vs, ブロブ Round.7

文字数 1,324文字


「カ・レ・ー・だ ♪  カ・レ・ー ♪ 」
「カ・レ・ー・だ ♪  カ・レ・ー ♪ 」
 姉妹(しまい)(そろ)ってルンルン気分。
 ボクとヒメカは夕飯メニューを連呼しながら、商店街をスキップしていた。
御二人(おふたり)(とも)、少しはおとなしくして下さいませ。周囲の方々に迷惑ですわよ?」
 軽く羞恥心(しゅうちしん)をはにかみながら、同伴(どうはん)保護者(ほごしゃ)──ラムスが(たしな)める。
「だってボク、カレー大好物だもん」
「ヒメカも、ラムスちゃんのカレー楽しみなんだもん」
「もう」
 夕飯材料買い出しの一幕だ。
 ラムスが家に来て、(すで)に一週間。
 こうした微笑(ほほえ)ましい光景は、もはや日常になっている。
 商店街の人達にしても、ラムスは顔見知り客だ。
 無論〈ベガ(・・)〉って事は知らないけど。
 それはさて()き──やがて見えたるは、スーパーマーケット『ラブライフ』!
「ヒメカ、アレが我々の目的地だ!」
「らじゃ!」
 秘境探検隊の如く志気と敬礼!
「よっしゃ! いざ乗り込むぞ!」
「その前に!」意気揚々(いきようよう)(いさ)み出すボク達を、ラムスが襟首(えりくび)(つか)んで制止した。「(よろ)しいですか? この間みたいに、余計な物をカートへ忍ばせない事!」
「「ええ~?」」
「特にマドカ様? 何百円もするお菓子を、まとめ買いしませんように」
「だって、全部買わないとロボットに合体できないんだもん」
「し・ま・せ・ん・よ・う・に!」
「は~い」
 渋々了承する。
 仕方ない。
 今日のところは我慢しよう。合体(・・)を。
「二個ならいいというわけではありませんからね?」
 見透(みす)かされていた。
「ヒメカは『魔法戦士(セラキュア)チョコ』欲しかったな……」
「コホン、に……二個だけですよ?」
「うん♪ 」
 贔屓(ひいき)だ!
 (みな)の者、此処に贔屓(ひいき)がおるぞーーッ!


 この店舗は結構デカい。
 食料日用品から雑貨まで何でもござれだ。
 エスカレーター完備の二階建てだし。
 ってワケで、ヒメカとラムスが仲良く買い物する最中(さなか)、ボクは一人でブラブラと物色(ぶっしょく)がてらに彷徨(うろつ)く。
 若干(じゃっかん)、フテながら。
 別に()いているワケじゃない。
 理由は、もっとシンプルだ。
「ちぇっ、残り五体だけで合体できるのに……『十二神将合体ゴッドブッダ』の完成形態」
 と、前方に見知った顔を発見。
「あ」「あ」
 互いに視認して声を漏らす。
 次の瞬間、ボクの甘えん坊スイッチがオン!
「うわ~~ん! ジュ~~ン! 合体したいよ~ぅ!」
公衆(こうしゅう)面前(めんぜん)で、いきなり何を口走(くちばし)ってるかーーッ!」
 泣きついた途端(とたん)激昂(げっこう)ながらに拒否(きょひ)られたよ。
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登場人物紹介

名前:

 日向マドカ

 (Madoka Hinata)


種別:アートルベガ


性格:

 常に明朗快活で楽観的。考えなしの即決行動派。

 思考や言動も突飛なので、状況を予想外の展開へと引っ張る事が多い。

 しかし、根本的に底抜けに明るく他人思いな性格のため、憎めないカリスマ性を抱かせる。


特徴:

 ある日『アブダクション( UFO による拉致)』によって〈アートルベガ〉へと生体改造された少女。

 その能力で地球の平穏を脅かす〈ベガ〉と戦う〈SJK(SpeaceJK=宇宙女子高生)〉の使命を負わされる。


 相棒の〝星河ジュン〟に対しては尋常じゃないほど執着的な好意を抱くが、それが『大好き』の域なのか『同性愛』なのかは不明(本人にも自覚無し)。

名前:星河ジュン

(Jun Hoshikawa)


性格:

 理知的な常識派。

 学年トップレベルの秀才でもある。


特徴:

 主人公〝日向マドカ〟の親友だが、彼女の突飛な言動には振り回されっぱなしで、常に沸点の低いツッコミ役としてのポジションが確立してしまっている。

 しかしながら、マドカに対して母性にも似た強い愛情も抱いているようで、どうしても放っておけない世話役女房的な関係性でもある。


名前:クルロリ

(Kururori)

 ※ 本名は不明。

 この〝クルロリ〟という名前も、日向マドカが『クールロリータ(Cool Lolita)』から捩って命名した便宜的呼び名に過ぎない。


性格:

 無表情。無抑揚。

 沈着冷静な合理論者。

 反面、朴訥にして朴念仁。


特徴:

 正体不明。

 小柄な謎の少女。

 その言動から、少なくとも〈宇宙人〉である事は確実。

名前:ラムス

(Ramus)


性格:

 しとやかにして柔和。沈着冷静。

 反面、結構したたかで抜け目が無い。

 基本的に人当たりは良いが、相手によっては毒舌で心理的ダメージを与える辛口な面もある(特にマドカには)。

 しかしながら、根は心優しい。

 何は無くとも『ヒメカ溺愛』という固執愛を持つ。


特徴:

 惑星ジェルダの原生生物〈ブロブ〉であったが〈ヒトゲノム〉移植により〈ベガゲノム〉を得て〈ベガ〉へと新生した。

 それと同時に高度な知的生命体へと昇華された。

名前:

 胡蝶宮シノブ

 (Shinobu Kochoumiya)

 ※ 日向マドカからはフランクに〝シノブン〟と呼ばれるが、本人はプライド的に嫌がっている。


性格:

 自尊心は強いが、沈着な理知派。

 忍者として培った性格は、時に冷淡非情にも切り替わる。

 愚直なまでに使命感が強いが、四角四面な性格は狭隘に審美眼を曇らせてしまう危険性も孕む。


特徴:

 胡蝶流忍者の次期頭領。

 ある日、突然にして〈モスマンベガ〉へと生体改造されて〝人間の姿〟へ戻れなくなってしまい、憧れていた『普通の女子ライフ』と訣別せざる得なくなった。

 途方に暮れていた折に、謎の宇宙人〝シャイーヴァ〟が接触し、彼女を懐刀的存在と召し抱える。

 以降、利害一致からジャイーヴァへの貢献に奔走。

 無敗にして順風満帆であったところに、運命の天敵〝日向マドカ〟と接触する羽目となる……。

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