第19話 強制入隊させられる!
文字数 3,096文字
目が覚めた俺達は、気づくと機械に囲まれたハイテクな部屋にいた。
目の前には先ほど俺達をボコってきたマティアス司令官が席に座っている。
「お目覚めかね、諸君。ようこそ、我が司令室へ」
俺達は無理やり司令室へ連れてこられてしまったようだ。
「おいコラァ! オレ達をどうするつもりだ!」
「戦いの素質があるお前達を鍛え直して我が軍へ入れてやろうと思ってな」
「そんな……! 軍隊入りなんて冗談じゃない!」
「おれは働きたくない! 軍隊入りなんて嫌だあぁぁぁぁぁ!」
「フフ……元気があるな、可愛い若者達よ。気に入ったぞ」
今にも泣きだしそうな顔で叫ぶミカエルとヨウスケ。
無理もない。今まで自由気ままに生きてきた奴らにとって軍隊生活は地獄に決まっている。
その様子をマティアス司令官は微笑みながら見ている。
「さて、お前達に与える選択肢は2つ。"我が軍に入る"か、"死ぬ"かだ!」
何だこの拒否権が無い選択肢はよォ!?
「冗談じゃねーよ! 俺らの商売はどうなるんだよ!?」
「まあ安心したまえ。私がよしと認めた後は、お前達のビデオ撮影を手伝ってやろう」
「マジ!?」
「ビデオ撮影の手伝いをしてもらうために軍隊入りとか割りに合わないんだけど……」
「おい、タツヤ。お前のせいで私達まで巻き込まれたじゃないか。どうしてくれる?」
このニートども、せっかく軍のお偉いさんが笑顔でホモビ撮影手伝ってくれるって言ってんのに何言ってやがる!
「試練を乗り越えることができたら、お前達を養ってあげても良いぞ」
「本当か?」
「頑張ればニート生活できるね!」
やはりニートはお金好きなんですねぇ~。
「さあ、お前たちの選択を聞こうじゃないか」
マティアス司令官は再び真面目な表情で問いかける。
もし断ったら不思議な力で死ぬことになりそうだし、ここは軍隊入りするしかねーな。
「軍に入ります! 入りますので頑張ったらビデオ撮影手伝ってください、
「うむ。よく決断した。これでお前達は我が軍の一員だ。改めて自己紹介しよう。私の名はマティアス・マッカーサー。上官の命令は必ず果たすことだ」
「お、お手柔らかにお願いしナス……」
「では、お前達の名前も聞かせてもらおうか」
俺達は軽く自己紹介をした。
「タツヤ、レイ、ミカエル、ヨウスケ。今後の活躍を期待しているぞ。クックック……ビデオ撮影に、可愛い若者達の世話……楽しみで仕方ないな! ハッハッハ!」
やっぱりこの司令官もホモビ好きなんですねぇ~。
その後、俺達はマティアス司令官から今後の仕事について説明を受けた。
仕事を与えるのは明日、今日はゆっくり休めとのことだ。
俺達専用の4人部屋を与えられ、基地内の施設も含めて自由に使って良いそうだ。
俺達の部屋は4つのベッドの他、風呂や冷蔵庫など生活に必要なものは全て揃っている。ホテルみたいで快適だぜ。
基地内は食堂、売店、医療室完備。屋上庭園もあって退屈はしなさそうだ。
俺達は少し休憩した後、エーリッヒ大佐とナイト軍曹への挨拶周りをすることにした。
エーリッヒ大佐とナイト軍曹は同じ階の部屋に住んでいるようだ。
まずはナイト軍曹の部屋へお邪魔するぜ。彼の部屋は中世ヨーロッパ風のアンティーク部屋だ。部屋のあちこちに甲冑が飾ってある。
「よう、ナイト軍曹! 俺らもはるばる軍事基地へやってきたぜ!」
「何!? どうしてお前達がここに!?」
俺達との感動の再会に驚くナイト軍曹。
「実はその……マティアス司令官にビデオモデルになってもらうようにお願いしたら、強制的に軍隊入りさせられちゃったぜ……」
「なんだそりゃ!? マティアス司令官にビデオモデルを頼むお前達もどうかと思うが……」
「だよねぇ……。おれは最初から乗り気じゃなかったよ」
「これも全てそこにいる色黒のグラサン男のせいだ」
お前ら、マティアス司令官に養ってもらえると聞いて喜んでいたくせに何言ってやがる!?
