第68話 あとがき

文字数 545文字

秋。
今年は晩夏に台風が通過せず、山は乾ききり、晩夏から初秋にかけてのきのこは大不作だった。
南信州の山の中。
双葉紫明は借金返済の為に、山にきのこや苔を探していた。
彼にとって、いちばんの稼ぎ時である。
僅かな賞金目当てでいくつも書いてエントリーした2つのコンテストも、ひとつ佳作に選ばれたのみ。
一銭にもならなかった。
けれど、それで、なんだかいい気になったやら、悔しいやら、やたらめったらに長い作品を、思うがままに書き殴った。
長い話を書きたかった。
書けなかったから。
どんどん構想が湧くうちにそれを書かないと、そのうちに忘れてしまいそうで。
だから、中途半端な長さになった。
最後、説明的に過ぎた。
反省は多々。
しかし、彼は、今の彼なりに一大スペクタクルロマンを完成させた、と、ささやかな満足感を持っていた。
げてものを、仕上げた。
僕は、げてものだから。
一本のきのこもなく、尾根の頂上まで上がり一息。
すっかりゴムの伸びきったジャージとパンツは押さえてないとずり落ちる。
腰魚籠の紐を解くと、するりと半裸。
ちんぽこアターック!
掠れた、彼なり精一杯の勇ましい大声とともに、腰を鋭く一振り。
彼の粗末なおチンポは、縮みあがったまま、
ころん と揺れた。

ひとりズボンをたくし上げ、腰魚籠を縛り、のろのろと来た道を引き返す。
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