再会５

桐の旦那は年上でここら地元じゃ名の知れた企業に勤める才のある男だったらしい。
いわゆるエリートの類に位置する男。根暗共が恐れおののくカーストの高い身分だ。
ここからは予想だがきっと丁寧にセットした知的なヘアスタイルと品の良い背広を纏って自信たっぷりに仕事をこなし、週末はこじゃれたカフェで思い思いの時間を過ごした後に桐との幸福に満たされた休日を謳歌するのだろう。
私には出来なかった事をやってのけ、彼女が結婚したと聞いた時は初恋のクラスメイト我がものとした桐の夫にはジェラシーを感じずにはいられなかった。
こんなケチな想像を張り巡らした自分が微生物ほどの器と自らを卑下した。
だが、どうかそんな幸せを勝ち取った男にはどうか幸せであって欲しい、その幸せは離さないで欲しいと願う気持ちはほんの少しばかりは持ち合わせている。
私は彼女の中で過去に存在していた日陰者で良いのだと。

学生時代、人と目を合わせるのも苦手で内向的な性格だった私に友人はそう多くはなっかた。
他のクラスとの交流もさほどなく、自分の身の回りにいるクラスメイトと良好な人間関係を築くのに手いっぱいだったのを覚えている。嫌われたくない一心に顔色を伺う日も多かった。
しかしかつての級友たちはそんな根暗眼鏡にも温かく手を差し伸べてくれた事には今でも感謝している。このクラスでなかったら、この人達でなかったら心豊かな思春期は迎えれなかったろう。もちろんその中に桐も含まれている。彼女とは2年から一緒のクラスだが彼女に恋をしてからは毎日が新鮮そのものだった。
桐に恋慕を抱いたのは私だけではなく同じクラスのムードメーカー、他クラスの優等生など、隠れ桐ファンは他にもいただろう。
あいつも桐に気があるらしいと噂が立つたびにモヤモヤした。いや、嫉妬に近い感情だった。
彼女を独占しようなど身の程知らずだな。お前には釣り合わない。そんな自らの思考に身もだえすらした。　私は彼女に今でも憧れているのだろうか。ふと心に疑問符がついた。