第23話 トロッコでゴー!
文字数 3,081文字
後日、司令室から俺達の元へ次の任務の連絡が来た。俺達は早速司令室へ向かう。
「次の任務を与えよう。"廃坑"へ向かい、奥地から"ニトロライト"という爆薬の材料を回収して来るのだ」
「マティアス司令官、まさか爆薬を作って軍事兵器でも開発する気か!?」
「回収する目的は、ニトロライトがならず者の手に渡るのを阻止する為だ」
ならず者……あっ……(察し)。
「奴があの廃坑に向かうとは考えにくいが、万が一ライナスと遭遇してしまったらすぐに撤退しろ」
「撤退する必要なんて無いだろ。俺らはライナスに勝ったことがあるんだよ!」
「そうだそうだ! オレ達4人がかりで挑めば楽勝だぜ!」
「いや、あの時のライナスはかなり手負いの状態だった。私達では本気のライナスに勝てないだろうな」
「そうだよ。エーリッヒ大佐ですら勝てなかった相手なんだから」
うーん、やっぱり今の俺達じゃ本気のライナスに勝てないってか?
「もしライナスにニトロライト取られちゃったらどうするの?」
「もしもの時は、私か"ハンニバル中将"が出向いてやる」
「マティアス司令官ならあんな奴楽勝だろ! ハンニバル中将って奴は知らないけど」
「ハンニバル中将は私と同等の強さを持つ相棒だ。諸君もそのうち彼と会えるだろう」
「マティアス司令官に匹敵するお偉いさんがもう一人いるのか。鬼に金棒だな」
ハンニバル中将……どんな奴かは知らんが、マティアス司令官みたいな面倒見の良いナイスガイだったら嬉しいな。
「マティアス司令官、そろそろ行ってくるぜ!」
「そうか、気をつけて行くんだぞ」
俺達は司令室を後にし、今回の任務の場所へ向かう。
俺達が向かったのは、緑で覆われた丘の内部にある洞窟だ。
土で覆われていて薄暗い。コウモリが出てきそうな雰囲気だぜ。
洞窟の中には至るところにトロッコとレール、そしてレバー式スイッチがいくつも設置されている。
試しにスイッチのレバーを押してみると、近くにあるレールの向きが変わった。
「こいつで向きを変えながら進めってことか」
「ゲームみたいでワクワクすっぞ~」
トロッコは俺達4人が乗るには狭い大きさだが、これに乗れば廃坑の奥地へ早く到着できるかもな。
俺達がトロッコに乗ると、トロッコは少しずつスピードを上げながら滑走していく。
まるで某ゴリラの横スクロールアクションゲームの世界に入った気分だぜ。
廃坑の中にはコウモリや犬、トカゲのモンスターがうろついている。
「邪魔する生物はトロッコで吹っ飛ばしてやるぜ~」
「悪いモンスターにはお仕置きだどー!」
俺達はトロッコに乗りながらモンスターどもを吹っ飛ばしつつ、近づいてくる奴らは
「ヒャッホー! モンスターがゴミのようだー!」
ヒャッハーな気分で進み続けていると、レールの分かれ道が見えてきた。
目の前のスイッチを押さなければ、行き止まりの壁に激突してしまう。
「ここは俺に任せとけよ~」
俺は
すると、レールの向きが変わり、更に先へ進むことができた。
この調子で俺達はモンスターを叩き落としつつ、スイッチを切り替えながら先へ進んでいく。
真っすぐで長いレールを直進していると、目の前には大きな木の柵がある。このままじゃぶつかってしまう!
「「「「うわああああああああ!」」」」
激突と同時に木の柵は大破し、俺達が乗っているトロッコはそのまま直進し続ける。
木の破片が飛んできたからちょっとだけ痛いぜ。
直進してしばらくすると、トロッコは行き止まりで停止した。
「ここからは自分の足で進むしかないみたいだな」
「トロッコ楽しかったのに、悲しいなぁ……」
俺達はトロッコを降り、徒歩で奥地を目指す。
トロッコが無くなっても、某ゴリラの横スクロールアクションゲームのステージみたいでワクワクすっぞ。
ここにもコウモリや犬のモンスターがいる。もうトロッコに頼ることができないからそのまま戦うしかない。
コウモリと犬どもは素早い動きで俺の手足に噛みついてきた!
