復讐(リベンジ)ライダー

文字数 1,354文字

――バイクから異音が聞こえる
あの時から、ずっとだ

――馴染みのバイク屋に行って、見てもらったが

原因は分からないと言われた
他のバイク屋に行ったら

異音なんか聞こえないと言われた

もしかしたら
俺にしか、聞こえないのかもしれない
――壊れた俺の心が、叫んでいるのか
それとも、このバイクが
俺のことを、止めようとでもしているのか
――だが、俺は、止まる訳にはいかない

いや、逆に、ずっと止まったままなのか

妹が死んだ、
いや、殺されたあの時から
俺の時間は、止まったままだ
もう、俺は、死んだも同然で
今はただ、残された時間
アディショナルタイムを過ごしているにすぎない
殺された、妹の復讐を果たすために……
 
ま、待ってくれ
……
い、命だけは助けてくれ
か、金ならやるから
い、いくらだっ?
いくら、欲しいんだっ?
クソがっ
パァン、パァン

イラつかせやがって

――残るは、あと一人か
 
――俺には双子の妹がいた
ハンナという名前の

俺達は双子で

小さい頃から、いつもずっと一緒で

双子特有の、不思議な、感覚の共有みたいなこともよくあった

俺には、なんとなく、ハンナの考えていることが分かったし

ハンナにも、俺の思っていることは伝えわっていた
そういう意味では、間違いなく
まさしく、俺の半身のようなものだった
だが、ハンナは殺されちまった
あの生きている価値もないような
ド畜生ども、ゴミ以下の屑野郎どもに
命を奪われた……
三人組の男たちに拉致されて……

性犯罪者達の慰み者にされて、嬲り殺されたんだ

あいつの恐怖、痛み、苦しみ、絶望……
俺はその片鱗を感じ取った
生きたまま味あわされる地獄
まさに、そんな感覚だった
一部の感覚を共有しただけの俺でさえ
そんな有様なんだから……
当の本人は、どれだけ
痛い、怖い、苦しい、辛い思いをしたんだろうか?
到底、許せるようなものじゃあない
 
ダメだな
やっぱり、異音の原因は分からない
そうすか……

それ以外は、ちゃんと整備しておいたからさ

あざーすっ
まぁ、それでだ
なんか最近、お前が、ヤバい奴等のこと調べてるって
バイク仲間の連中が、心配してたぞ
まぁ、いろいろあったのは、分かるんだけどさ……
心配しないでくれって、伝えてといてください
……
ブォン、ブォン、ブォーン!
おっ、おいっ!
無茶なことは、すんなよっ!
 
――心配してくれている人達には悪いが……
もう俺のことは忘れてくれ……
俺はもう死んでいるんだ……
あの時、死んじまったんだ
妹のハンナと一緒に
 
――なんだ?
こんなところに、誰か立っている?
あいつ等の仲間か?
いや、違うな……
女、女か?
狭いトンネル内で、両手を横に広げて
わざと、バイクの前に、立ち塞がる気か?
このまま轢いちまいたいような、最悪な気分だが

それじゃあ、やってることが、奴らと変わらない

キイィィィィィッ!
……
おい、あんたっ
死にたいのか?
邪魔だっ、そこをどけっ!

助けを求める、悲痛な女の声が、聞こえたと思ったんだけどね

なに言ってるんだ、あんた?
頭でも打ったのか?
そんなこと、言うもんじゃあないよ
まぁ、いいから、あたしの話を聞きなよ
あんたにとっても、大事なことさね
あんたの、死んだ妹さんの……
!!
おいっ! 一体どういうことだっ!?
そもそも、お前は、何者だっ!?
ああ
あたしはね、サキュバスの、愛倫(アイリン)って言うんだ
まぁ、ただの、通りすがりのいい女だよ
……
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