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文字数 419文字

「川上、ちょっといいか? 買い出し付き合ってくれ」
「え? あ、はい」
 川上を誘ってその場を抜け出すと、しばらく歩いた先で、俺は彼女にこっそり言った。
「あいつはカレーよりハヤシライス派だ」
「あいつって?」
「羽田」
 名前を告げた途端、顔をまた真っ赤にする川上。おーおー、かわいいなぁ。そうなのだ。羽田は学食の日替わり定食でハヤシライスの日はご機嫌なのだ。あいつ、「俺はカレーを食べたい」と言ったけど、実は辛いのよりもまろやかなハヤシライスのほうが好きなんだ。
「川上は料理うまそうだし、作れるよな? 頑張って作って、誘ってみたら?」
「は、はいっ! 頑張ります!」
「じゃ、やっぱり買い出しは俺ひとりで行くわ。さっきの羽田の表情、俺を殺そうとしてたから」
「それは気のせいじゃ?」
 どこまでも天然な川上だ。これじゃ周りが振り回されそうで大変だな。とりあえず、川上を宴会の席に戻らせると、俺はふらりとコンビニへ向かう。
 春の風が心地よかった。【END】
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