「というわけでナイト軍曹、オレ達も軍のお世話になるからよろしくな!」
「おう、よろしくな! お前達の活躍を期待しているぞ」
ナイト軍曹への挨拶は終わった。頼れる兄貴分って感じだったぜ。
次はエーリッヒ大佐の部屋へお邪魔するぜ。彼の部屋はお洒落な欧風部屋だ。別の部屋にはコンピュータールームもある。
「よう、エーリッヒ大佐! 俺らもはるばる軍事基地へやってきたぜ!」
「君達はたしか雪山で会った冒険者達だね。どうしてここに?」
ナイト軍曹の時と同じ反応をするエーリッヒ大佐。
「実はその……マティアス司令官にビデオモデルになってもらうようにお願いしたら、強制的に軍隊入りさせられちゃったぜ……」
「何それ!? まさかマティアス司令官に無礼なことをしていないよね?」
「タツヤさんがめちゃくちゃ失礼な態度取ってたよ……」
「全く……マティアス司令官が器の広いお方だったから良かったものの、もし
「あぁ、むしろあれで殺されなかったことが奇跡だ」
まさかマティアス司令官より恐ろしい奴がこの軍事基地にいるってことか!?
まぁ、そいつともいずれ会うかも知れないな。
「雪山でエーリッヒ大佐を襲ったライナスって奴、また軍を襲撃してくるかもしれないんだよな。その時はオレ達でまた返り討ちにしてエーリッヒ大佐の仇を討ってやろうぜ!」
「そうだな、レイさん! ライナスを調教して、奴のクッソ惨めな姿をビデオ撮影してやろうぜ!」
「あっはっは! それは良い案だね。私も手伝うよ」
エーリッヒ大佐、ライナスにやられたのを絶対根に持ってるぜ。
「というわけでエーリッヒ大佐、オレ達も軍のお世話になるからよろしくな!」
「よろしく! 君達の今後の活躍に期待しているよ」
エーリッヒ大佐への挨拶は終わった。やっぱりいつ見てもイケメンだ。いつか調教してぇ~。
エーリッヒ大佐とナイト軍曹が住んでいる部屋の階にはもう1つ、俺達の知らない名前の兵士の部屋があった。
表札には"ハイド伍長"と書いてある。ついでにこいつにも挨拶しに行ってみるか。
部屋に入ると、そこはエーリッヒ大佐やナイト軍曹の部屋とは大きく異なる、
そして部屋の奥にはどこかで見覚えある姿が……!
全身を黒い衣装とマスクで身を包んでおり、忍者のような恰好をした男。間違いない、こいつは……!
「お、お前はあの時のアメリカン忍者!」
「ん? 君達は誰? 新入りかな?」
「とぼけんじゃねぇよ! ホモの町の公園で俺らをボコったくせによォ!」
「あー……、あの時俺に勝負を挑んできた2人組だね。俺はハイド伍長って言うんだ。俺が軍人だと知ってびっくりした?」
アメリカン忍者の正体が軍人という衝撃の事実。
そんな強い奴が何しにホモの町へやってきたのかは知る由も無い。
「アメリカン忍者は軍人だったのか……。どうりでオレ達じゃ歯が立たないわけだ。あの時はいきなり喧嘩売って悪かったな」
「あー、いいよいいよ! 分かってくれれば問題無いさ!」
「というか、タツヤさん達は見知らぬ軍人にまで喧嘩売ってたのか…… (呆れ)」
レイさんが謝るとハイド伍長はあっさり許してくれた。心が広い奴で助かったぜ。
「とにかく新入りが増えて嬉しいぜ! これからもよろしくな!」
「おう、よろしく頼むぜ~」
ハイド伍長は常にポジティブで前向きな奴だった。こいつと一緒なら嫌なこともすぐに忘れて楽しくやっていけそうだ。
俺達は次の日の任務に向けてゆっくり休むことにした。