第12話:リーマンショック1

文字数 2,469文字

 2008年1月2日、ニューヨーク・マーカンタイル取引所で原油急騰。一時100ドルに達する。原油高を受け、ニューヨーク株式市場とドル相場急落。1月4日の日本の株式大発会の日。日経平均株価は昨年末比、616円37銭、約4%安の1万4691円41銭。東京証券取引所では1949年の戦後再会以来、最大の下げ幅となった。

 1月8日 ニューヨーク商品取引所「COMEX」で金が一時1トロイオンス879.4ドルを付け、1980年1月に付けたこれまでの最高値「875ドル」を上回り28年ぶりに取引時間中の最高値を更新した。株の下げが止まらず1月21日、東京証券取引所の日経平均株価が535円35銭値下げをはじめインド・ムンバイ証券取引所で平均株価が一日当たり過去最大の下げ幅を記録するなどアジア各地の証券市場が軒並み暴落。

 2008年3月にベアー・スターンズの経営危機が明らかになると金融危機が本格的に世界的に報道された。「FRB」連邦準備制度は最後の貸し手機能を拡充させ、国際流動性の危機に応急処置をしいた。しかし問題の根底にある不良債権の増大を止められなかった。9月に入りアメリカ政府支援機関「GSE」のフレディマックとファニーメイ2社が実質的破綻に陥り9月15日にはリーマン・ブラザーズが連邦倒産法第11章適用を申請。

 負債総額6390億ドル「約64兆円」というアメリカ史上最高額で経営破綻。さらにバンク・オブ・アメリカによるメリルリンチの買収、AIGの国有化など金融機関の再編が進んだ。その頃、リーマンの抱えていた問題は1つ「モーゲージ証券やクレジット・デフォルト・スワップの不良債権化による自己資本の毀損『きそん』」。

*難しくて、分かり難いかも知れませんが、正確さを最重要と考え、注釈を入れます。
*CDS=クレジット・デフォルト・スワップ、*MBS=モーゲージ証券
これは住宅ローンの元本や利子の返済資金を裏付け資産として発行される証券。
*レポ債務とはレポ取引「現金担保付きの債券貸借取引。資金と債券を一定期間交換する取引で債券の貸し手は債券を貸し出す代わりに借り手から現金を受け取り一定の期間が経過後、債券の貸し手は債券を返してもらう代わりに借り手に現金を返す。主に資金の調達と運用を目的として債券の銘柄を特定しないタイプのGCレポ取引や、債券の銘柄を特定するタイプのSCレポ取引がある」。その取引の終了時の借り手に現金を返す義務・責任のこと。

 90万を超えるCDS・クレジット・デフォルト・スワップ『発行体の信用リスクを対象とするデリバティブとは債権を移転せず信用リスクのみを移転させる事が特徴で発行体のデフォルト「債務不履行」に 対する「保険」のような物』契約によるカウンター・パーティ・リスク「デリバティブ取引の金融取引で取引の相手方を『カウンターパーティ』と言う。これが破綻して契約が履行されずに損失を被るリスク」の増大。

 コマーシャルペーパー「企業が短期で資金調達するための、無担保の約束手形」債務78億ドルとレポ債務1970億ドル「2008年3月末」9月のショックで、リーマンの決済銀行であるJPモルガン・チェース、シティグループ、バンク・オブ・アメリカはレポ債権の追加担保を要求したが、応じることができず貸付が打ち切られ倒産した。

 一方、AIGは高格付けCDSのデフォルト率「倒産率」を低く見積もっていたのでのネットでの売りポジションをヘッジしていなかった。AIGの売ったCDSは多くの投資銀行に保有されていたので、リーマンと異なり公的資金が投入された。リーマン・ショックはリーマン債を保有していたMMFを元本割れさせた。9月19日、MMF保険創設のため連邦政府が為替安定基金から最大で500億ドルを取り崩す方針が公表。

 リーマン保有のCDSはリーマンの清算価格が8.625%に決まり売り手に91.375%を保証させた。リーマン以外の清算ケースでもCDSは似たような状態であったのでCDSの売り手となっていた金融持株会社、投資銀行、保険会社ヘッジファンドは短期金融市場からの資金調達を金利の急騰に阻まれた。

 欧州系銀行もドル建て流動性資金について同じ状況だったので新興国経済から資本を引揚げて金融危機を波及させ金融危機を波及させた。世界金融危機の中心は銀行に増してシャドー・バンキング・システムであった。これこそが従来の金融危機と異なる特徴であった。シャドー・バンキング・システムとは、非銀行金融仲介機関によって行われるシステムの事。

 非銀行金融仲介機関とは例えばMMF、投資銀行等のレポ取引、特別目的事業体、資産担保コマーシャルペーパー導管体、ヘッジファンド、証券会社、証券化商品発行体、そして個人向けのファイナンス・カンパニー。短期資金を調達し、長期の資産に運用するという満期変換は銀行の場合ロールオーバー・リスクや取り付けの危険をはらんでいる。シャドーバンキングについては、長くなるので省略。しかし、「一番リスキーな金融機関もどき」と言われている。

 一方、日本の機関投資家は系列企業を買収するのに多忙でユーロ債を消化しながらMBSまで消化する余裕がなかった。したがって2008年の金融危機では比較的損失が少なかった。そこで野村證券は破綻したリーマン・ブラザーズの三分の二「韓国を除くアジア・欧州・中東部門」を買収。また三菱UFJFGがモルガン・スタンレーに9千億円出資した。

 それにより日本の金融機関が存在感を見せる部分もあった。しかしその後の株価は急落し経済規模は急速に縮小。日本の金融機関も多額の経常損失と大規模な増資を余儀なくされた。サウジアラビアやドバイなどのオイルマネー、あるいは中国などの政府系金融機関もアメリカの金融機関などへ出資したが、その後の株価の急落や経常損失の発生により多額の含み損が発生。アイスランドやバルト三国では国の財政破綻が懸念された。
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