2024/2/27 プアプアちゃんとつながる読書

文字数 1,825文字

本はつながるって、いつも思っている。

読書をしていて、あるフレーズ、一文、が、つながる。




たとえば、塚本邦雄の歌集『感幻樂』に


つひに網膜脈視症 夜をうがつ井の底にをとこの黑髮そよぐ

という短歌があるのだけれど、これは木々高太郎先生の小説であるな、と思った。




塚本邦雄も木々高太郎先生も、二人とも好きなのでうれしかった。わくわく。

また、たとえば、中上健次の詩にプアプアちゃんが出てきた。
これはすぐ鈴木志郎康さんの詩「私小説的プアプア」(『罐製同棲又は陥穽への逃走』)や「プアプア詩」への愛だとわかった。
中上健次も鈴木志郎康さんも好きなのでうれしかった。
中上健次も面白い詩を書くよなあ。
該当箇所、途中から載せます。



撃つことのできぬこの俺
いまだ撃てぬまま腹上死しつづけるこの俺
歌舞伎町朝日通りで魚を買い
悲しみも知らぬのに雨に泣き
白い薔薇の棘でつきさされた極刑者の男根をちらつかせ
ああ世界永続革命
せめて俺は DAN BAN BAN と叫ぼう
街はプアプアちゃんよりもすさまじく発情し色狂いをおこし


ヒトデもすべて性器であると云う
男は女にくらいつき女は女にくらいつき女は股をひらいて中森君にくらいつき

(中略)

撃つことのできぬこの俺
いまだ撃てぬまま腹上死しつづけるこの俺
DAN DAN DA DA DA
DAN BAN BAN
なんならいっそ撃ち殺さないか
この街この俺

(「季節あるいはベトナムから遠く離れて」 中上健次)
 
以下、元ネタプアプアちゃん。



十五歳の少女はプアプアである
純粋桃色の小陰唇
希望が飛んでいる大伽藍の中に入って行くような気持でいると
ポンプの熊平商店の前にすごい美人がいるぞ(註1)
あらまあ奥さんでしたの
プアプアと少女の父親と私との関係は
二役で道路を歩いていると小石が転っていた
敵だ
敵を殺さなければ平和はないと今朝の新聞に出ていました
これがべトナムの真実だ
写真が5枚
歴史的宿命だ
写真が5枚
のどちんこがチクリ
そんなことをいっていると反動としての効果を上げる
広電バスの非常口を使え(註2)
血をきれいにする詩法なのだ
純粋桃色の小陰唇なのだ
もうひとりのプアプアが私の方に向って来る
またひとりプアプアが私の方に向って来る
遂にプアプアが私の方に向って来る
私はオーロラに包まれている
私は純粋ももいろに射精する
プアプアちゃん行っちゃいや、ああ私の天使
それなのに教授は腕をひっつかんで大英博物館へ連れて行ったのだ(註3)
角のところに赤毛の日本女がいる、2本のももが透けている
彼女は処女だ
いや非処女だ
では賭けるとしよう
私は別に処女はすきでもないけど、きらいでもない(註4)
去って行くプアプアは父親をこわがっているのさ
男根さ
おやじというのが叩いてピアノで十八万円もしたそうだ
しかしながら処女は父親が犯し父親は非処女の舌にくるまってべ-コン巻き男根の日曜日の出勤で
あらまあ奥さんでしたの
壁の穴は大きいでしょう
(私が手淫しているのが見えましたか)
米国は卑怯だとフイン・タンフアト氏はいった(註5)
胸に轟きますね
でありますから全国のカメラマンよ集結せよ
今や天皇陛下並び美智子妃殿下を
ありとあらゆる角度のあらゆる日時において撮影せよ(註6)
当然明るみに出てくるであろう純粋桃色の突起物よ
私はプアプアと歩いていたのだが
あれに会ったのさ
あらまあ奥さんでしたの
白色になった小陰唇なの
鶏だ滝だ、羽ばたき飛び立つ巨大な滝(註7)
何とも二十年も連続して生きて来た広島の人たち
広島を一日も早く、東京へ立ち去りたい私
困ってしまうわ、あたし、だってその、あら、
セビロ屋のズボンの大安売りが始った(註8)
大急ぎで上の道を駈ける位に歩いて行くと
十五歳純粋ももいろのプアプアが向うから走ってくる
突然私は勃起して

註1 一九六五年七月三日、広島市十日市町交叉点の歩道の安全壁に二年前に書かれていた「愛の道路」という文字は「ポンプの熊平商店」という字に変っているのを見た。
註2 広島市を走つているバス、一名青バスともいう。
註3 広島テレビ、七月三日午後入時外国製テレビ映画「泥棒貴族」より
註4 戸田桂太氏六月二十四日付の私信より。
註5 七月三日毎日新聞に岡村昭彦氏のべトコン副議長会見記が載った。
註6 七月三日丸善広島支店で天皇の「相模湾カニ類」資料展を取材して。
註7 七月三日八時三十分NHKテレビ「婚約未定旅行」を見て退屈の余り。
註8 この特売で五五〇円のズボンを買った。

(「私小説的プアプア」 鈴木志郎康)


ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み