第19話

文字数 511文字

本当に消えてしまった。
跡形もなく、こんなにあっさりと。
世界は、何もかもが元通りだった。
僕の社会人2年目。
この年は業績悪化から、新人の採用はなかった。
丹羽課長も、しのさんも生きている。
弥生ちゃんは、冴えない眼鏡女子ではあったが、その巨乳で男たちの目を楽しませていた。
近々結婚するらしい。
デキ婚との、もっぱらの噂だ。
そして彼女は、僕と同い年の同期だった。
トテ子の居ない世界。
みんな、金を稼いで欲望を満たす事に執心していた。
ハラスメントという概念が横行し、表向きみんな努めて雑務も自分でこなした。
より給料を貰う為の点数稼ぎ。
僕には、そんなふうに思えた。
そして、野崎瑠子。
いや、野崎瑠璃子が、トテ子の代わりに同期に居た。
僕は、なんだか彼女に惹かれ、告白して付き合う事になった。
ほぼ半同棲、朝は味噌汁に目刺し、納豆を用意してくれる。
聞けば、入社当初から僕に好意を持っていて、僕の情報を集めていたそうだ。
夜(昼夜となくヤッたが)必ず黒い下着をその白い肌に身に着け、僕を誘った。
「たいちくん、黒が良いんでしょ?」

デートの時は、必ず僕のシャツの腰のあたりをつまんで後ろを付いて来た。
可愛くみせたいのか、漫画みたいにトテテテと歩いて…

あれ?
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