歌の歌詞として批評すると?(繰り返し編)
文字数 2,451文字
「GekkayoプロデュースJ-POP作詞術のウラ技☆オモテ技」?
せんせい、なぜこのような本を……。
J-POPとは何か、ということを語り出すと論争になりそうだから、本に頼りましょう。
11ページ。「ポップスというのは流行歌のことです。ポピュラリティ(人気)のある音楽のことなので、実はジャンルにはとらわれない区切りです。」
つまり日本の大衆音楽であればJ-POPと呼んでいいんじゃないかしら。
いやあのね……英語のkillerには「決定打」といった意味もあるから、キラーフレーズは、「多くのリスナーの心に刺さる決定的なフレーズ」くらいの意味よ。メロディと一体となって、その曲を聴こうという態度にリスナーを引きずり込むような言葉ね。
身も蓋もない言い方をするけど、この曲って寝取られ男の歌なのよね。彼女を失い嫉妬にかられてそれでも愛されたいんだよって悔しさと悲しみと自己嫌悪が「女々しくて」の5音に凝縮されている。
さてここでクイズ。この曲は何回「女々しくて」と言っているでしょうか?
30回も言われてるけど、「もうええわ!」とは中々思わないのよね。
素早く勢いよく発音していてリズム感があるし、メロディーも「ラララソラ」で一定だから、この言葉自体が曲全体のリズムを作り出しているように聞こえる。
もう一曲、同じ言葉を繰り返す曲を紹介しておきましょう。DREAMS COME TRUEの「何度でも」。
ただ編集長は「J-POPシーンの金字塔グループならではの珠玉の名歌詞」と評しているわ。気安く真似をしていいものではなさそうね。
「サビか歌い出しに現れることが多い」「難解な表現をしない」についてはクリアね。
「意外性がある」ここに第一の困難があるわね。当たり前すぎて、面白みがないのよ。
「共感しやすい」についての問題は、これまで論じてきたことだから、繰り返さないことにするわ。
新しい単位は作らなくていいわよ。
さて、次はメロディーに注目してみましょう。
「あたしおかあさんだから」という同じフレーズに、
「レミド ラドファミレドド」
「ファソラ ファラドシラソ ミソ」
「ファソラ ファラドシラソ# レド」
「レミド ラドファミレドミ」
……4種類もメロディーがついちゃってるわね。
なるほど、そういう見方もできるか。
ともあれ、曲のリズム感を作らないような形で同じ言葉を繰り返す歌詞は、とても稚拙に聞こえてしまうのよ。
ラップとかの技法を除けば、一曲に含められる音数は300がせいぜいだから、同じ言葉ばかり使ってしまうのは、すごくもったいない。