第18話_② 生か死か
文字数 1,984文字
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残虐な表現が含まれています。
苦手な方はご遠慮下さい。
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次の瞬間、顔を正面に見据え、大きな声をあげた。
先生は眼鏡の奥にある眉間に深いシワを入れるとともに口を固く結んでいた。
沖田保は小さな声をあげ、握りしめていた刃物を湖へと落とした。
沖田保は両手を水の中へ入れ、底を弄る。
素早く湖の中に入ってきた先生は私を抱きかかえ、すぐさま陸地へと移動させた。
先生は自分のポケットからハンカチを出し、私の喉元へとあてる。
私は先生の顔を近くで見つめた。
先生の温かな手を感じて、涙が溢れる。
そう言いながら先生は微笑み、私の頬を伝う涙を拭ってくれた。
水の中へ手を入れ、慌てて探している沖田保へ私は視線を移す。
私は咄嗟に、首を押さえている反対の手で、ミラー先生の洋服の裾を掴んだ。
ずぶ濡れになりながら、進んでいく先生の後ろ姿が小さくなっていく。
前屈みになり、湖の中を探し回る沖田保の背後から先生が近付き、彼を捉えようとした瞬間だった。
沖田保が体を引き起こす瞬間と、ミラー先生が屈み込む瞬間が重なってしまった。
喉元を押さえた、ミラー先生の手の隙間から銀色の光るメスが見える。
呆然と立ち尽くす沖田保の横で、痛みに顔を歪めながら彼の肩にもたれ掛かる先生の姿があった。
手にしていたハンカチを放り投げ、私は2人の元へ駆けだした。
先生は苦痛に顔を歪めながら、首元を手で押さえたまま、首を横に振る。
顔色がみるみるうちに白くなっていく。
先生の首元に刺さったままのメスを沖田保が引き抜いた瞬間だった…。
新緑が生い茂り、青い空がどこまでも広がった湖を背景に先生の喉元から真紅の液体が空中へと舞い散った。
真っ赤な液体を体中に浴びたまま、沖田保はその場に立ち尽くす。
力が抜けた先生の重みと、水を含んだ自分の服の重さに倒れそうになる。
すぐさま脱いだ白衣を喉元へあてつつ、2人で支えるようにして岸まで運ぶ。
真っ白な白衣が瞬く間に赤く染まっていく。
ベンチの近くまで2人で運び、鏡子先生はミラー先生を横たわらせた。
すぐさま先生の足を抱え、ベンチへと乗せ、寝ている先生を跨ぐように膝をつく。
私はすぐさま立ち上がり、ラボへと駆け出す。
遠くでパトカーの音が聞こえ、数人の警官が私とは逆の方向へと走って行く。
私がラボの扉を開いた時だった。