第6話 「風邪の効用」

文字数 1,380文字

 野口 晴哉(はるちか)の「風邪の効用」(ちくま文庫)。
 この野口さんという人は、数少ない「本物」だと思う。整体の祖のような人で、子どもの頃から、かなり常人でない人であったと聞く。
 ぼくはしょっちゅう風邪をひき、その度に葛根湯、偏頭痛の時はロキソニンやバファリンを飲んでしまうが、要するに「クスリなんか飲まない方がいいですよ」ということを云っている本。

 マンガの「サスケ」に、熱を出すためにミミズをサスケが飲む場面があった。スヌーピーも胃がおかしい時、草を食べていた(犬猫は、胃腸の具合が悪い時、わざと嘔吐するために草を食べるらしい)。

 野口さんによれば、風邪は「より健康になるための身体からの熱」なのだそうだ。自然に治れば、「ヘビが脱皮したように」肌がツルツルになって、顔つきも良くなるらしい。かなり常識から外れたことも書いてあるけど、1つの考え方として堂々とアリだと思う。いや、そもそも「常識」を疑うところから始めた方がいいのかもしれない。だって身体なんて、不思議なことの宝庫なのだから。

「風邪は万病の元、などという言葉に脅かされてはいけない。身体を正し、生活を改め、経過を待つことが大事である」
「風邪は治すべきものではなく、むしろ風邪によって身体、生き方、生活スタイルが改善されるのだ」
 そう野口さんは主張している。
 これは、大切な考え方だと思う。何でも強制、矯正してはいけない。まして掛け替えのない、この世で1個の自分の身体、異物・他物によって正されるべきではない。
 ひとりひとりが、その自身の身体で産まれ、育ち、その身体をもって生きている。その身体からの発信を、素直に受け容れていいのではないか、と。
 個人を尊重すること、ひいては社会のあり方、自然環境への対し方、生命への接し方へ繋がっていく考え方だと思う。

 だが、なかなかどうして、私はすぐ風邪薬に頼ってしまう。我慢強くないためだ。せっかく無職で、何も急いで治す必要もないのに。
 そしてこの本がいかにイイことを云っていたとしても、ビジネスマンには受け容れ難いことだろう。でも、私が今までしてきた色々な仕事に限って言えば、人がひとりぐらい何日か休んでも、それで会社が倒産するわけでもなかった。長く休んだ後出勤すると、数日気まずいだけで、あとは時間が解決してくれた。
 休んだら給料が減るというのはあったが、それでその月の生活の贅沢ができなくなるから、家計のやりくりを見直す機会になった。

 頭で分かっていても、実践となると難しい面がある。でも、自分を大事にしましょう、この世でたったひとつの自分、みんな、掛け替えのない自分を抱えて、ひとつの自分をチャンと大切にすれば、まわりの人も、みんな自分を持っているのだから、そのひとりひとりの「自分」を大事にできるようになって、自殺や他殺のない社会になるのではないでしょうか…とは云っていない。(これはぼくの誇大解釈)

 病院に行けば、パソコンばかり見ている医者にクスリが与えられ、せっかくの「風邪の効用」を消してしまうということ。
 老人ホームで働いていた時、入居者さんに与える薬の多量さに、かなり驚いた。仕事だから、申し訳なく飲んで頂いていたけれど、ほんとにすごい量だった。たぶん薬も、利権とか、医者と薬剤会の癒着、要するにお金が絡んでいないことはないように思う。
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