第１８話『命令』

「　君、大丈夫か？　」


「　まさか、若いおねえちゃんが、丸裸で道路で突っ立てるとは思わなかったよ　」

と言いながらも上着に男物のトレーナーを着せてもらっているが。

その少女の親父のような年齢の男がいやらしく薄ら笑いを浮かべた目で少女の太ももを見る。

「　なんだい。この英語を喋れないのかい？　」

と言い親父は少女の太ももを掴み、触ってきた。

少女は何の反応を一言さえ言わず喋らない。

その何の反応のない態度に親父がOKのサインだと思い車のブレーキを踏み。

軽いブレーキ音にタイヤのグリップを効かせ。

停車させる。

そこで親父は気が付いた。

少女はOKを出した訳では無く意識を喪失しているのだと。

親父は薄ら笑いをにやけた笑い顔に変えサイドの座席にいる少女に向かって襲いかかった。

そして、少女は抵抗しないがそれでも、やや人とは違う左の目の黄金の瞳が少し輝いた。

テスラの安価の部類に入る自動運転の車のタイヤホイールに取り付けられている電気エンジンモーターが息を吹き返す。

車が勝手にいきなり静かに滑らかな軽いウエイトでスピードを出し発進した。

親父は車が勝手にスピードを出ししかも急加速で発車したことに気が付いていない、少女の意識内『　―　わたし　―　』


思い出していた。

宏が頭を抱えて、

宏と少女が流れ着いた海岸での銃撃戦

『　―　あのとき　―　』

宏はイギリス軍制式アサルトライフル銃L85A3を構え辺り一帯の林へ向かって斉射していた。

少女は怯えて肩をすくませその光景をしゃがんで目を閉じている。

宏は森林の中で撃ち終えた後、同じく隣にしゃがみ言った。

「　千紗　」

宏は既に腹には銃弾を受け血にまみれている。

少女は千紗だった。

幻のように、千紗には聞こえた。

『　千紗、、、生きろ、、、、、、　』

「　ごほっごほっごほっ　」宏は血を口から吐き出す。

「　後はお前に任務は一任する。命令は好きなように生きろ　」

千紗は怯えていて何もできない。

さらに宏は至近距離に着弾した先

弾頭からでたマズルフラッシュ（弾丸が射出される際に出る銃口から出た火花）を特定した　―　およそ150m先にある盆地の木が密集した場所か　―

それでも相手の軍に見える部隊は無差別発砲をしている。

「　いいか千紗、お前は自分の好きなように生きるのが命令だ　」と言いマズルフラッシュが出た一点に向かいアサルトライフル銃L85A3を撃ち込んだ。

反応が返ってきた。

焦った様に、さらに宏に向かって一面に向かって弾丸をバラ撒いてきた。

「　相手は、、、イタリア正規軍だ、、、　」千紗に告げる。

千紗は裸のまま何も出来ない、しかも頭を自分で押さえ込んでばら撒かれる着弾に対し声を殺してやはり怯えた。

―　所詮、実践を積んでいない練度の低い連中か。エトワーズ艦に来た奴とは違う部隊だ　―

そして考えた　―　多分に、襲ってきた部隊に追撃命令が海に飛び込んだ時点で切れたんだろう　―

計画していたシナリオの最終集合地点のイタリアにいた、が。

―　ここにいた、俺のチームは既に殲滅されていた。しかも、丁寧な事に武器倉庫の中に　―

GOD War justice―神の正義の戦争―　とブラックスプレーインクで書かれていた。

考えている間にも弾丸は撃ち込まれている。「　くそ、それでも戦うしかねえ　」と言い立ち上がってグレネードランチャーを打ち込む。

見える速度で50m先に撃ち込まれ爆発した。

神の正義の戦争とは火星の宗教上の指導者、キング・プレイの地球の聖戦の戦争での宣言

「　目くらましだ。いくぞ、千紗　」

といい腕を掴み引っ張り上げる。

千紗は怯えた目を宏に見せる。所詮、彼女は半年前まで女子校生であり戦闘訓練を受けてはいても実戦経験は無い。

それでも宏が実感したのは。

―　火星との戦争が始まってやがる　―