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文字数 467文字

「羽田、お前川上にはなぁんか甘いよなぁ。甘いというか、優しいというか?」
「……」
 俺の言葉に真っ赤になったのは、川上だった。当の羽田は肉じゃがをパクパク食べている。大丈夫か、このペースで。みんなの分なくならないか?
「羽田、お前いくら川上の肉じゃががおいしいからって、ひとり占めすんなよ?」
「わかってるよ」
「あ、先輩、お酒の瓶と紙コップ取ってくれますか? 足りなくなっちゃって……」
 アルコール度数の低い酒を飲んでいた川上が、日本酒に手を出そうとする。そりゃあ、こんな状況で素面なままなんてキツイだろう。恥ずかしくて。俺は日本酒を紙コップに注いで、川上に渡そうとした。すると。
「おい、羽田!」
 羽田は俺の手から酒を奪うと、飲み干してしまった。
「……川上はそんなに酒が飲めないんだから、勧めるな」
 その言葉に、堀川が反応する。
「ヒューウ! もう羽田先輩って、川ちゃんのこと大事でしょうがないんスね! 川ちゃんよかったね!」
 真っ赤になって縮こまる川上に、顔色ひとつ変えない羽田。俺はそのふたりをニヤニヤと眺めながら酒をあおった。【END】
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