第9話「混乱」
文字数 2,487文字
ツルギたちは混乱している!
ツルギはしゃがみこんで、子供のように泣き出した!
ユリカは怒り狂っている!
ヨロイはへんてこな踊りを踊っている!
スミレは…
「やれやれ。こんなこともあろうかと思ってさ。」
スミレは洞窟に入る前に、混乱を防ぐ特別な耳栓をしていたのだった。
「まさかユリカまで混乱するなんてね。さて、どうしたもんかね。」
スミレは混乱をまぬがれたが、他の三人を元に戻す手段がなかった。
「うえ~ん。こわいよ~~!」
ツルギは情けない声を出して泣いていた。
「踊りましょう!せーの!わっしょいわっしょい!」
ヨロイは鎧を脱いで裸になり、褌姿で奇怪な踊りを始めた。
魔物たちは襲い掛かろうとしたが、ヨロイの変な踊りのせいで、狙いが定まらず、今度は魔物まで混乱した。
「バッカじゃないの!?さっさとやるわよ!!」
ユリカは別人のような口調と態度で、魔物たちを蹴散らしていった。混乱していても、ユリカは魔法を的確に命中させていた。
ユリカの光魔法「サンダー」で、スケルトンは粉々になった。
しかし、先程からの魔法連発で、MPが尽きてしまった。
「ちょっと!あんたたちがもたもたしてるせいよ!」
ユリカは杖でスケルトンを殴ったが、全く効かなかった。
「これまでね…。」
スミレは、地面に何かの魔法陣を描いていた。描き終わると、他の三人を無理矢理その魔法陣の中に引き入れた。
魔物たちが、四人に向かってきた。
すると、魔法陣の外側に向かって、地面からものすごい衝撃と爆発が起こって、魔物は吹き飛ばされた。
「これであたしのMPはなくなったわ。」
スミレは息を切らしていた。
「い、今のは…!?」
ヨロイがさっきの爆発音で、正気を取り戻したようだった。
「スミレ…!?私…。」
ユリカも正気を取り戻した。
「うわーーーん!」
ツルギだけは、混乱したままだった。
「ツルギさん!?どうしたのですか!?」
ヨロイはツルギに駆け寄ろうとして、自分が褌一丁であることを知り、顔を真っ赤にした。
「ぼ、僕は一体…!?」
ヨロイは慌てて下着と鎧を身に付けた。
「大丈夫。あたし以外、皆混乱してたから。魔物のせいでね。」
「私も混乱してたなんて、情けないわ…。修行が足りないわね。」
ユリカは、泣いているツルギを見た。
「どうしてツルギだけ…?」
「怖いよお~!ひっくひっく。」
ツルギは、ユリカに抱きついてきた。
「え!?ツルギ!?」
ユリカは驚いて、真っ赤になった。
「おねえちゃん、たすけて!」
その光景を見て、スミレはけらけらと笑っていた。
「い、今助けるから…。」
しかし、ユリカのMPは尽きていた。治そうにも治せない。
「スミレ!荷物の中に、MPドリンクがあったはずよ!それを頂戴。」
「待ってねえ~~。」
スミレは鞄の中を探っていた。
「早くして!」
「はいはーい。」
スミレに渡されたMPドリンクを飲むと、ユリカは回復魔法でツルギを治療した。
「……。」
ツルギは泣きやみ、しばらくして、無言で立ち上がった。
「俺は一体…?」
「混乱してたのよ。アハハハ…!」
スミレは堪えられずに笑い出した。
「なんで笑うんだ?俺、混乱して何かしたのか?」
「それは僕も聞きたいです!何故裸だったのか…。それに!スミレさんだけ混乱してないようでしたが。」
「あたしは、前もって混乱を防ぐ耳栓をしてたから。」
スミレは、耳栓を取り出してみせた。
「何!そんなもんがあるなら、俺たちにも言えよ!」
「いやー、まさかこんなことになるとは思ってなかったからさ。」
「こんなことって?私も何か…?」
「大丈夫大丈夫。皆混乱して何かやらかすことだってあるんだから。気にしないの。」
「…それにしても…ツルギさんの混乱した姿は…。」
ヨロイは笑いを堪えていた。
「何!?俺がなんかおかしかったのか!?」
「ヨロイ!余計なことは言わないでね。」
ユリカがいつになく厳しい口調で言った。
「と、とにかく、またあんなことになったら大変だわ。急いで、洞窟を出ましょう。」
