vs, フラモン Round.6

文字数 3,492文字


「マドカ様を監視……ですって? 聞き捨てなりませんわね!」
「はぇ?」と、モエルは小首コクン。
「それは(すなわ)ち『日向(ひなた)()』を監視していたという事! つまり、(わたくし)のヒメカをも監視していたという事ではありませんの!」
 いま、さりげなく「(わたくし)の~」とか言わなかった?
 うん、まあ……この際いいや。
 頑張れ! ラムス!
「うん、ヒメカちゃんも一応見てたよ? だって、マドカちゃんと常に一緒だったし」
 キョトンと罪悪感も無しに肯定。
 クックックッ……おバカ者め。
 ラムスの怖さを知らないな?
 ()が〝日向(ひなた)()〟では、お母さんに次ぐナンバー2なんだぞ!
 そして、ヒエラルキー最下位がボク(・・)……シクシク。
「あ、そうだ! ヒメカちゃんの画像もあるよ? 見る?」
 人懐(ひとなつ)こい笑顔で、モエルはパモカを取り出した。ピンク色のヤツ。
 ってか、何故この()も持ってるん?
 もしかして、宇宙共通アイテム?
「な……何て事を! (わたくし)のヒメカを盗撮するなんて! 没収! 没収ですわ! ヒメカのプライバシーを侵害するものは没収です!」
 憤慨(ふんがい)ながらにツカツカと歩み寄る。
 そして、二人して画像閲覧に見入り始めた。
「……あら、コレは……まあ……こんなショットまで……え、ウソ……ええ?」
 興味津々じゃないかよぅ。
「あ、スゴ……ああん、こんなのダメですわ……はぅん……」
 オイ、Eカップ?
 傍目(はため)には、スゴくいかがわしいぞ?
 特に字面(じづら)だと。
 ってか、チト嫌な予感。
「あ、待って下さいまし? いまの画像……そうそう……あらまあ、ヒメカったら可愛い……ウフフ ♪ 」
 (ひと)(しき)堪能(たんのう)した後、ラムスはボクへと振り返った。
「マドカ様、この(かた)と〝御友達〟におなりなさい! 是非!」
「絶対ヤだよ!」
 丸め込まれた! あのラムス(・・・・・)が!
 恐るべし、モエル!
「ってか! ボクの周りは、こんな変態ばかりか!」
「失礼ですわね、変態筆頭」
 イヤな肩書が付いたよ。
 だったら、女ながらにして『男 ● 一号生筆頭』の方がいいよ。
(わたくし)は変態ではございません。ヒメカを溺愛(できあい)しているだけですわ」
「ボクだって、ジュンだけだよ!」
「そして、わたしはマドカちゃん……ウフフ♪ 」
 あ、ダメだコレ。
 自覚無き〈変態(ストーカー)三銃士〉揃い踏みだ。
 出口の見えないカオス展開が続く──その最中(さなか)、突如として黒い影による奇襲が!
 頭上からだ!
「危なッ!」
 ボク逹は咄嗟(とっさ)の跳躍で、その場から離れる!
 発散される鋭利な気迫は強烈過ぎて、無防備でも感知するに他易(たやす)かった!
 何よりも、全員〈ベガ〉だ!
 潜在戦闘能力は高い!
 着地に片膝を着く影!
 ボク逹は距離を取って警戒視する!
 ユラリと立ち上がった姿は、見覚えのある〈モスマンベガ〉だった!
「ああっ! キミは──」
「久しぶりだな……日向(ひなた)マドカ!」
「──イナ子さん!」
「シノブンだ! いや〝シノブン〟でもなァァァーーい!」
 一人(ひとり)ボケツッコミで、勝手に荒れてるし。
 腕を上げたなぁ、シノブン!
 それはさて()き、今回の彼女はマイナーチェンジをしていた。
 肩当てに胸パッド、篭手(こて)臑当(すねあ)て──要所要所に軽装防具を(まと)っている。
 何よりも気になるのは、片手にした物騒な武器。
「ねぇ? シノブン?」
「シノブンやめろ」
「何さ? その日本刀?」
「コレこそは、我が愛刀〝我蛾(がが)(まる)〟!」
「…… ● ッコロ?」
「そして、 ● ロリ……って〝じゃ ● ゃ丸〟ではないッ!」
 さては観てたクチだな?
 シノブンのカワイイ趣味、見~っけ ♪
「前回、持ってなかったじゃんかよぅ?」
