運命の鋼鉄製ワイヤー
文字数 2,388文字
突然、三人組の男に拉致されて、廃倉庫まで連れ去られた、まだ高校一年生の吉川美智子。
隙を見て、必死に逃げ出そうとしたが、男達はまるで、そんな彼女を弄ぶかのように、嘲笑いながら、追い掛ける。
足元がもつれ、転んで倒れる彼女に、男達はにじり寄る。
転んだ吉川美智子に、男達が触れようとした瞬間。
今の彼女には、その言葉の意味は分からない。
懐からナイフを取り出す男二人。
だが、愛倫 は、襲って来る隙すら与えず、回し蹴りで二人の男も吹っ飛ばした。
倒れたまま、立ち上がることすら出来ない男達。
ペルセウスの盾
地面に倒れている男達三人は、悲鳴を上げ、飛び跳ねながら、転げ回る。
吉川美智子を、無事に家まで送り届けた愛倫 。
吉川美智子と別れ、今度は自分が、元の時間に帰る番だったが。
珍しく、深いため息を吐く。
正しくは、愛倫 の気持ちにシンクロして、と言うべきか。
……愛倫 さん……
そう言って、二人を繋ぐ魂の糸を確認する愛倫 。
しかし、それは、糸どころか、工事現場用の鋼鉄製ワイヤーのように太く硬く、変質している。
……愛倫 さん……
慎之介の魂の力によって、愛倫 は、どんどんと元の世界へと引き上げらて行く。
もちろん、その強さとは、肉体的な強さでも、戦闘能力のことでもない。