「待った。敵はあと、イエティだっけか。」
スミレが言った。
「会わないならそれに越したことはないわ。急ぎましょう。」
ユリカがツルギを急かすようにして、再び元の隊列を組んで進み出した。
が、ツルギは、何かぽわんと柔らかい毛のようなものに触れて、それ以上進めなくなった。
「スノーバット、倒したのお前たちか。」
見上げると、大きな茶色い毛むくじゃらの魔物が壁のようになって立っていた。人間のようでもあるが、人間にしては体が大きすぎるし、体毛も分厚く、二本足で立つ獣のようだった。
「イエティ…?」
ユリカがツルギの脇から顔を出し、魔物を下から覗き込むようにした。
「そう。おれイエティ。せっかくねてたのに、スノーバットの音で目ぇ覚ました。お前たちあいつらやっつけたか。」
「ああ。奴らはもういないぜ。」
ツルギが答えた。
「ありがとう。おれ、この洞窟に住んでる。スノーバットは眠りの邪魔するから嫌い。お前たち通っていいぞ。」
「ありがとう。」
こうして、イエティと戦わずして洞窟を抜け出すことが出来た。
「イエティって、あの洞窟のボスだったんじゃねーか?戦わなくてラッキーだったのか、それとも…。」
「うーん…。悪い魔物ではなさそうだったけど…。」
ユリカは、ツルギと目が合うと、恥ずかしそうに頬を染めた。
「あれ?ユリカ…。やっぱり、混乱した俺が何かお前にしたんじゃねえか?」
「大丈夫だから。」
ユリカはそう言って、ツルギに背を向けた。
混乱したツルギに抱きつかれたとき、ユリカは、何故か心地よいと思ってしまったことにどきどきしていたのだった。今は、まともにツルギの顔を見れそうもない。
「…うらやましい。」
ぼそりと、ヨロイが呟いた。
「僕も、あのように混乱していたら、あるいは…。」
「何ぶつぶつ言ってんだ?気持ち悪りいぞ、ヨロイ。」
ツルギは、洞窟の外の山道を歩き出した。
「さて、ここを進めば、集落があるんだっけか。」
「そうだったわね。夜まであともう少しよ。頑張って集落を目指して、そこに泊まりましょう。」
気を取り直したユリカが言った。
ツルギはしゃがみこんで、子供のように泣き出した!
ユリカは怒り狂っている!
ヨロイはへんてこな踊りを踊っている!
スミレは…
「やれやれ。こんなこともあろうかと思ってさ。」
スミレは洞窟に入る前に、混乱を防ぐ特別な耳栓をしていたのだった。
「まさかユリカまで混乱するなんてね。さて、どうしたもんかね。」
スミレは混乱をまぬがれたが、他の三人を元に戻す手段がなかった。
「うえ~ん。こわいよ~~!」
ツルギは情けない声を出して泣いていた。
「踊りましょう!せーの!わっしょいわっしょい!」
ヨロイは鎧を脱いで裸になり、褌姿で奇怪な踊りを始めた。
魔物たちは襲い掛かろうとしたが、ヨロイの変な踊りのせいで、狙いが定まらず、今度は魔物まで混乱した。
「バッカじゃないの!?さっさとやるわよ!!」
ユリカは別人のような口調と態度で、魔物たちを蹴散らしていった。混乱していても、ユリカは魔法を的確に命中させていた。
ユリカの光魔法「サンダー」で、スケルトンは粉々になった。
しかし、先程からの魔法連発で、MPが尽きてしまった。
「ちょっと!あんたたちがもたもたしてるせいよ!」
ユリカは杖でスケルトンを殴ったが、全く効かなかった。
「これまでね…。」
スミレは、地面に何かの魔法陣を描いていた。描き終わると、他の三人を無理矢理その魔法陣の中に引き入れた。
魔物たちが、四人に向かってきた。
すると、魔法陣の外側に向かって、地面からものすごい衝撃と爆発が起こって、魔物は吹き飛ばされた。
「これであたしのMPはなくなったわ。」
スミレは息を切らしていた。
「い、今のは…!?」
ヨロイがさっきの爆発音で、正気を取り戻したようだった。
「スミレ…!?私…。」
ユリカも正気を取り戻した。
「うわーーーん!」
ツルギだけは、混乱したままだった。
「ツルギさん!?どうしたのですか!?」
ヨロイはツルギに駆け寄ろうとして、自分が褌一丁であることを知り、顔を真っ赤にした。
