第8話 村で人助けをする!
文字数 2,337文字
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電車に乗って数時間、俺達はようやく山奥の村キムラ村へ到着した。
緑豊かな風景の中に、木造の家や畑が並んでいる。典型的なド田舎だぜ。
そしてこの村には脱走した従業員の1人"トーム"が逃げ込んでいる。
「こんな小さい田舎町ならトームを見つけるのは簡単そうだな!」
「田舎ではよそ者は目立つから、村人達もすぐに居場所を教えてくれるんじゃないか?」
「我々も村人目線ではよそ者だから、怪しまれないようにすることだな」
「普通に人探しをしているだけと言えば大丈夫だよ」
俺達は早速情報収集を始める。
まずは酒場でトームの居場所について聞き込みをしてみる。情報収集といえば酒場は定番だからな。
酒場で聞き込みを始めて数分後……。
「トーム? なんか問題起こして身柄を拘束されてたよ。今は村長の家にいるんじゃないかな?」
「マジ? ありがとナス!」
早速目当ての情報を手に入れたぜ。こんなにあっさりトームの居場所が分かって良いのかよオイ。
次に俺達は村長の家を探すべく、外に出て村人達への聞き込みを開始する。
そして情報収集開始から数分後……。
「村長の頼みを断ったら不思議な力で死ぬことになる」
恐ろしいことを言うじいさんに遭遇したぜ。
このじいさん曰く、目の前にあるデカい木造の家が村長の家らしいが、そんなにヤバい奴なのか……?
だが、村長の家に入らなければトームを捕獲することは出来ない。俺達は平然と村長の家の中に入った。
そこにはヒゲを生やした村長と思われる老人、片目に傷があるナイスガイのおっさん、そして……ロープで体を縛られたトームの姿があった!
「見つけたぞ、トーム! よりによって村長の家に隠れてやがるとはな!」
「タツヤさん、何するんですか! やめてくださいよ本当に!」
俺はすぐにトームの元へ駆けつけ胸倉をつかむと、トームは悲鳴をあげる。
「待ちなさい! 君達は一体何者なんだ!」
「俺らは店から脱走した従業員のトームを連れ戻しに来たんだよ!」
「その青年は山の山賊達を挑発して村を危険に晒した罪で、身柄を拘束しているんだよ」
「その通りだ。だからよそ者の都合でトームを引き渡すわけにはいかねぇぜ」
トームを連れ戻そうとする俺に、トームの事情を説明する村長と隻眼のおっさん。
どうやらトームはこの村に迷惑を掛けて捕まったらしい。丸腰の一般人のくせに山賊を挑発するとは何がしたいんだこいつは。
だが、そんなことは俺達には関係ない。相手がトームの引き渡しに応じないなら強硬手段だ!
「なら力ずくで奪い返してやるぜ!」
「かなしいなぁ……。村を救ってくれたら"船のチケット"をあげようと思ったのに……」
「ファッ!? 船のチケットだと!?」
「船のチケットは雪の町ソフトクリーム島へ行くのに必要なチケットだ! チケットはどこも売り切れで購入することは出来ない!」
都合の良いタイミングで俺達が探しているアイテムをチラつかせる村長。
ここで船のチケットを入手し損ねたら、残りの脱走者"ヒデオ"を捕まえることが出来なくなってしまう。
「チケットが必要なら大人しく村長の頼みを聞こうよ」
「そうだな。大変な仕事になりそうだが、引き受けなければ残りの脱走者を捕まえることは出来ないぞ」
「まぁ、たまには人助けも良いじゃねーか」
「おう、そうだな……」
ヨウスケとミカエルとレイさんに言われるがまま、俺も村長の頼みを引き受けることに賛同した。
「おお、私の頼みを聞いてくれるか!」
「そうしないと俺らの目的を達成出来ないからな」
“村長の頼みを断ったら不思議な力で死ぬことになる”らしいからな。本当かどうかは知らんが、どちらにしろ引き受けるしか無いぜ。
「では早速説明しよう。この村は山の山賊から度々襲撃を受けている。だから山賊の頭を倒し、村を救って欲しいのだ。無事に村を救ってくれたら……船のチケットと、そこにいるトームを好きにしていいぞ」
「ファッ!?」
しれっと人身売買を持ち掛ける村長に、思わず驚きの声を上げるトーム。
「俺も山賊と戦ったんだが、負傷して今はとても戦える状態では無い。だからお前達の力を貸してくれ!」
隻眼のおっさんはきっと山賊にやられて片目を失ったんだろうな。かわいそうに……。
魔王討伐の次は山賊討伐か。どう考えても順番逆だろ。魔王を倒した俺達なら山賊ごとき楽勝だぜ。……多分。
「山賊かぁ~。調教しがいがあるぜぇ~」
「大丈夫? 凄く危なそうだけど……」
「どっちにしろ戦うしかないぜ。山賊のボスもボコってバーに持ち帰りたいが、デカい奴だったら厳しいな」
「トームがいるから持ち帰りは諦めな」
魔王の時は残念ながら調教出来ずに終わったが、山賊どもは絶対に調教してやる。
どんな悪人も殺さずに調教して改心、更生させるのが人間の鑑だぜ。
「ありがとう! ではジョンよ、その者達と同行してサポートをしてきてくれ」
「あぁ、分かったぜ。回復くらいしか出来ないが、許せ」
隻眼のおっさん、ジョンが回復役として同行してくれることになった。心強いぜ!
「では健闘を祈る」
「よし、山賊どもを調教してくるぜ」
「山賊調教!? まずいですよ!」
トーム、お前はそんな心配をするよりも自分の身を案じたらどうなんだ。
俺達は村長とトームに見送られながら村長の家を後にした。
そして、ジョンの案内で山賊のアジトを目指すべく登山道を歩いていく。
「ここから先に進むと山賊達で溢れかえっている。気をつけろ……! 奴らは毒攻撃を使ってくるぞ!」
「おう、分かったぜ~。それから、この仕事終わったらお前もこっちの世界に入れてやるぜぇ~」
「……?」
こうして俺達の山賊調教旅が始まった。