第5話 囚われのニートを救出する!

文字数 2,491文字


 俺達が声の主の元へ進んでいくと、そこには一部屋の牢屋があり、中には一人の男が監禁されていた。
 スーツ姿にリュックを背負い、靴はスニーカーという意味不明なファッションセンスの男だ。

「おお、こんなところに良い男が捕まってんじゃーん!」
「お願いだ! おれをここから出してくれ!」

 俺達に必死に頼み込む男。その時、ミカエルが男に話しかける。

「あんたは……ヨウスケじゃないか!」
「ミカエルさん!?」
「お前ら、知り合いなのか?」
「まぁ、そんなところだ。ニート仲間って奴だな」

 ミカエルとこの男が知り合いだったとは。しかもミカエルはニートだったのかよ!?
 普段はニートのフリして裏でアサシンやってる奴か?

「ヨウスケ、なぜあんたがこんなところにいるんだ?」
「おれは魔王からレンタルニートの依頼を受けて遊び相手になったんだけど、気に入られて魔王城に閉じ込められちゃったんだ!」
「馬鹿馬鹿しい。魔王なんかと遊ぶからこんなことになるんだろうが」

 まさかこの男、ヨウスケが街で噂のレンタルニートだったとはな。
 こいつはニートなのにスーツ着てるのかよぉ!? サラリーマンのコスプレか?
 こいつを俺達の従業員として雇っても良いし、従わなかったら調教してやることにするぜ。

「おう、そこのニート君よぉ、俺達の仕事を手伝ってくれるって言うならここから出してやるぜぇ~」
「うん、わかったよ! 仕事ってどんな内容なの?」
「俺の店から脱走した従業員の捕獲と、ホモビ撮影の手伝いだぜ」

 俺が仕事内容を説明すると、ヨウスケは明らかにドン引きした顔を見せる。

「なんだ、その変態を見るような目はよぉ~。お前もう生きて帰れねぇな?」
「そ、それだけは勘弁して!」
「オラァ! ここから出たければ大人しくオレ達の手下になりな!」

 レイさんが勢いよく檻を叩きつけながら言う。

「わ、わかりました! 手伝うので助けてください!」
「よぉ~し! 存分に働かせてやるから感謝しろよな~? ミカエル、鍵を開けろ。お前こういうの得意なんダルルォ?」
「結局私がやるのか……」

 ミカエルは手慣れた動作で牢屋の鍵をこじ開け、扉を開けた。

「助かった! ありがとう!」

 ヨウスケが喜びに満ち溢れた表情で牢屋の外に出る。
 そこで俺達は軽く自己紹介を始める。

「俺はタツヤだ。普段はSMバーの店長をやってるぜ」
「オレはレイ。タツヤさんの店の常連客だ」
「ヨウスケ、私もこの男達に雇われた身だ。仲良くやっていこうじゃないか」
「タツヤさん、レイさん、ミカエルさん、よろしく……」

 ヨウスケは明らかに乗り気では無い表情と口調で返事をした。
 ここで俺は調教師の目でヨウスケを見つめる。ヨウスケもミカエルと同じく金に目がないタイプの人間のようだな。
 今は乗り気でなくても、ギャラを払ってやれば今後も俺達の仕事を喜んで引き受けてくれそうな匂いがするぜ。
 俺達は4人でフロアのエレベーターに乗り、最上階へ向かう。
 エレベーターから降りると、そこは貴族や王族の城を思わせるオシャレなフロアだった。

「この先に魔王がいるよ。みんな、気をつけて!」
「心得た!」
「魔王も調教して奴隷にしてやろうぜ!」
「おい、正気か……?」

 ヨウスケの忠告通り、俺達は一度体制を立て直してから魔王の居間への扉を開ける。
 その先にいたのは、赤いマントを身に着けた青肌の大柄でムキムキマッチョのおっさん、そして俺の店から脱走した従業員の1人、"ポイテーゼ"の姿があった。
 このおっさん、ガチで本物の魔王なのか?
 それとも特殊メイクでコスプレした普通のおっさんなのか?
 どちらにしろ、強そうなのは間違いないぜ。

「クックック……。たっぷり可愛がってやるぞ」
「フ・ザ・ケ・ン・ナ! ヤ・メ・ロ・バ・カ!」

 魔王はポイテーゼを見つめながら言うが、ポイテーゼは明らかに嫌がっている。
 俺達が魔王とポイテーゼに近づくと、魔王は俺達の存在に気づいて振り向いた。

「こんにちは!」
「おう、こんにちは!」

 魔王が挨拶をしてきたから、とりあえず俺も挨拶を返すぜ。
 隣でミカエルが「おい、何やってんだよ……」と呆れながら呟いている。
 その直後、魔王の視線はヨウスケに向けられた。

「ヨウスケ、脱走するとはお仕置きが必要だな!」
「ひぃっ……!」

 魔王に見つかり、怯えるヨウスケ。

「てめぇが魔王か!」

 ヨウスケに手を出させまいと、レイさんが前に出る。
 
「若造どもが……俺様に何の用だ?」
「俺らはそこにいるポイテーゼを捕まえに来たんだよ!」
「なんだと!? 俺から可愛いポイテーゼを奪う気か!?」
「ポイテーゼは俺の店の従業員なんだよ! とっとと返しやがれ!」
 
 俺もここに来た目的を告げる。
 この魔王、ポイテーゼを自分のものにするつもりだったのかよぉ!? このホモ魔王め! もう許さねぇからなぁ?
 だが、ここは囚われの姫ならぬ従業員を救出することが俺達の務めだ。

「応じない場合は力で奪い返してやるぜ!」
「ぐぬぬ……アメリカ軍といい、お前らといい、俺の邪魔ばかりしやがって……!」
「オラオラ、さっさとしねぇとお前の○○○○握り潰してやるぜぇ~!」
「うおおおおお!! 俺は魔王! 人間ごとき返り討ちにしてくれるわ!!」
 
 俺とレイさんの挑発で、ついに魔王は俺達に殺意を向ける。
 まだ物語序盤なのに魔王と戦闘して大丈夫なのかよオイ!?
 いや、今はミカエルとヨウスケも仲間に加わってるうからきっと大丈夫だぜ、多分。
 ミカエルはともかく、ヨウスケは見るからに軟弱そうで戦力になるのかすら疑わしいレベルだが。
 俺は(ムチ)を、レイさんは竹刀を、ミカエルは銃とナイフを構える。
 一方、ヨウスケはリュックから棒を取り出し始めた。

「街の裏路地で拾ったこの棒で戦えるかな? あと、回復や支援の道具はいっぱい持ってるからおれに任せて!」
「上出来だ! 頼りにしてるぜ!」

 ヨウスケはパワーは無さそうだが、サポートが出来るメンバーが加わったのは心強いぜ。魔王を倒せば俺達も立派な勇者だ。
 ポイテーゼを救うため、そして世界の平和(?)の為に俺達は魔王に立ち向かう!
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登場人物紹介

【タツヤ】

SMバー「BAR Tatsuya」の店長にして調教師。

店から脱走した従業員の捕獲、およびホモビデオ制作の旅に出発するぜ!

【レイ】

「BAR Tatsuya」の常連客で、タツヤとはマブダチ。

男の子を虐待するのが大好きなおじさんだぜ。

【ミカエル】

素早い行動と状態異常が得意な美青年暗殺者。

殺し屋よりホモビデオ制作の方が儲かるから制作スタッフに転身したようだ。

【ヨウスケ】

魔王に囚われていたニート。

ヘタレなニートだけど便利な道具を多数持ち歩いている頼もしい男だぜ。

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