老人の最期を看取るサキュバス
文字数 1,762文字
ミルリンが一緒に暮らしていたおじいちゃんが倒れた。
ミルリンは、老人を、その胸にしっかと抱きしめた。
ミルリンのふくよかな胸の中に、顔を埋め、満面の笑みを浮かべる老人。
ミルリンは、死に逝く老人の最後の命を、その胸でしかと受け止めたのだ。
老人はそのまま息を引き取った。
この上なく、穏やかで安らかな顔で、老人はこの世を去って行った。
老人は安らかに逝ったが、残されたミルリンは大変なことになっていた。
根も葉もない噂をしていた近所の人間達から、口さがなく言われるのはまだいい方で、
老人と何十年も前に別れて、それ以来一度も会っていなかったという遺族までもが現れて、ミルリンを罵った。
仲裁に入ったのは、移民局の慎之介。
愛倫は、ミルリンに、かっての自分の姿を重ねていた。
これから後、ミルリンは、独りぼっちで暮らす老人男性達のもとを巡回して訪れるようになる。
老人男性達が孤独死することがないように。
それが、彼女がこの世界で見つけた、自分にしか出来ない役割だと思ったのだろう。