第5話 ラボにて

文字数 632文字

ついたぞ
どのくらいの時間寝ていたのだろう…運転席から彼の声が聞こえ目が覚めた。



辺り一面、うっすらと青白い空が見えはじめ、まだ陽の差す夜明け前だということは分かった。



彼は屋根付エントランスに車を止め、窓越しに近くに立つ2人の女性と話をしている。

おかえりなさい
遠くまでお疲れ様でした
あぁ
彼は運転席を降りると私の座る後部座席へまわり、ドアを開けた。


まだ半分寝ぼけている私の手をとり、後部座席から降ろすとそれぞれ2人の女性の紹介をしてくれた。

こちらは、住み込みで身の回りの世話をしていただいている吉川咲枝さん

なんとまぁ・・・
咲枝さんは口元に一瞬手をおいて驚いた表情を浮かべたあと、涙ぐみながら挨拶をしてくれた。
お待ちしておりました
よろしくお願いします
こちらは、僕と同じくドクターの芳賀鏡子くん、キミの担当医だ。
ようこそ「エスラボ」へ。

芳賀鏡子と申します。

よろしくお願いします、信江さん

加藤です


・・・あれ?名前・・・

私のことは下の名前「鏡子」って呼んで下さいね。

長い時間、車に乗っていて疲れたでしょう?

さぁ、コチラヘ

長く黒い綺麗な髪をなびかせて、鏡子先生は私の少し前を歩きはじめた。

咲枝さん、信江さんルーム1に入ります。

荷物そちらに入れておいてください

わかりました
ミラー、カウンセリングルームはAでいいかしら?
あぁ、俺もあとからいく
鏡子先生は途中振り返りながら、私越しに2人と会話をした。
さぁ、行きましょう
低く心地いいヒールの音とともに、何かの花のような落ちつく香りがした。
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登場人物紹介

加藤 信江

会社員

ミラー

SLSG研究所 所長

内科・精神科 医師

芳賀 鏡子

医師

ミラーの助手

吉川 咲枝

研究所家政婦

近藤 紗奈(旧姓 富樫)

沖田 保

俳優

警官

ミラーの母親

医師

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