第5話 ラボにて
文字数 632文字
どのくらいの時間寝ていたのだろう…運転席から彼の声が聞こえ目が覚めた。
辺り一面、うっすらと青白い空が見えはじめ、まだ陽の差す夜明け前だということは分かった。
彼は屋根付エントランスに車を止め、窓越しに近くに立つ2人の女性と話をしている。
彼は運転席を降りると私の座る後部座席へまわり、ドアを開けた。
まだ半分寝ぼけている私の手をとり、後部座席から降ろすとそれぞれ2人の女性の紹介をしてくれた。
咲枝さんは口元に一瞬手をおいて驚いた表情を浮かべたあと、涙ぐみながら挨拶をしてくれた。
長く黒い綺麗な髪をなびかせて、鏡子先生は私の少し前を歩きはじめた。
鏡子先生は途中振り返りながら、私越しに2人と会話をした。
低く心地いいヒールの音とともに、何かの花のような落ちつく香りがした。