17歳の牧師だけど何か質問ある?

天使に重さはありますか?

エピソードの総文字数=3,562文字

放課後。
「もうすぐ夏休みだねーさくらさんや、ゆりさんは夏休み、どっか行くの?」
 葉一が、ノリノリできく。
「うちは八月に旅行に行くみたい。パパの仕事の都合でまだ決まってないんだー」
「そうなんだ!たとえばさー、海とかいきたくない?(俺と)」
「私は、演劇部の合宿と、塾ばっかり・・まだ高校二年なのに、受験勉強とか・・・」
「そ、そうなんだ・!でも、高二の夏なんか、遊ばないと損だって!(俺と)」
「そうだよねー、まだ早いのに『受験のことを考えて行動するように』、って
  先生たちもよく言うし、ゆううつよねー!」
「いや、それならむしろ、今、海にいくとかさ!(俺と)
 青春の貴重な一ページ!高校の夏を満喫しなきゃ!(俺と)」
「ねぇ、今度の三者面談って、進路について話すらしいよ・・」
「そうなんだー、まだうちの親そこまで考えてないかも!」
「・・・・」
夏休みを、リア充っつぽく、『女の子と遊ぶ!』ために、
努力を惜しまない葉一のけなげなさよ・・・!
っていうか、そこまで誘うなら、
(俺と)をはっきり言った方が伝わらないか・・・?
さくらとゆりさんの会話の中心が受験になったことで、
葉一がデートのお誘いを諦めて、俺のほうによってきた。
「なー、なにがいけないと思う?」
「お前の言葉が遠回しすぎるんだよ・・・なんだよ、青春の一ページって!」
「切り出しはいいとおもったのになー・・!なんで受験の話になるんだろ?」
「お前も受験話に加わればいいだろ?」
「うーん、俺はさ、今現在にしか興味がないからさ!」
 俺の頭の中はプールとか海とか川でいっぱいだ!と高らかに言う。
 ・・・それって水着目的じゃないか?
「よしゅあは?受験とかすんの?」
 ・・・さぁ。
「いいよなー、もうほぼ就職決まったようなもんだし、牧師って、専門の学校とかあんの?」
「いや、まだ決まったわけじゃないし・・・」
「よしゅあに、牧師なんて無理無理ーだって、まだ聖書全部読んだことないんでしょ?」
急に、さくらが会話に割り込んできた。
なんとなく、さくらは俺が牧師、に、反対しているような?
こういう会話になると、不機嫌になるような気がする・・
「え!聖書って、あれ、全部読むものなの?わ、私、薄い聖書もらったことがあるけ ど、辞書みたいに使うものだと思ってた・・・!」
「そうだよなー、俺も本屋で聖書見たことあるけど、あれ、広辞苑みたいにぶっといよな!」
「私も薄い聖書を、よしゅあのお母さんからもらったことあるけど、
最初のページの人物の名前の羅列で読むのあきらめちゃったなー」
「・・・ゆりさんとさくらの聖書は、多分、新約聖書だよ。聖書は、イエス・キリストが生まれる前の時代に書かれた『旧約聖書』と、イエス・キリストの生涯とその教えが書かれた『新約聖書』があって、新約聖書のほうが、薄いんだ。普通は両方あわせて『聖書』として売ってるから、広辞苑みたいにでかく見えたんじゃないか?」
「そうなんだ・・わ、私のもっている聖書だと、ダメなのかな?」
「ダメってことはないけど、聖書は旧約聖書39巻と、新約聖書27巻をあわせて『聖書』だから、ゆりさんのもっているものだと後半というか、半分しかない状態だね。」
「そ、そうなんだ!よしゅあ君は、『聖書』もってるの?
 よ、よかったら、その、か、貸してもらえない・・かな?」
おずおずと、上目づかいにゆりさんが言う。
「うん、教会にたくさん聖書はあるから貸出できると思うよ。
 ーえ、俺の?俺の聖書はなんか汚いし・・・」
葉一が、「フラグへしおった・・・」とつぶやいた。
フラグ?????
「あ、もしかして、ゆりさん、聖書に興味ある?
はじめて聖書をよんでみるなら、新約聖書のほうがよみやすいと思うな。
 で、新約聖書の、最初のページから読むと、イエス・キリストの系図からはじまつて、カタカナの人物名がずっと続いてて、しっかり読もうとしたら、さくらみたいにうんざりする人が多いみたいなんだ。
聖書は必ずしも、最初のページから読まなくてもいいから、その次の、『マルコの福音書』とか、『ルカの福音書』から読んでみるのがいいかもね。
ルカの福音書はクリスマスのはじまりが分かるし…」
はっ、と気がつくと、葉一やさくらがぽかーんとしていた。
「・・・お前って、ガチなクリスチャンだったんだな・・・ってか、すげぇ!牧師みたい!」
・・・牧師です。
(とりあえずのまにあわせだけど。)
 
