2024/1/14 ピアノのせんせい

文字数 628文字




きょうは仕事で、年上の方に質問されてPCを共に見ていた。
年齢的には母親くらいの優しい先輩に。
「ちょっと失礼しますね」
とキーボードを打ったりして、
「おかしいですね。うーむ」
などと話した。

しばらくして、その女性が
「のくずまさんは…ピアノの先生ですか?」
と私に聞いた。
職場で。
「え?!ピアノ…?の、せんせい…?え、私が、私がですか?!」
私はあきらかに動揺した。
私はいま、書誌データの話をしていて明らかに私はピアノの先生、ではない。
「いや…私は…ピアノの先生では…ない、と思います」
でもいまいち、確信は持てなかった。
むかしピアノを習っていたし、楽譜も読める。クラシックもわりと聴く。
「そうでしたか。…いや、私は、むかしからね、やさしいピアノの先生に弱くて」
女性がそういうので、よくわからなかったが、なんか悪い気はしなかった。 

ピアノのせんせい。

そういえばこの女性とは、以前クラシックの話をしていたのだった。
マルタ・アルゲリッチとか、ウラディミール・ホロヴィッツについて。
アルゲリッチの綴りはどう書くのか、と質問を受け、アルゲリッチの綴りは、Martha Argerichですよ、と隣で教えたりした。
「そうなんですね!」
と喜ばれた。

私は年上の女性にわりと好意をうけることがあり、上司にも
「のくずまさんは…話しやすいよね…いいと思いますよ!」
と褒められた。
(本音を言わないだけだが…)
嫌われるよりはいいのだけど、ふしぎだった。

そうか。
私は、私はピアノの先生だったのか。
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