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文字数 292文字



いつもより早い秋の訪れは
人のリズムも自然のリズムもかき乱す
どこかチグハグな服に彩られる街と
急かされたように薫る金木犀と
小さな丸い集合体の雲と高い空
まだ少し居座る湿った暑さが
居心地悪そうに屯する電車の中は
いつか見ていた同じ光景を
いつのまにか取り戻して
顔を覆うマスクだけが
まだ終わっていないんだよと
最後の抵抗をしていた
いつのまにか自分だけの
パーソナルスペースはなくなり
視線を交差させないように
暗闇の中をただひた走る鉄の塊は
時々人と空気を取り替えて
ひたすらに役目を果たす
額から流れる汗が乾く頃
いつもの顔ぶれに囲まれて
こだまするのは
人の声以外の何かの物音
そんな始まり
当たり前だった
そんな始まり

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