 
そんな話をしていて、もう教会の入り口にさしかかったころ、
「よしゅあちゃーん!!!!
たいへんたいへんたいへーん!!」
と、ぼたんちゃんが、ランドセルをしょったまま、駆け寄ってきた。
        
「ネコがね、木の上でね、ずつとないててね、おりれなくて、
ぼたんたちがね、どうしょうか悩んでたら」
ぼたんちゃんについてみんなで駅の裏にまわる。
下校中の小学生が何人か、木のまわりに集まっていた。
ここには、大きくて古い一本の桜の木が植わっている。
要領を得ないぼたんちゃんの説明だと、猫が木の上に?
下りれないのかな?
上を見上げると、
 
ひらり。
白いワンピースのすそがひるがえった。
そして、褐色のすらりとした足が見えて、

親方。
空から、女の子が。


―どさっっ。ぐちゃ。

木の上から、女の子が、俺の上に落ちてきた。
「ぐぇっ・・・・・!」
どうなったのか、背中でうけとめて、、つまり、俺はその子の下敷きになった。
「あ!ネコ!」
にゃーん 
ネコは無事に下りられたようだ・・・・
「よかったぁ、ありがとう、おねえさん!」
ネコー、ネコ―と、小学生の集団が追いかけて行った。
「あぶないところでしたね、大丈夫ですか?」と葉一。
「このおねえさんがね、木にのぼってネコをおろそうとしてくれたの!」
とぼたんちゃん。
「なんだか、いまの落ちかた、天使みたい・・・」
とゆりさん。
天使はどさっと、落下しません・・・!
それはそうと、キミたち、俺の心配は?
「ちょっと、だいじょうぶ、よしゅあ?!」
さくらが、ようやく、俺に声をかけてくれた・・
うん、お前はすごくいい幼馴染だよ・・!
「Oh・・・、I'm sorry・・・・」
体の上から、流ちょうな英語がきこえた。もしかして、外国の方ですか・・?
「ゴ、ゴメンナサーイ、スグ下リマスネ、」

むにょん。

背中に、柔らかい感触が・・・
「お前、すげーラッキーだな!すげー、美人の下敷き!」
「早くおこしてあげなさいよ!大丈夫ですか?立てる?」
「アリガトゴザイマス!ヨイショ!」
ふぅ。
体の土を払って立ち上がると、たしかに凄い金髪美人が立っていた。
「ドモ、ホントに、ゴメンナサーイ!オケガはアリマセンカ?」
「あ、だいじょうぶ、、、です。」
キラキラと、日差しをうけて金髪のウェーブヘアが輝いていた。
褐色の肌に、濃いブルーの瞳。
このへんでは珍しい肌の色と瞳に見入ってると、
さくらがぐいっ、と腕をつかんだ。
「ねぇ、本当に大丈夫?どっか折れてない?」
そう言って、体をペタペタとさわって調べだした。
「だ、だいじょうぶだって!」
子どもじゃないんだから。
気恥ずかしくて振り払うと、さくらがムッとした顔をした。
・・・わるかったって。
「ほんと、折れたりしてないから・・
でも、心配してくれて、ありがとな?」
「べっ、別に心配なんて・・・」
 かぁぁ。
さくらの顔が、赤くなった。
夏の日差しが強いと暑いな・・   
   
葉一が、ヒュー、ヒュー、と小声でいった。
 ??
「オケガがナクテ、ナニヨリです!アリガトウゴザイマシタ!
 ・・アト、ツイデに教エテ下サイ、コノ辺に、ヤマノベ教会はーアリマスカ?」
と、金髪の彼女がニコニコして、言った。
「えー、お姉さん、教会のお客さん?」
ぼたんちゃんが、俺を見て、きいてきた。
いや、何もきいてないし、、、
「その教会なら、すぐそこにありますよ!な、よしゅあ!」
「うん、すぐそこですけど、、なにか御用ですか?」
「・・・ヨシュア・・・・!」
その金髪の彼女は、俺を見つめ、満面の笑みで、感極まったように、
俺に抱き着いてきた。
ふわぁぁあぁ!
むにょん、って、柔らかいものがあたった!

「ヨシュア!会イタカッタ!マイ、ダーリン!!」
だ、だーりん?・?・・
さくらも、葉一も、ゆりさんも、ぼたんちゃんも、
目を丸くしてこちらを見ているのを感じる・・!
彼女はおかまいなしに、だきついたまま、こう言った。
「ハジメマシテ!ヨシュアの、許、嫁?
フィアンセのダリア デース!!」

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