先の無い、深い闇の中
文字数 1,299文字
妹ハンナの仇、その最後の一人を追い詰めた復讐者だったが、銃での反撃を受け、今この廃倉庫では銃撃戦が繰り広げられていた。
四肢を銃で撃たれ、大量に血を流す男は、片膝をついて崩れ落ちる。
手にしていた筈の銃は、撃たれた際の衝撃で、既に落としてしまっていた。
パァン、パァン
放たれた銃弾。
だが、それが、
それは、まるで、何か透明な壁にでも当たって、跳ね返されたかのような、この世界の物理法則を無視した軌道。
明らかに、不可解な動きをして、逸れて行った。
復讐者は、その隙に、最後の力を振り絞って、落ちていた銃に飛びつき、これを拾い上げる。
パァン
廃倉庫の床に、血まみれになって倒れている、二人の男。
一人は眉間を撃ち抜かれて、すでに事切れている。
目的を果たした復讐者ではあったが、立ち上がるどころか、もはや動くことすら出来ない。
コツ、コツ、コツ、コツ……
照明が消えた廃倉庫、その暗闇の中から姿を現した愛倫 は、復讐を遂げた男の前に立つ。
息を引き取った復讐者の魂を見送った後、
コツ、コツ、コツ、コツ……
照明も消えた廃倉庫、そこには先の見えない暗闇が、広がっているだけだった……。