疑い１

良く晴れた正午、事務所沿いの通り沿いで主婦が談笑する。ワイドショーの話題が飛び散っていた。車の通りも少ない、ベッドタウンに位置するオンボロ事務所。
１階の事務所、オンボロには似つかわしくない眩しい日光が木製のテーブルを照らす。
ウェルカムドリンクのダージリンはまだ口につけられていない。
桐はテーブルに鎮座したティーカップをじーっと見つめていたままだった。

桐が訪問した。それは突然の事だった。
薄いシャツを着用したラフないで立ちでボロドアを叩いた彼女は俯いたまま
眉をひそめ、膝に置かれた手を固く閉じていた。それは彼女の心のように。
「どうしたの。話って」
桐の肩が硬直する。彼女の握った拳にまた力が入る。
「んーっと、、、。　実を言うと、、、。　最近旦那の行動に気になる事があってさ」
「え？　結婚したの最近だよね。というか、、、もう？」
「それが全く分かんなくて。こんなの話せる人いないし。とにかく毎日不安で」
あの同窓会で感じた桐に対する違和感はどうやら当たってしまったようだ。
桐は今まで見たことがないほど焦っているようにも見えた。
その額にはうっすらと汗が滲み、彼女の前髪が水分を纏う。
「ごめんね、恵助しか頼れなくて。気のせいならそれで良いから話だけも聞いて欲しくて」

彼女はおそらく冷めきったであろうダージリンをぐいっと飲み干し、固く結んだ口を開けた。
彼女の眼はまっすぐと僕を睨んだ。私は彼女に見つめられてるかのような錯覚に落ちる。
私の鼓動が逸る。息が苦しい。君が美しいと。