再会3
文字数 1,373文字
自宅からはそう離れていない市民ホールへ着いた頃には浮足立つ私の額には汗が滲んでいた。あまり社交的な性格ではなかった故に気軽に話しかけれる者は少ない。かつては同じ校舎で横並びでいた人間関係だったがもう今は他人の様になってしまった。キョロキョロと辺りを見渡し既に会場へと到着し、この日の為に着飾った集団をすり抜けた先に見知った顔を見つけた。
隣県の都市部に移住した為にこいつとは一年ぶりの再会になる。
「久しぶり晋。聞いてくれて助かったよ。おかげで今日は楽しみだ」
「ったくよ~。相変わらず桐となるとお前は」
この通り桐の出欠は彼に尋ねていた。こうして気持ち穏やかにいれるのも彼のおかげだ。
普段はおちゃらけているようなタイプだが妻子と友人想いの数少ない親友だ。
「そういう晋も嫁とはどうなんだ? 文成からタレコミは入ってるぞ」
「あいつ言いやがったか。いいか恵助、それは他言無用だ。探偵様は情報が早いね」
恵助、私はは探偵業を営んでおり昨今の浮気やら怪しい人探しで慎ましく食い繋ぐ卑しい男だ。
これでも幾らかの実績もあり、そのボーっと根暗な見た目から尾行は大得意としていた。
ここらで浮気した奴は恵助が大体の証拠を掴んで夫婦関係にピリオドを打つことから後ろ暗い人間からは忌嫌われていた。暴君に追われる危機も数える位はあった。
はじめはこんな卑しい職業と自分を惨めに思っていたが、それでも恵助の調査で救われた人が居たことも事実だ。これでやっと新しい人生を開ける。と、意気込んで事務所を後にする希望をしょった背中も何度も見た。
その度に恵助は
ーーあぁ、今回も間違ってなかったーー と安堵していた。
せめて依頼人だけでも救えなければこんな仕事は御免だと。
「恵助、恵助! おーい」
晋の疑惑を横流しにした厳つい男のしかめっ面。彼こそがタレコミの主。
「こないだはどうもね文成。次の仕事は決まりそうだよ」
「おお! 報酬は今度の飲み会の奢りな。こいつの不貞疑惑を二人で暴いてやろうぜ」
おどろおどろしい会話を横で聞く晋は困り顔だ。今にも暴発してしまいそうだった。
友人の疑惑には良い気はしないが晋が手遅れになる前に助けてやるのも親友としての務めだ
こいつの家庭内修羅場なぞ聞きたくもない。酒が不味くなるから。
「今度話くらい聞かせろよ? お前の修羅場なんて御免だ」
はぁーっと陰気な溜息をつき、何かを覚悟して晋が睨んだ。
「確かに嫁以外の女と飲みには行ったけどなんもねーんだよ。ただ愚痴を吐いてただけ、最近嫁とはあんまり上手くいってないから誰かに文句言いたくてさ」
「出たよ。浮気するやつの言い訳」
「ホントだよ! 飲んだのは職場の子。業務内容も同じだから良く話すんだよ。で、気が付いたら仲良くなってさ」
普段はおちゃらけた晋だがその目は弱弱しく鈍っていた。
「でもお前、俺が居酒屋でばったり合ったときは只の同僚の雰囲気じゃなかったろ?」
「文成と出くわしたときは正直自分でもヤバいなって雰囲気だったのは気づいてたよ。でもあの時お前とばったり会うもんだからビビっちゃってさ」
気持ちばかりかひょろっとノッポな背中が丸くなるのを感じ。晋はぽつりぽつりと呟いた。
栄えある同窓会は晋の懺悔から始まってしまった。
隣県の都市部に移住した為にこいつとは一年ぶりの再会になる。
「久しぶり晋。聞いてくれて助かったよ。おかげで今日は楽しみだ」
「ったくよ~。相変わらず桐となるとお前は」
この通り桐の出欠は彼に尋ねていた。こうして気持ち穏やかにいれるのも彼のおかげだ。
普段はおちゃらけているようなタイプだが妻子と友人想いの数少ない親友だ。
「そういう晋も嫁とはどうなんだ? 文成からタレコミは入ってるぞ」
「あいつ言いやがったか。いいか恵助、それは他言無用だ。探偵様は情報が早いね」
恵助、私はは探偵業を営んでおり昨今の浮気やら怪しい人探しで慎ましく食い繋ぐ卑しい男だ。
これでも幾らかの実績もあり、そのボーっと根暗な見た目から尾行は大得意としていた。
ここらで浮気した奴は恵助が大体の証拠を掴んで夫婦関係にピリオドを打つことから後ろ暗い人間からは忌嫌われていた。暴君に追われる危機も数える位はあった。
はじめはこんな卑しい職業と自分を惨めに思っていたが、それでも恵助の調査で救われた人が居たことも事実だ。これでやっと新しい人生を開ける。と、意気込んで事務所を後にする希望をしょった背中も何度も見た。
その度に恵助は
ーーあぁ、今回も間違ってなかったーー と安堵していた。
せめて依頼人だけでも救えなければこんな仕事は御免だと。
「恵助、恵助! おーい」
晋の疑惑を横流しにした厳つい男のしかめっ面。彼こそがタレコミの主。
「こないだはどうもね文成。次の仕事は決まりそうだよ」
「おお! 報酬は今度の飲み会の奢りな。こいつの不貞疑惑を二人で暴いてやろうぜ」
おどろおどろしい会話を横で聞く晋は困り顔だ。今にも暴発してしまいそうだった。
友人の疑惑には良い気はしないが晋が手遅れになる前に助けてやるのも親友としての務めだ
こいつの家庭内修羅場なぞ聞きたくもない。酒が不味くなるから。
「今度話くらい聞かせろよ? お前の修羅場なんて御免だ」
はぁーっと陰気な溜息をつき、何かを覚悟して晋が睨んだ。
「確かに嫁以外の女と飲みには行ったけどなんもねーんだよ。ただ愚痴を吐いてただけ、最近嫁とはあんまり上手くいってないから誰かに文句言いたくてさ」
「出たよ。浮気するやつの言い訳」
「ホントだよ! 飲んだのは職場の子。業務内容も同じだから良く話すんだよ。で、気が付いたら仲良くなってさ」
普段はおちゃらけた晋だがその目は弱弱しく鈍っていた。
「でもお前、俺が居酒屋でばったり合ったときは只の同僚の雰囲気じゃなかったろ?」
「文成と出くわしたときは正直自分でもヤバいなって雰囲気だったのは気づいてたよ。でもあの時お前とばったり会うもんだからビビっちゃってさ」
気持ちばかりかひょろっとノッポな背中が丸くなるのを感じ。晋はぽつりぽつりと呟いた。
栄えある同窓会は晋の懺悔から始まってしまった。