「正直、前回は(あなど)っていたのでな。だが、(たび)(かさ)なる戦績を(かんが)みれば、貴様の戦闘ポテンシャルは認めざる得ない。(ゆえ)に、今回は私も本気という事だ」
 本気になったら刃物(はもの)沙汰(ざた)って……ただのアブねーヤツじゃん。
 夕方のニュースで速報扱いされるヤツじゃん。
 シノブンはジロリと冷蔑(れいべつ)を向けた──モエルに。
「……しくじったな〈半自律型外殻実装仕様コスモローダー・タイプA3-2006〉」
「はぇぇ……モ……モエルって呼ん──」
「──呼ばん」
 だよねー ♪
「失望したぞ。満を持して出撃命令が下されたというのに、ジャイーヴァ様直々の期待を裏切るとは」
「ふ……ふぐぅ……だっ……だってぇ……」
 半ベソ顔で縮こまるモエル。
 怯えているのか、小動物のように震えている。
 だから──ボクは両者の間へと割って入った。
 敵意の眼差(まなざ)しが、矛先をボクへと推移させる。
「あ……マドカちゃん?」
 背後に(かば)われたモエルは、戸惑いにボクの横顔を見つめていた。
 ホントはイヤだよ?
 こんなストーカー娘、これ以上関わりたくないし……。
 でも、仕方ないじゃん。
 ボクの目の前で怯えてるんだもん。
 そういうのは放っておけない。
「ねぇ、シノブン?」
「シノブンやめろ」
「どうして今回は、こんな大掛かりなのさ? 大勢に目撃されるのに、こんな巨大ロボまで出してきて?」
「これはジャイーヴァ様の御判断。おそらく、持てる最大戦力で望んだだけだ。次々と刺客(しかく)が返り討ちに遭う現状で、暗躍だ何だと(こだわ)ってもいられないからな」
「では、わざと無差別に襲った……と?」
 (あご)に指を添えて小首を(かし)げるメイドベガへ、シノブンは()めた蔑視(べっし)を返す。
「確か〈ブロブベガ〉の〝ラムス〟だったか。如何(いか)にも。足手まといが多ければ多い(ほど)、貴様達の(かせ)も増すのだろう? 何せコイツは『赤の他人を見捨てられない独善者』だ」
「にゃんだとーーッ!」
「あら? それは少々違いますわよ? この(かた)は『底抜けに考え無しの御人好しバカ、ついでに未来永劫のAカップ』ですわ♪ 」
「ゴフッ!」
 精神的ダメージに、仮想(ヴァーチャル)吐血した。
 まさかの味方に刺されたよッ!
「理には叶っていますけれど、フェアとは()(がた)いですわね?」
「私は〈(しのび)〉……目的を叶えるためならば、手段を(いと)わん」
 ああ、そう言えばそうか。
 初めて戦った時も、ヒメカを人質(エサ)にしていたもんね。
 任務優先の非情さは忍者のモットーだし……うん、妙に納得。
「ラムスとやらよ……貴様には、私からも質問がある。聞けば、貴様は〈宇宙怪物(ベム)〉だったらしいが……その〈宇宙怪物(ベム)〉が、何故、日向(ひなた)マドカを(かば)い立てする?」
 射抜くような冷たい眼差(まなざ)しに、ラムスは柔和な微笑(ほほえ)みで答えた。
「確かに、(わたくし)は〈ベガ〉ですわ。けれど、貴女(あなた)(がた)に対する仲間意識など微塵(みじん)もありませんから」
「何?」
「それに、そもそも貴女(あなた)(がた)のような〝凡百(ぼんひゃく)烏合(うごう)(しゅう)〟が、眉目秀麗(びもくしゅうれい)()才色兼備(さいしょくけんび)(わたくし)と同等とでも御考えで? それこそ厚顔無恥(こうがんむち)(はなは)だしい……失笑(しっしょう)ものですわよ? クスクス♪ 」
「…………」「…………」
 絶対無敵な自尊心に、ボクもシノブンも閉口。
 よく曖気(おくび)も無く平然と()って()けたな、コイツ。
 ま、それはいいとして──。
「だから、その〝目的〟ってのは何なのさ?」
 ボクが素直な疑問を向けた途端、シノブンはキッと睨み返してきた!
「知りたくば、私と戦え! 日向(ひなた)マドカ!」
 ……またかよ。
 ……何でだよ。
 執念深いよ! シノブン!
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登場人物紹介

