた昆布がカピカピに乾いてて、海苔がべとべとに貼ってある黒い塊をさしだして)私のお握り、食べてみる・・?」
「いやだ。」
「・・よしゅあさん、良かったら私が食べる予定だったお高いコンビニおにぎり、いりますか・・?」
「う、それは心ひかれるけど・・・!でも、俺は樹太郎くんの手作りが食べたいから・・」
「まさか、よしゅあ先生、樹太郎さんのことが好きなんですか・・・!」
「なんでだよ!俺は樹太郎くんの手料理が好きなんだよ!」
「ふふ、日々食事作りに通い、よしゅあ先生を餌付けした甲斐がありました!」
「お前それ何が目的なの?いや、ありがたいけど!」
「よしゅあちゃん!私の爆弾おにぎり、半分こしよう!自信作なんだー」
「いいよ!
じゃあ、ぼたんちゃん、俺の作ったお握り、半分こする?・・あんま、自信ないけど。」
「ちょ、よしゅあ!」
「よしゅあ、私モー!ワタシにも、よしゅあノオニギリー!」

・・・・・。

にぎやかなお弁当タイムがおわって、ちょっとひと休み。

さくらさんとひまわりちゃんはバトミントンのできる広場へ行くんだって。
よしゅあちゃんと樹太郎くんは屋根のあるベンチで昼寝・・あ、絶対またゲームやるつもりでしょー!
と思ったら、審判として樹太郎くんも広場によばれたみたい。
ダリアちゃんがハイキングコースを散歩してキマス、というので私もついていくことにした。


二人で、日陰を歩いていくのもいい気持ち。
ダリアちゃんは景色を楽しみながら、のんびりと山道をのぼっていく。
ダリアちゃんはにぎやかなイメージがあるけど、こうやって黙っていればとても美少女というか、キレイだからこんな田舎の山の中でも絵になるなー、なんて考えていたら、
ダリアちゃんはいきなりハイキングコースを外れて木々の中に入っていった。
「どうしたの?!」
「アツイカラー、川に行キタイデス!」
「ちゃいろ山に川なんてなかったような・・・」
「デモ、コチラの方ガ涼シイデス!」
「まぁいっか!探検みたいだね!」
木々の中をすすんでいくと、静かで、二人で秘密のことをしているような気持ちにもなって、私はダリアちゃんにきいてみたかったことをこっそりきいてみた。
「ダリアちゃんはー、どうして、よしゅあちゃんが好きなの?」
「?!」
「だって、ダリアちゃんは、はじめてよしゅあちゃんに会ったときから、好きみたいだし、なんでかなー?って思って。」
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