キャンプの夜に、ユダ

文字数 4,727文字

1.
ぱちぱち。
「いやー、それにしてもすっごぃ、迫力だったよなー!」
ぱちぱち。
「ぼたん、何回か間違えちゃった・・・・」
ぱちぱち。
「そんなの、全然、わかんないって!ぼたんちゃんは、立派に職務を果たしたよ!」
ぱちぱち。
「ミナサン、トテモ、タノシソーでシタ!」
「すっごい緊張したけど、案外あっという間だったわねー!」
「み、みんな、プロみたいに上手だったよ・・・!」
ぱちぱ・・・・・・・・・・ち。
しー・・・ん。
「・・・・あとは、よしゅあが、ちゃんと花火を用意してればなー。
打ち上げ花火として、最高の演出だったのになー・・・」
「よ、よしゅあ先生は、教会のあれこれで、きっと、忙しかったのですよ!」
「・・・こうやって、全員で、円になって、ひたすらに、線香花火を消費する行為も、
なにかの儀式みたいで楽しいですよ・・・・あ、落ちた・・・・」
「ウゴクト、火ガオチマス・・・・・!セイシしテ・・・!」

・・・・全員で円になってしゃがみこみ、無言で線香花火の炎の先を見つめる。
ぱちぱち。ぱちぱち。ぱ・・・・・ぽとっ、

「わ、わるかったよ・・・・・!いや、まじ、反省してます!!!!
確かに、花火の担当は俺とさくらとダリアだったけど、
歌だけじゃなくてラップとかダンスの練習までしてたんだし、
暇な俺が!買って!用意しておくべきでしたー!」

そう。先ほどの、素晴らしい、ワーシップライブもおわり、
―来てくれた方々から、『よかったよ!』とか、
『感動したわ!』とか、言って頂けて。
みんなで興奮を、喜びを、分かち合い・・・・
ふぅ、というところで、葉一が、言ったのだ。

「あー、ホント、最高だった!じゃ、花火で更にもりあがろうぜ!」

・・・・・花火・・・・・・
は、花火っ!!!!!

慌てて、教会の倉庫を探したけど、そんなに都合よくストックがあるはずもなく。
でも、ほら、みんながさ、あれだけの、大舞台をなしとげてくれたから!
俺だって、なんか、みんなの頑張りに報いたくなるよね?!
それで、俺は、高校近くーこの辺、唯一のコンビニに走って・・・
(このあたりで花火が買える店はコンビニしかない。)
花火を買い占めてきたわけです!
大量に売れ残っていた、線香花火(¥100)を・・・・・!

「・・・・みんな、頑張れ・・・!よしゅあの心遣いを無駄にするな・・・!
あと、3ぱっく・・・これで、よしゅあも、使命が果たせたことに・・・!」

・・いや、ほんとに、考えが足りなかったけど、無理しなくてもいいんだよ?(泣)
今度、一人でひっそりと楽しむもん・・・!


「あー、ようやく終わったー!足がしびれるかとおもったわよ!」
「ふぁぁ・・・ぼたん、そろそろおねむだよぉ・・・・」
「もう10時だもんねー、私たちも、もう寝ちゃうー?」
「えー、せっかくのお泊りなのに!トランプとか夜更かししようよー(俺と)」
「イイデスネー!ワタシ、マダマダ、元気デス!」
「私も、夜は強いのでしたいです・・・。珍しい、カードゲームもあります・・・」
「ぼ、ぼくも、夜遊びしたいです!」
「と、ところで、私達って、今夜、どこで寝たらいいのかな・・・」
そこで、みんなが俺のほうを見る。

・・・・・・・・寝たら・・・・・・・・
ね、寝たらっ!!!!!

