第19話「呪いの装備」

文字数 1,994文字

 ツルギとヨロイは、魔物博士に呼び出されて、博士の家へ行った。
「…今更かもしれんが、呪いの装備は、剣と鎧だけだったのか?」
「いや…盾と兜もあったはずだ。」
 博士に聞かれて、ツルギが答えた。
「そいつらも、お前たちと同じように、浄化されて魔物になってたりしてな。」
「そういえば、旅の中でも出会いませんでしたね、結局。」
 ヨロイが言った。
「魔物を助けるついでに、他の呪いたちを探すってのもいいんじゃないか?ツルギはもう、テレポートを覚えただろう。それを使えば、船をいちいち出さなくても、行ったことのある場所へ一瞬で行ける。」
 博士が言った。
「…そもそも、なんで呪いが浄化されると、魔物になった上に、若返るんだか…。」
「お前、若返ったのか?うらやましいな。」
 ツルギの呟きに、博士は反応した。
「ああ。実際はすげーじじいなんだが、心も若返ったみてーで…。」
「…あの子に惚れとるな。ヨロイは、スミレを好いとるようだが。いいのう。若いってのは…。」
「はは、ここに来て良かったぜ。いずれは、ユリカと結婚して、子供を作って、幸せな家庭を築きたいと思ってるんだ。」
「呪いだったのが、嘘のようだな。お前たちは、一体…?」
「呪いは、一人の力で出来るものじゃねえ。何人もの憎悪や怒りが渦巻いて生み出されるものなんだ。」
「ふむ…。人間一人一人の怒りや憎しみが集まって呪いとなるというわけか。」

 戻ったツルギたちを、ユリカが出迎えた。
「博士と何の話だったの?」
 ユリカは不安そうにしていた。
「ああ、別にどうってことない。他の呪いたちのことだ。前に言っただろ。俺たちの他にも、呪いの装備がいるって話。そいつらを探すのはどうかってことさ。」
「ふうん…。そうね、各地の魔物を助けながら、その人たちを探せば、きっと見つかるわ。そうだ!そのときのためにも、ミノルの村づくりがどうなっているか、後で見に行って来てくれない?」
「ああ、分かった。」

 次の日。ツルギとヨロイは、自前の船で、コビトたちとミノルがいる無人島へ行った。
 島に上陸して、少し行くと、広い平地に出た。
 そこには、木材や石材などがたくさん並べられ、あちこちを忙しそうに、コビトたちが動き回っていた。
「おう!俺だ、ミノルだ。」
 ツルギたちの姿を見つけて、ミノルが近付いて来た。
「今、コビトたちと協力して、村づくりをしている所だ。立派な村にするって、張り切ってるぞ。」
「頑張れよ。」
「ああ、そうだ。もし魔物を見つけたら、ここのことを教えてやってくれ。」
「分かった。」

 戻ったツルギたちは、ユリカに報告した。
「そう。順調なのね。良かったわ。」
「しかし、他の呪いをどうやって探すか…。」
「そんなときは、人の多い所で聞き込みですよ。コルバドの酒場に行ってみましょう。」
 ヨロイの提案で、酒場に向かった。
 コルバドの酒場は、様々な冒険者で賑わっていた。
「しかし、情報を得るといっても、呪いの魔物がどんな奴か分からんしな。」
「僕たちのような人型とは限らないのでしょうか…。」
「そうだ。名前に特徴があるはずだ。兜なら、カブトとか、盾なら…タテ?とかな。多分…。」
 名前を手掛かりにして、冒険者たちに聞き込みをすることにした。
 しかし、それらしい情報は得られなかった。
 酒場の奥の方に、獣耳が頭についている者がいた。
「なんでしょう?あの人。人間にしては、獣の耳が頭に?」
「魔物かもしれないが、周りの奴は無反応だな。」
 とりあえず、声をかけてみることにした。
「がつがつむしゃむしゃ!」
 獣耳をした者は、少女だった。少女はすごい勢いで大量の料理を食べていた。
 よく見ると、獣耳はフェイクで、マントのようになった被り物だった。
「被り物…カブリ…カブト…。」
 ヨロイが呪文のような言葉を唱え出した。
「ヨロイ、どうしたんだ?まさかまた惚れたんじゃないだろうな?お前には、スミレがいるだろう。」
「違いますよ。この子はもしかしたら、兜の魔物かもしれません。」
「お前…もしかして、呪いの…カブトか?」
 ツルギが少女に声を掛けると、少女は食べるのをやめてこちらを見た。
「…カブリ。呪いの…兜。」
 それだけ言って、再び食事に戻った。
「カブリか。俺は、ツルギ。もしよかったら、魔物の村に…。」
「お金ない。払ってくれたら行く。…がつがつ。」
「……。」
 ツルギとヨロイは顔を見合わせた。
「…と、とりあえず、兜が見つかったようですね…。まさかこんな近くにいたなんて…。」
 仕方なく、二人で食事代を払ってあげると、カブリは嬉しそうに魔物の村へ行った。
「あと一人か。なんか簡単に見つかりそうだな。」
 拍子抜けしたように、ツルギが言った。
「盾だな。でも、タテって名前としては変じゃねえか?それ以外の名前の可能性があるな。」
「とにかく、酒場にしぼって、探してみましょう。各地にテレポートで行けば簡単ですよ。」
「だな。」
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