一人の人間を助けるために、この世界の時間を巻き戻すというのは、さすがにリスクが大き過ぎるが……
だが、過去に誰かを送って、その女を助けるという方法なら、比較的リスクは低い
死んだ人間を助けるのではなく、まだ生きている人間の過去を変えるだけというなら、尚更な
だたし、この方法だと、俺が保証出来るのは、行きの片道切符だけだ
以前、過去に送った奴で、元の時間軸に戻って来られた奴は、今のところ一人もいねえっ
今現在に強い思念を残しておいて、過去に行き、帰りは残して来た思念を目標にして戻って来る
命綱をつけて、海中深くダイビングするようなもんだな
どんなに海中の深いところで流されて、位置が分からなくなったとしても
命綱がある限りは、それを辿れば、元居た場所に戻って来られる
問題なのは、どうやって、その強い思念を現在に残すかってことだ
まぁ確かに、戻って来られる可能性が一番高いのは、あんただろうな
あぁ、今の例えで、ちょっとしたアイデアを思いついたんだよ
過去を変えたとしても、大なり小なり、時間の矯正力が働く場合がある……
ある日突然、その女が、交通事故で死んじまう可能性だってある
そうなれば、あんたらがやったことは無駄になっちまう
あたしは、あんたのことを、ちょっと褒め過ぎたのかもしれないねぇ
あんただって、500年前、奴隷生活を余儀なくされていた人間達を見て来たんだろ?
何年にも渡って、地獄のような苦しみを味合わされてから死ぬぐらいなら
交通事故で、一瞬の内に死んじまったほうが、よっぽどマシってもんさね
人間としての尊厳は、踏み躙られちゃあならないんだよ
そのために、今回もまた、危険を冒すのか、サキュバス・アイリン
過去の性犯罪を未然に防ぐため、時の流れの中を、ダイブすることになった愛倫。
時間座標は、吉川美智子が暴漢達に襲われた、5年前の4月23日、場所は日本の東京。
おもむろに、慎之介の唇にキスをする愛倫。
さらに、それだけにとどまらず、自らの舌を、慎之介の舌に絡め、粘膜接触を果たした。
これで、今、慎さんの魂と、あたしの魂は、細い糸のような生体エネルギーでつながったから
あれをイメージしてもらえば、分かりやすいかもしれないね
慎さんは、まるで勇者や英雄みたいな、強い魂の持ち主なんだ
慎さんは、あたしのバディとして、いつも一緒に戦って来てくれたんから
現在が変わっっちまって、カレシと別れてたりしてても
あたしも、ヨシくんとの、運命の赤い糸、信じてますからっ
愛倫はそう言うと、時の扉をくぐり、時の流れの中にダイブした。