「よしゅあ、お前まさか、部屋わりとか、考えてなかった・・・・?」
「OH! みすてぃく!」
「どうすんのよー!もしかして、お布団もないんじゃないのー!」
「えー、せっかくのお泊りなのに、お家で寝るとかぼたん、やだよぉ・・」
「いっそのこと、全員で礼拝堂で寝ますか・・?
・・・椅子でこう、高い壁をつくって・・・」
「ど、どっちが進撃する側・・・?」
「ぼくは駆逐されるのはちょっと・・・」
なんの話だよ。

・・・というわけで。

牧師館の、ダリアが今使ってる部屋に、ダリアと、ぼたんちゃんと、ひまわりちゃん。
親父たちのベッドだから、ダリアに体の大きくない二人なら、3人でもいける・・ハズ。

そして、牧師館の俺の部屋の隣は、一応客間となっているので、さくらとゆりさんなら
問題なく過ごせるハズ。(急な来客などに備えて布団もあるし・・・)

・・・問題は、俺たち男3人だ・・・!
やはり、女の子たちの近くで寝るのはまずいので、

「じゃあ、俺、この舞台の、十字架の横、とったー!」
「じゃあ、ぼくは、葉一さんの反対がわで・・・」
「・・・せめて、俺の布団をつかってくれ・・・!
 座布団で寝ようとするなよ、更に罪悪感を煽るなって・・・!(泣)」

礼拝堂の、―さっきまで、皆がとんだり、跳ねたりした舞台で寝ることになったのだった・・・!
(掃除は一応したぞ!・・・・ごめんって、反省してる、まじで。)

2.
「・・・コノ中に、6ヲ、カクシてるヒトがイマス・・・・!」
ダシテー、ダシテ―!、とダリアがわめく。
「それだしたらゲーム、終わっちゃうじゃないですか・・・勿論、私はもっていませんけど。」
「わ、わたしももってない・・」
「ぼくももってないです・・・むしろ、こっちの5を出さない人の方がひどいと思いますが。」
「7並べって、大人数でやると全然違うゲームになるのね!今まで、親かよしゅあ、としかしたことなかったから、びっくり!ハイ、私、1あがりね!」
「さくらさんは意外と策士だなー・・・、はい、俺2番であがりね!」
「・・・お前らの、7並べにおける性格の悪さにはドン引きだよ・・・あ、おれ、
三番であがり」

「マタ、マケまシター!」
ダリアが悔しそうに、トランプをテーブルにおいた。
夜の11時、教会の旧会堂にて。
ぼたんちゃん以外のメンバーで集まって、トランプに興じていた。
(ぼたんちゃんは部屋について、ばたん、きゅう、で眠りについたらしい。)
「じゃあ、またダリアさん、罰ゲームね!」
葉一が、見事にトランプをシャッフルしながら、言った。
・・・お前、そのテクニックもモテるために練習した・・?
「・・・ソロソロ、ネタ、尽キテキマシタ・・・!」
ダリアが、しぶしぶ、立ち上がった。
そう、このトランプで負けたものには、罰ゲームが課せられることになっている。
それは・・・
『だれにもいえないような秘密(黒歴史)を話す』ことである・・・!
おかげで、俺たちはダリアの黒歴史―
昔、黒髪に憧れてペンキをかぶったことがあるとか、空を飛びたくて、ほうきにまたがっていたとか、とべない理由を考えたら、『高さが必要』という結論に至り、カナダの家の巨大な樹によじのぼり、飛んで・・そのまま垂直落下、とか。
・・・日本語でやらかした編だと、『タカサ』と『カタサ』を言い間違えてた、とか、
『お返しです』を『シカエシ、デス!』と笑顔で言ってたとか、電車でお年寄りに席をゆずろうとして、『スワッテクダサイ!』を『サワッテクダサイ!』と元気よく言って、近くのお茶を飲んでた人が勢いよくふきだした、とか。
・・・お前よく一人で無事にやまのべ教会まで来られたな・・・とか、
・・・お前よくここまでトランプ一人負けできるな・・・とか、感想はいろいろだ。
「エエト、アトは・・・『シンポ』をイイ間違エテ、『チ、
「す、すとーっぷ!ダリア、あうとあうとあうとー!」
・・・あやうく、このラノベが18禁になってしまうところだった!

