第7話 2人の関係
文字数 1,159文字
少しずつ身の回りのことは自分でできるようになり、近頃は日中芳枝さんのお手伝いをしながら、日々を過ごせるようになった。
芳枝さんと一緒にカモの親子の世話をするようになり、1ヶ月。
母ガモの後をちょこちょこついて回っていた子ガモもだいぶ成長し、もうすっかり一人前になっていた。
窓の外を見つめながら話す、芳枝さんの言葉を寂しく感じたとき、私の心の一部がざわついた。
『イマコノシュンカンヲ…』
天気の良い日はカウンセリングを兼ねて、鏡子先生と一緒に湖の散歩も定期的に行っている。
鏡子先生が指をさした方向を見ると、ラボのウッドデッキで煙草をふかしているミラー先生の姿が見えた。
鏡子先生と私はミラー先生に手を振った。
ミラー先生もこちらに気づき、ウッドデッキの手すりに寄りかかるようにこちらを見ながら笑顔で手を振り返している。
そう言いながら、ミラー先生を見つめる鏡子先生の横顔はとても美しかった。
ウッドデッキを見るとミラー先生はロッキングチェアに深く腰掛け、ゆったりと揺れながら書類を読んでいた。
私の心の一部がまたざわついた。
『いまこのいっしゅんを…』
鏡子先生はうつむき、そして、小さく息を吐いた。
再びロッキングチェアに座るミラー先生を見つめた鏡子先生は口元に優しい笑みを浮かべていた。
鏡子先生は優しく微笑んで、湖の(ほとり)をまた歩き出した。
前を歩く鏡子先生の背中が少しだけいつもよりちいさく見えた。