第22話「神の塔」

文字数 2,493文字

 ツルギたちは、旅の準備を整えると、魔物博士から聞いた場所へ、船で行ってみた。
 ソレストの西へ進むと、高い塔の建つ小さな島が見えて来た。
「あれが、神の塔か…。」
 ツルギが呟いた。
 一見何の変哲もない、石造りの塔だった。
 神の塔の前まで来ると、ツルギは、塔の扉に文字が書いてあるのを見つけた。
 そこには、
「これより先、人間は立ち入り禁止。」
と書いてあった。
「人間?俺たちは魔物だが…、ユリカとスミレは入れないってことか?」
「神の塔というからには、何かを試す所なのかもしれないわね。どうする?スミレ。」
「何言ってんの。行くに決まってるでしょ。こんな文字になんの意味があるってのさ。」
と、スミレは扉を開けて中に入ろうとしたが、何かの力で、スミレの体は跳ね返された。
「あれ?今の何?」
「やっぱり、私たちは入れないのよ…。仕方ないわ。ここは、ツルギたち4人で行くしかないようね。」
「そういや、お前らの強さは?レベルは?」
 ツルギが聞いた。
「僕はレベル25です。」
「…強い。」
 マモルは既にツルギたちと同じレベルに達していたが、カブリのレベルは分からなかった。
「…ま、本人が自分で強いって言ってるのを信じるしかねえか。じゃ、行くぜ。」
 ツルギが先頭に立って、扉を開けて塔の中に足を踏み入れた。
 特に跳ね返されることもなく、ツルギ、ヨロイ、マモル、カブリの4人は塔の中に入ることが出来た。
 中は特に仕掛けがあるわけでもなく、通路をまっすぐに進むと少し広くなった部屋があり、そのさらに奥に通路があって、その突き当たりに階段が見えた。
「よし、とっとと進もうぜ。」
 しかし部屋に入ると、どこから湧いて出たのか、魔物たちが現れた。
 赤いゼリー状の体をした、スライムたちだった。
「弱そうな魔物だな。…そうだ、お前らの強さを知りたいし、お前らに任せる。」
 ツルギは、マモルとカブリに言った。
「魔物を甘く見てはいけませんよ。」
 マモルはそう言って、スライムたちに向かって、盾をブーメランのようにして投げつけた。
 盾ブーメランはスライムたち全員に当たり、ダメージを与えたようだった。
 あらかじめ、マモルとカブリの武器も、スミレの錬金術で浄化武器に変えてあった。
「トドメ。」
 カブリは、頭に装備したレーザー砲から、ビームを発射した。
 レーザービームがスライムたちを焼き払い、全て浄化し尽くした。
「…なんかすげえな…。浄化…されたんだろうけど…。」
 ツルギは、カブリのレーザー砲に驚いていた。
「ははは…。僕の攻撃は余計だったかな?」
 マモルもびっくりしていた。ヨロイは驚きのあまり、声も出なかった。
「そんなことない。ビーム強いけど使うと疲れる。連続は出せない。」
「疲れる?どういう仕組みの武器なんだ?」
 ツルギが聞いた。
「念じる。ビーム出る。」
「つまり、精神力を使うってことなんじゃ?」
 ヨロイの言葉に、カブリは頷いた。
「まるで魔法、いや超能力か?」
 とりあえず一同は納得して、先に進んだ。
 次の階では、ゴブリンたちが待ち受けていた。
「だんだん敵が強くなるって寸法か。」
 楽々とゴブリンたちを浄化し、次の階へ進んだ。
 そうして敵がだんだん強くなり、階を進むにつれて、戦いも厳しくなっていった。
 だいぶ高い所まで登って来て、今度はバンパイアたちが現れた。
「魔物の中でも最強クラスだ。気を付けろ!」
 ツルギは気を引き締めた。
 バンパイアたちは、突然襲い掛かって来た!
「ここは、僕が皆をガードします!攻撃は任せます!」
 ヨロイが防御呪文を唱えて、皆の防御力を上げ、さらに身代わりになって敵の攻撃を受け止めた。
 ツルギは光属性の魔法「ホーリー」を唱えた!
 バンパイアは闇属性の魔物なので、光属性に弱い。ホーリーで大ダメージを受けた。
 が、HPが高いので、それだけでは倒れなかった。
 バンパイアは、ヨロイに襲い掛かり、ヨロイに噛み付いて血を吸い、HPを回復した。
 マモルの盾ブーメラン!
 バンパイアたちに微ダメージ。
 続いて、カブリのレーザービーム!バンパイアたちに大ダメージ!
「よし、トドメのホーリー!」
 ツルギのホーリーで、ついにバンパイアたちは浄化された。
「ヨロイさんのHPがかなり減ってますね。僕が回復します。」
 マモルがヒールを唱えて、ヨロイはHPを回復した。
 だが、バンパイアたちはこれで終わりではなかった。
 またしても群れが現れたのだ。
 先程と同じようにして浄化したが、バンパイアは次々と現れた。
「これではきりがない!MPがなくなっちまう!」
 ツルギは、魔法を使わずに倒そうとしたが、バンパイアに直接攻撃はあまり効かなかった。
「ビーム最大。」
 カブリがレーザーでバンパイアを一掃した。
「おお、すげえな!」
 湧いてくるバンパイアをカブリがレーザーで浄化していき、ついにバンパイアは出て来なくなった。
「この中で一番強いのはカブリみたいだな…。」
 ツルギは苦笑した。
「ビーム、HP消費する。食べる、HP回復する。」
 カブリのお腹がぐうと大きく鳴った。
「やれやれ…食い物が欲しいのか。」
 ツルギは、袋からパンを取り出してカブリにあげた。カブリは一瞬でパンを食べつくし、ツルギに向かって手を出した。
「足りないのか?お前、大食いだもんな…。」
 ツルギからパンを受け取ると、それを即座にぺろっと食べたカブリは、また手を出したが、ツルギは既に歩き出していた。
「…敵はもう出てこないようだな。」
 四人は最上階に辿り着いた。
 だだっ広い部屋の中央に、魔法陣のようなものが描かれていた。
「…多分、ボスが出てくるんじゃねーか。お前ら、準備はいいか?」
 ツルギが聞くと、皆頷いた。
 四人が魔法陣に近付いて行くと、魔法陣が光った。
 そこに現れたのは、一人の老人だった。
「おお、お前たち、ここまで辿り着いたのか。」
 老人は、魔物博士だった。
「なんで魔物博士がここに…?」
 ツルギは、訝しげに聞いた。
「…何故、わしがここにいるのか?何故、わしはここにいるのか?知りたいか…?」
 魔物博士は、にやりと笑った。
「…まさか…。」
 ツルギは咄嗟に身構えた。
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