机に用意されていたお菓子もジュースも尽きてきて、そろそろ終わりにしょうか、という雰囲気になった。
ので、ふと、気になっていたことを聞いてみた。
「ところでさ、今日のライブの葉一のラップとか、だれがつくったの?
ヒップホップみたいなダンスもはじめてみたし・・・」
「あー、あのラップは、俺とトラさんとの共同作業!」
俺とトラさんライン友だからさ!と、葉一がみせてくれたスマホにはトラじーちゃんのアイコンが・・・!
ってか、お前、女の子とのラインはなくてトラじーちゃんとのラインはあるのな。
「アノ、ダンスハ、ユリのレクチャーデス!
エンゲキブなダケアッテ、舞台のミセカタ、サスガデシター!」
「そ、そんなことないよ・・それより、みんな、プロみたいで、すごかった・・・」
「じいちゃんは、毎晩、風呂場の鏡の前で練習してました・・・」
「そうだよなー、俺、キリストのこととかよくわからないけど、
じいちゃんたちと歌ったりしたのはすげー、一体感っていうの?なんか、
来てた人、みんなと家族になったみたいで楽しかったというか・・・」
「気持ちはわかる気がするわ・・・私も、キリスト教はわからないけど、
・・・うん、たのしかったわね!」
「演奏とか、表舞台の私達だけでなく、樹太郎さんの、ライトを消したり、
懐中電灯の演出もよかったと思います・・」
樹太郎くんが、ほめられて、真っ赤になった。
「よしゅあもがんばってくれたしな!PAとか、お祈り、とかさ!」
にやっ、とした笑いとともに言われた・・・これは当分、ネタにされるかもな。
「よ、よしゅあくんのお祈り、よかったよ・・・ああいうふうに、お祈りできるのかっこよかったし、、、さすが、牧師先生だなって・・・」
「よしゅあにしてはがんばったかもね!
私、よしゅあがお祈りしたとこなんて、はじめてみたわー!」
おい。
「よ、よしゅあ先生は立派な牧師ですよ!げんに、ぼくは救われましたし!
あのときの、よしゅあ先生の、僕への、真剣なまなざしと愛は神様の愛の体現というか」
・・・樹太郎くん、どんどん、あの時のことが美化されていってない?
「すげぇなー、よしゅあ、先生? よっ!未来の大牧師!
・・・おこんなって。
俺、キリスト教は興味なかったんだけどさー、お前の説教?なら、きいてみたいかもな!」
「よしゅあはまだ聖書、全部読んだことないんだから無理無理!」
「わ、わたしもよしゅあくんの話なら、きいてみたいな・・・」
「よしゅあハ キット、イイ牧師にナリマス・・・・」
というダリアの表情は、なぜか、曇っていた。
「トコロデ、ひまわりガ、ネテシマイまシタ・・・
ソロソロ、オシマイにシタ方ガ、ヨサソーデス・・・
イマカラ、ワタシの特製デザート、ダスツモリだッタノニ・・・!」
「残念ね!また、明日にしましよう!」
「本当に残念ですね!おやすみなさい!」
「ほんと残念!夜更かしはよくないからな!おやすみ!」
・・・みんな、さっき、ダリアが台所で錬成してたというか、マシュマロを焼いて、チョコレートとクラッカーではさんで・・・『キレイデスねー!』と、お気に入りのかき氷シロップ・ブルーハワイをそそいでたの、見てたからな・・・
(ちなみに、どろどろになったのを、冷凍庫で凍らせてシャーベットにしてだすつもりだったようだ・・・)


礼拝堂で横になると、葉一が、
「もう寝るのかよ!コイバナしよーぜ!
ねぇねぇ、樹太郎くんは、好きな人いるのー?」
女子か。
「えっ、・・・あの、うーん・・・・、ぼ、ぼくは、」
ぐぅ。
「あ、葉一さん、寝ちゃいましたよ。・・子どもって、無邪気ですねぇ」
樹太郎くんのほうが、年齢的には子どもだけどな・・・
ぐぅ。
そういった、樹太郎くんも、あっという間に、眠りについた。

・・・俺は、眠れなかった。
さっきまでの会話で、なんか、落ち着かなくなってたのと、
ダリアが、台所を片づけながら、つぶやいた、聖書の言葉が耳に残っていたからだった。

『・・・・羊ノナリヲシテヤッテ来ルガ、ウチハ貪欲ナオオカミデス・・・』

ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み