第12話 雪山で人探しをする!

文字数 2,579文字


 この町の住人の話によると、教会にいる神父が防寒道具を持っているそうだ。
 神父はめっちゃ強いらしく、この町が平和なのも神父のおかげらしい。
 こじんまりとした小さい町なので、すぐに教会を見つけることができたぜ。
 俺達は教会の中へ入った。そこには――

「お前が悪いんだー!」
「お前の方が悪いんだー!」
「こら!二人とも喧嘩はやめなさい! そんな事では天国へ行けませんよ!」

 教会の中で子供(ガキ)二人が喧嘩、それを神父が仲裁しているみたいだな。
 神父は白いローブを着た白髪の老人だ。こんなじいさんが本当に強い神父なのか?

「そんなぁ……」
「神父様、ごめんなさい」
「いいですか? 暴力を振るって良い相手は、化け物どもと異教徒どもだけです」
「はーい! 神父様!」

 この神父、とんでもなく物騒なことをガキどもに吹き込みやがったぜ。
 それはともかく、俺達は防寒道具をもらうために教会へやってきたんだ。さっさと神父からそれをもらっていくぜ。

「おや、観光客の方かな? こんな寒いところへよく来たね」
「寒すぎるぜ! 何でもいいから暖かくなるものをくれ!」

 薄着で寒さに耐えられない俺は防寒道具をもらうことしか頭に無かった。
 
(神父様に向かってなんてことを!)
(おい、ここの神父は強いらしいから怒らせるようなことはするなよ?)
「お願いだ、神父さん。この町に逃げ込んだ脱走者を探すためにどうしてもこの島を散策する必要があるんだ。だから島中を散策するための防寒道具を貸してくれ」
「そうか、重要な用事があってこの島に来たんだね。その冷え切った体ではどうしようもあるまい。これで暖を取りなさい」

 神父は赤い正方形の手のひらサイズの物体"ホットキューブ"を俺達に渡してくれた。
 ホットキューブを持った瞬間に身体が温かくなったゾ!
 このキューブを作った神父は不思議な力の持ち主か?

「ところで神父さんよ、ヒデオっつー奴がこの島に来たらしいんだが、心当たり無いか?」
「ヒデオ君か……。確か雪山に行きたいと言って町の北側にある洞窟へ入って行ったな。私は危険だからやめるように説得したのだが、どうしても行きたいと言って聞く耳を持たなかったのでね……」

 あのバカ、なんで一人で雪山へ行くんだよ! 死ぬ気か!?
 
「おい、それってかなりマズいんじゃないか? 早く助けに行かないとヒデオが死ぬかもしれないぞ」
「そうだな! ヒデオはあの4人の中で一番SMバーの従業員としてふさわしい奴だった! ヒデオが死んだらビデオ撮影にも大きく影響が出てしまう!」
「そうだ、ここまで来てヒデオを死なせるわけにいかないぜ!」
「ヒデオってそんなに凄い子なの!?」

 その時、俺達の話を聞いていた神父が突然、興味津々な表情に変わった。
 
「ほう、君達はSMバー運営とビデオ撮影をしているんだね?」
「あぁ、そうだぜ」
「雪山の頂上で"イキ草"という薬草を取って来てくれれば、君達の活動に便利な薬を作ってあげよう」
「おぉ、本当か!? よし、その薬草もついでに取ってくるぜ!」

 まさかこの神父もそっち系の男だったとはな。頼もしい協力者がいてくれて助かるぜ。
 それにしても神父は"イキ草"といういやらしい名前の薬草を使って何の薬を作る気なのか気になるな。
 
「頼もしい神父さんだ。ありがとう」
(なんでこの神父さん、SMバーと聞いてノリノリになるんだ?)

 ミカエルは淡々と礼を言うが、ヨウスケは困惑している。
 せっかく強力な助っ人が現れたのに困惑している場合かよオイ!? これだからノンケはだらしねぇな。
 神父からホットキューブをもらった俺達はさっそく町の外へ出た。
 雪山へ行くにはまずは寒い洞窟を通り抜ける必要があるようだ。
 洞窟の中は青くて美しい氷の洞窟だ。素の状態でここに立ち寄ったら数分で凍死していただろうが、ホットキューブを持っている俺達は平気だぜ。
 だが、この洞窟には数多くの危険生物が生息しているようだ。そして無数のコウモリやサソリが俺達に襲いかかってきた!
 邪魔する奴らは野生動物だろうがモンスターだろうが調教してやるぜ!
 俺は(ムチ)を華麗に操り、コウモリどもをはたき落とす。
 レイさんは竹刀でハリケーンを発動させて敵を蹴散らしていく。
 ミカエルは得意の早撃ち”クイックドロー”でコウモリどもを撃ち落とし、ヨウスケはどこからか持ってきた火炎瓶を投げてサソリどもを焼き殺している。
 それにしてもヨウスケの奴、戦い慣れしていないと思ったが、道具の扱いは俺達の中で一番上手のようだな。

「殴り合いが苦手なおれは道具のスペシャリストとして頑張るよ!」
「良いぜぇ~。その調子で頑張れよ~」

 寒い場所に生息しているモンスターに火炎瓶は効果が抜群だ。おまけに炎で暖が取れて一石二鳥だぜ。
 調教はどうしたって? モンスターが無数にいるのに一匹ずつ調教していられるかよ。
 俺達は氷の洞窟の生態系を崩しそうな勢いでモンスターを駆除しながら先へ進む。
 モンスターの数を減らせばソフトクリーム島の人達も安心して洞窟へ入れるようになる。人助けもできて良い気分だぜ。
 長い洞窟を進んでしばらくすると、ついに洞窟の出口にたどり着いた。
 山登りはこれからだってのに、気づいたら俺達は先ほどの戦いで疲れ果てていた。

「おい、ちょっと休憩していこうぜ……」
「そうだな。山頂への道はまだまだ長い」
「腹減った~」

 俺達が座って休憩していると、どこからかバックパッカーらしきおっさんが歩み寄ってきた。

「君達、山頂を目指しているんだろう? 腹が減っては戦もできぬ。食べ物でも買っていかない?」
「マジ!? ありがとナス!」

 絶妙なタイミングで商人と出会うとは、俺達は運がいいぜ。
 俺達は迷わず食べ物と飲み物を買う。しかし、その金額を商人から聞かされた俺達は衝撃を受けた。

「なんだよこの値段は!? ぼったくりにもほどがあるダルルオ!?」
「てめぇナメてんのか!」
「贅沢言うな。旅の商人とはそういうものなのだよ」
「そうだぞ、タツヤ。こんなところまで来てくれている商人に感謝するんだな」
「お、そうだな……」

 休憩代の出費は痛かったが、洞窟の中で消費した体力を回復することも大切だ。
 俺達は腹ごしらえを済ませた後、洞窟を出て山頂を目指すのであった。
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登場人物紹介

【タツヤ】

SMバー「BAR Tatsuya」の店長にして調教師。

店から脱走した従業員の捕獲、およびホモビデオ制作の旅に出発するぜ!

【レイ】

「BAR Tatsuya」の常連客で、タツヤとはマブダチ。

男の子を虐待するのが大好きなおじさんだぜ。

【ミカエル】

素早い行動と状態異常が得意な美青年暗殺者。

殺し屋よりホモビデオ制作の方が儲かるから制作スタッフに転身したようだ。

【ヨウスケ】

魔王に囚われていたニート。

ヘタレなニートだけど便利な道具を多数持ち歩いている頼もしい男だぜ。

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