「ぼ、僕は一体…!?」
ヨロイは慌てて下着と鎧を身に付けた。
「大丈夫。あたし以外、皆混乱してたから。魔物のせいでね。」
「私も混乱してたなんて、情けないわ…。修行が足りないわね。」
ユリカは、泣いているツルギを見た。
「どうしてツルギだけ…?」
「怖いよお~!ひっくひっく。」
ツルギは、ユリカに抱きついてきた。
「え!?ツルギ!?」
ユリカは驚いて、真っ赤になった。
「おねえちゃん、たすけて!」
その光景を見て、スミレはけらけらと笑っていた。
「い、今助けるから…。」
しかし、ユリカのMPは尽きていた。治そうにも治せない。
「スミレ!荷物の中に、MPドリンクがあったはずよ!それを頂戴。」
「待ってねえ~~。」
スミレは鞄の中を探っていた。
「早くして!」
「はいはーい。」
スミレに渡されたMPドリンクを飲むと、ユリカは回復魔法でツルギを治療した。
「……。」
ツルギは泣きやみ、しばらくして、無言で立ち上がった。
「俺は一体…?」
「混乱してたのよ。アハハハ…!」
スミレは堪えられずに笑い出した。
「なんで笑うんだ?俺、混乱して何かしたのか?」
「それは僕も聞きたいです!何故裸だったのか…。それに!スミレさんだけ混乱してないようでしたが。」
「あたしは、前もって混乱を防ぐ耳栓をしてたから。」
スミレは、耳栓を取り出してみせた。
「何!そんなもんがあるなら、俺たちにも言えよ!」
「いやー、まさかこんなことになるとは思ってなかったからさ。」
「こんなことって?私も何か…?」
「大丈夫大丈夫。皆混乱して何かやらかすことだってあるんだから。気にしないの。」
「…それにしても…ツルギさんの混乱した姿は…。」
ヨロイは笑いを堪えていた。
「何!?俺がなんかおかしかったのか!?」
「ヨロイ!余計なことは言わないでね。」
ユリカがいつになく厳しい口調で言った。
「と、とにかく、またあんなことになったら大変だわ。急いで、洞窟を出ましょう。」
「待った。敵はあと、イエティだっけか。」
スミレが言った。
「会わないならそれに越したことはないわ。急ぎましょう。」
ユリカがツルギを急かすようにして、再び元の隊列を組んで進み出した。
が、ツルギは、何かぽわんと柔らかい毛のようなものに触れて、それ以上進めなくなった。
「スノーバット、倒したのお前たちか。」
見上げると、大きな茶色い毛むくじゃらの魔物が壁のようになって立っていた。人間のようでもあるが、人間にしては体が大きすぎるし、体毛も分厚く、二本足で立つ獣のようだった。
「イエティ…?」
ユリカがツルギの脇から顔を出し、魔物を下から覗き込むようにした。
「そう。おれイエティ。せっかくねてたのに、スノーバットの音で目ぇ覚ました。お前たちあいつらやっつけたか。」
「ああ。奴らはもういないぜ。」
ツルギが答えた。
「ありがとう。おれ、この洞窟に住んでる。スノーバットは眠りの邪魔するから嫌い。お前たち通っていいぞ。」
「ありがとう。」
こうして、イエティと戦わずして洞窟を抜け出すことが出来た。
「イエティって、あの洞窟のボスだったんじゃねーか?戦わなくてラッキーだったのか、それとも…。」
「うーん…。悪い魔物ではなさそうだったけど…。」
ユリカは、ツルギと目が合うと、恥ずかしそうに頬を染めた。
「あれ?ユリカ…。やっぱり、混乱した俺が何かお前にしたんじゃねえか?」
「大丈夫だから。」
ユリカはそう言って、ツルギに背を向けた。
混乱したツルギに抱きつかれたとき、ユリカは、何故か心地よいと思ってしまったことにどきどきしていたのだった。今は、まともにツルギの顔を見れそうもない。
「…うらやましい。」
ぼそりと、ヨロイが呟いた。
「僕も、あのように混乱していたら、あるいは…。」
「何ぶつぶつ言ってんだ?気持ち悪りいぞ、ヨロイ。」
ツルギは、洞窟の外の山道を歩き出した。
「さて、ここを進めば、集落があるんだっけか。」
「そうだったわね。夜まであともう少しよ。頑張って集落を目指して、そこに泊まりましょう。」
気を取り直したユリカが言った。