「タツヤさん、大丈夫か!?」
「オイ!? いってぇ! オイ! 噛みやがったなオイ! もう許せるぞオイ!」
俺とレイさんは合体技"炎の鞭"でコウモリと犬どもを焼き払う。汚物は消毒だー!
なんとかモンスターどもを駆除できたが、俺の腕に激痛が走る。あのコウモリ、毒持ってやがったな!?
「タツヤさん、待ってて。今治してあげるから」
俺はヨウスケに傷と毒を治療してもらい、引き続き廃坑の探索を続ける。
しばらく進んでいると、行き止まりの奥地でついに木箱を発見した。
この中に爆薬の材料"ニトロライト"が入っているのか?
俺達は木箱のふたを開け、ミカエルが中身の物体を手に取る。
「箱の中身は鉱石だ。この鉱石には火薬成分が含まれているようだな」
「これがニトロライトかー」
「じゃあこいつを回収して帰ろうぜ!」
俺達はニトロライトを全て回収した。
「今回の任務は楽勝だったね!」
「トロッコのおかげで楽しめたしな。よし、軍事基地に帰ろうぜ!」
今回は難なく任務を達成できたぜ。俺達はそのまま軍事基地への帰還を目指す。
ところがその時、どこからか丸い物体が複数飛んできた!
「……!? みんな、逃げろ!」
ミカエルが警告するも、丸い物体は突然爆発を起こした。
「「「アッー!!」」」
俺達は爆発に巻き込まれて大きく吹っ飛んだ。
ちくしょう……あと少しだったってのによォ……。
瀕死の俺達の前に現れたのは、軍に指名手配されている男、ライナスだ。
「まさかてめぇらが軍の犬に成り下がっていたとはな。さぁ、ニトロライトとやらを渡してもらうぜ!」
ライナスは俺達からニトロライトを奪おうと近づいてくる。
その時、先ほど爆発から逃れて身を隠していたミカエルが、ナイフでライナスを斬りつけようとした。
しかし、ライナスはそれを右手であっさり受け止め、ミカエルの右腕をつかむ。
ミカエルは右手からナイフを足元に落としてしまう。
「おっと、もう一匹隠れてやがったか。おとなしく隠れていれば痛い目に合わずに済んだものを」
(くっ……ガードされたか!)
「ぐっ……! は……放せ……!」
「これで分かっただろ? 格の違いってやつをよ。俺が本気出せば、てめぇらごときが束になっても相手にならねぇんだよ!」
「うぐ……うぐぐ……!」
ミカエルは必死に手を振りほどこうとする。
しかし、細身のミカエルと、長身で鍛え抜かれた肉体を持つライナスでは腕力の差は歴然だ。
「さっさとニトロライトを渡してもらおうか。素直に言うことを聞けば命だけは助けてやるぞ、小僧?」
「ふざけるな! そんなことはさせない!」
「ならば振りほどいてみろ」
ミカエルは左手でナイフを構えたが、ライナスはそれを即座に左手で叩き落とした。
(しまった! 武器が……!)
「おっと、手癖の悪いガキはお仕置きが必要だな!」
「くっ……!」
ライナスは両手でミカエルを押さえつけると、何かひらめいたように表情を変えた。
「お前、よく見るとなかなか可愛い奴だな。ちょっとだけ遊んでやるぜ」
「え!? ちょっ……どこ触ってるんだよ! やめろ! マジでやめろよ、この野郎!」
いつもは真面目で冷静沈着なミカエルも、この状況では思わず怒りの叫びをあげる。
やべぇよ……やべぇよ……。このままじゃ俺達は全滅しちまうぜ……。
果たして俺達はこの状況を打破できるのか……?