付録 1 146話 Bパート 通話全文入り

文字数 1,709文字

―――――以下通話・全文入り―――朱先輩――――本文掲載時削除――――――
『――船倉さん? 私、穂高だけど今、少し時間は大丈夫かしら』
 何と朱先輩に私の目の前で電話をし始める。
(『時間は大丈夫だけど、穂っちゃんから電話して来るなんて珍しいですね』)
『えぇ……どうしても知らせておきたいと言うか、知らせておかないといけない話が出来てしまって……』
 穂高先生には私の手にしているブラウスが、やっぱり朱先輩からの物だと分かっているからなのか、私の手に視線を置いたまま通話を続ける。
(『それは穂っちゃん自身のお話? それとも学校でのお話?』)
『そうね。学校での話ね』
(『……言いにくいお話で、学校でのお話で……わたしに電話して来るって事は愛さんのお話?』)
『ごめんなさい。船倉さん。私、船倉さんも岡本さんも傷付つけるつもりは無かったの! 船倉さんの事を忘れた訳じゃ無かったの!』
 朱先輩が何を言ったのか分からないけれど、、穂高先生の感情が揺れている事だけは分かる。
(『傷つけるって……愛さんに何かあったの? 愛さんに何したの?!』)
『私が何かをした訳じゃ無い! この言い方だと語弊があるわね……私が何もしなかったから……出来なかったから――』
(『――そんな事を、穂っちゃんは話したかった訳じゃ無いと思うんだよ。だから早く言って! 愛さんに何があったの!』)
 その上、言葉を途中で止める穂高先生。
『……岡本さんが、破り脱がされたブラウスを肌身離さずずっと手から離さなくて……ひょっとしたら――』
(『破りって……愛さんにそんなひどい事したのは誰?! 誰なの!』)
『それはサッカー部の男子で、一人は――』
(『男子って……男子が愛さんのブラウスを破ったの?! まさか愛さんその男子に……』)
『それは大丈夫。叫び声を上げてくれた女生徒のおかげで間一髪最悪の事態にまでは至ってないわ。ただ、船倉さんが岡本さんをとても大切にしてたのは知ってたから、今もずっと離さず手にしてる船倉さんのブラウスの事と合わせて――』
 朱先輩のブラウスの話をしてしまったって事は、朱先輩も悲しんでしまうんじゃないかな……そう思うと、本当に私自身軽はずみな事をしてしまったんだなって正に“後悔先に立たず”を体現してしまう。
(『ちょっと待つんだよ! 今って事は、今近くに愛さんがいるって事?!』)
『え、えぇ……今、私の隣であなたのブラウスを握ってるわ』
 ……辛い。本当は自分で言わないといけなかった事なのに、違う形で朱先輩が知る事になって……私の事、なんて思うのかな。
(『何考えて愛さんの前でわたしに電話して来たんだよ! 本当に最低にも程があるんだよ! 愛さんの目の前でわたしに電話した挙げ句、わたしと愛さんだけのブラウスを通じた約束……他人の空間に何も知らない穂っちゃんが土足で踏み荒らすなんて……そんな事したら、愛さんが涙してしまうに決まってるじゃないっ! 愛さんが自分を責めてしまうに決まってるじゃないっ! ただですら傷ついた愛さんに追い打ちをかけるなんて、本当に何を考えてるんですかっ!』)
 朱先輩を一体何のやり取りをしているのかは分からないけれど、ハッとして涙を浮かべた私の顔を見たかと思ったら、
『そんな事言ったって、岡本さんを大切にしてる船倉さんにも今日の話――』
(『わたしの事なんて後回しに決まってるじゃないっ! そんな事も分からないの?! それにどうしてわたしと穂っちゃんの繋がりまで言っちゃうんだよ! どうして愛さんが穂っちゃんの事を信用出来ないって、しきりに言い続けてたのかのかも分かったんだよ。愛さんに穂っちゃんは信用しても大丈夫だよって言ったわたしも最低なんだよ……今日はもう声を聞きたくないから電話は切るけど、月曜日そっちに顔を出すから。その時に目の前で、本当に大切で、未来まで縁を繋ぎたいと思ってる人の話をしたら、どのくらい不安で傷つくのか教えてあげる――本当に、だからわたしは電話が大っ嫌いだし、辛くて悲しいんだよ――』)
『え?! ちょ、ちょっと船倉さんっ!!』
――――――以上・通話全文入り――――朱先輩―――――ここまで――――――
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