名前:

 日向マドカ

 (Madoka Hinata)


種別:アートルベガ


性格:

 常に明朗快活で楽観的。考えなしの即決行動派。

 思考や言動も突飛なので、状況を予想外の展開へと引っ張る事が多い。

 しかし、根本的に底抜けに明るく他人思いな性格のため、憎めないカリスマ性を抱かせる。


特徴:

 ある日『アブダクション( UFO による拉致)』によって〈アートルベガ〉へと生体改造された少女。

 その能力で地球の平穏を脅かす〈ベガ〉と戦う〈SJK(SpeaceJK=宇宙女子高生)〉の使命を負わされる。


 相棒の〝星河ジュン〟に対しては尋常じゃないほど執着的な好意を抱くが、それが『大好き』の域なのか『同性愛』なのかは不明(本人にも自覚無し)。

名前:星河ジュン

(Jun Hoshikawa)


性格:

 理知的な常識派。

 学年トップレベルの秀才でもある。


特徴:

 主人公〝日向マドカ〟の親友だが、彼女の突飛な言動には振り回されっぱなしで、常に沸点の低いツッコミ役としてのポジションが確立してしまっている。

 しかしながら、マドカに対して母性にも似た強い愛情も抱いているようで、どうしても放っておけない世話役女房的な関係性でもある。


名前:クルロリ

(Kururori)

 ※ 本名は不明。

 この〝クルロリ〟という名前も、日向マドカが『クールロリータ(Cool Lolita)』から捩って命名した便宜的呼び名に過ぎない。


性格:

 無表情。無抑揚。

 沈着冷静な合理論者。

 反面、朴訥にして朴念仁。


特徴:

 正体不明。

 小柄な謎の少女。

 その言動から、少なくとも〈宇宙人〉である事は確実。

名前:ラムス

(Ramus)


性格:

 しとやかにして柔和。沈着冷静。

 反面、結構したたかで抜け目が無い。

 基本的に人当たりは良いが、相手によっては毒舌で心理的ダメージを与える辛口な面もある(特にマドカには)。

 しかしながら、根は心優しい。

 何は無くとも『ヒメカ溺愛』という固執愛を持つ。


特徴:

 惑星ジェルダの原生生物〈ブロブ〉であったが〈ヒトゲノム〉移植により〈ベガゲノム〉を得て〈ベガ〉へと新生した。

 それと同時に高度な知的生命体へと昇華された。

名前:

 胡蝶宮シノブ

 (Shinobu Kochoumiya)

 ※ 日向マドカからはフランクに〝シノブン〟と呼ばれるが、本人はプライド的に嫌がっている。


性格:

 自尊心は強いが、沈着な理知派。

 忍者として培った性格は、時に冷淡非情にも切り替わる。

 愚直なまでに使命感が強いが、四角四面な性格は狭隘に審美眼を曇らせてしまう危険性も孕む。


特徴:

 胡蝶流忍者の次期頭領。

 ある日、突然にして〈モスマンベガ〉へと生体改造されて〝人間の姿〟へ戻れなくなってしまい、憧れていた『普通の女子ライフ』と訣別せざる得なくなった。

 途方に暮れていた折に、謎の宇宙人〝シャイーヴァ〟が接触し、彼女を懐刀的存在と召し抱える。

 以降、利害一致からジャイーヴァへの貢献に奔走。

 無敗にして順風満帆であったところに、運命の天敵〝日向マドカ〟と接触する羽目となる……。

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