第74話 トラン城半壊
文字数 1,709文字
どこか不安そうなリューズに寄り添い、メイスが彼の手に手を添える。
ギュッと彼の手を両手で包み、そしてリューズの身体を抱きしめた。
「私が、あなたをお守り致します。
何があろうと、私はいつもあなたの側におります。」
リューズがクスリと笑う。
メイスの頭を撫で、小さな肩を抱いて頬を寄せる。
「お前ごときが、私の何を守ると言うのだ。面白いことを言う人形よ。
私は…………はっ!」
リューズがメイスを庇って立ち上がり、右手に杖を構え窓を向く。
窓からまぶしいほどの閃光が室内に差し込み、あまりのまぶしさに杖で遮った。
「一体何事か!」
「リューズよ!お前を救いに来たのだ。」
声が響き、次の瞬間壁が一瞬で灰となって消え、外から冷たい風が一気に吹き込む。
部屋の中で風が渦を巻き、服がバタバタと激しくはためいて身体にまとわりつく。
顔を上げて、目を疑った。
巫子というのは普通の人間とは違うのか。
光り輝くセレスの身体からは巨大な金の翼が伸び、セレスの身体を宙に浮かべるようにゆっくりと羽ばたいている。
その美しい顔は、不敵な笑みを浮かべ腕輪のある手をリューズに伸ばしていた。
「セ、セレス!この化け物めっ!!燃え尽きて我が前から消えろ!」
杖をコンと床で鳴らし先に青い炎を灯すと、杖を振ってその先をセレスに向ける。
勢いよく吹き出した炎は、しかし難なくセレスの手の中に吸い込まれてしまう。
「くくっ、何とぬるい火よ。」
「くっ!くそ!燃えろ!燃えろ!」
笑うセレスに、次々と炎を繰り出す。
だが、セレスの手は限界がないのか炎はあっと言う間に吸い込まれるように消える。
「無駄な事よ、私の前にお前の力は通じぬ。
そうさな。お前が私の質問に答えれば、その人形なりとも助けてやろう。」
「ふざけたことを。」
「私は至って真面目だよ、リューズ。
お前に指示を出したのは誰だ。
お前自身にはこのように邪 なことを考える力など無かろう。」
「そのようなこと、お前にわかろうはずもない!」
「わかるから言うている。
もうあれから三百年たったか?お前がリリサの身体を乗っ取り暴れ回ったのは。
だが、あれは未熟な宿り身の一時の激情だった。
恐怖とおびえと怒り、であったのだろう。
しかしお前自身にその情など元より無い。」
「馬鹿な……事を……お前が知るわけがない!」
「マリサを人間たちに殺され、生き宮を失ったお前は訳もわからず彼女の死体から追い出され、そしてその場の強烈な感情に惹かれたのだ。
マリサの死におびえ、彼女を失った怒りに震えるあの………」
「うるさいっ!お前が何を知るという!消えろ!」
セレスの目の前で空間がひずんだ。
ぐにゃりと圧縮した空間が、次の瞬間はじけて爆発を起こす。
トランの民が聞いたこともないような破裂音が響き、城が地響きを上げて揺れた。
リューズの住まう塔が半壊し、屋根が大きく崩れる。
だが、土煙の向こうでセレスは何事もなかったようにため息をつき、片手を伸ばして手の平をリューズに向けた。
「交渉決裂か。さあ、では、次はお前を飲み込んでやろう。」
手を伸ばし、前に進んで壁が消えてむき出しとなった床にトンと足を付く。
リューズはメイスの人形をかばいながら、杖を振り下ろした。
「ええい!近づくな!」
ズンッと空気が音を立てて、大きな圧力がセレスの身体をはじき飛ばそうとする。
だが、彼は巻き起こる風に目を細めながら軽々とその力を片手で受け止め、まるでボールを返すようにリューズに放り投げた。
「無駄と言うたぞ。」
「なに?!うおおっ!」
そのまま帰ってきたその力を杖で受けた瞬間、リューズの身体が背後の壁や床と共に崩れ落ち、下の階へと落ちてゆく。
とっさに魔導で身体を保護したものの、無様に尻餅をつき歯がみした。
「く、くそっ!メイス、無事か?!」
「はい、大丈夫です。」
身体に落ちた瓦礫を払い、メイスの人形の無事を確かめ杖を付いて身を起こす。
だがその時、杖はブルリと震えて半分がバシンとはじけた。
「つ、杖が!」
「くくっ!なんてこと、お前の大切な杖が壊れてしまった。クスクス……」
輝き照らしながら言う彼に、歯がみするリューズの目が光る。
セレスの背後から白い魔導師達が駆けつけ、宙を飛びながらセレスに向けてそれぞれ力を放った。
ギュッと彼の手を両手で包み、そしてリューズの身体を抱きしめた。
「私が、あなたをお守り致します。
何があろうと、私はいつもあなたの側におります。」
リューズがクスリと笑う。
メイスの頭を撫で、小さな肩を抱いて頬を寄せる。
「お前ごときが、私の何を守ると言うのだ。面白いことを言う人形よ。
私は…………はっ!」
リューズがメイスを庇って立ち上がり、右手に杖を構え窓を向く。
窓からまぶしいほどの閃光が室内に差し込み、あまりのまぶしさに杖で遮った。
「一体何事か!」
「リューズよ!お前を救いに来たのだ。」
声が響き、次の瞬間壁が一瞬で灰となって消え、外から冷たい風が一気に吹き込む。
部屋の中で風が渦を巻き、服がバタバタと激しくはためいて身体にまとわりつく。
顔を上げて、目を疑った。
巫子というのは普通の人間とは違うのか。
光り輝くセレスの身体からは巨大な金の翼が伸び、セレスの身体を宙に浮かべるようにゆっくりと羽ばたいている。
その美しい顔は、不敵な笑みを浮かべ腕輪のある手をリューズに伸ばしていた。
「セ、セレス!この化け物めっ!!燃え尽きて我が前から消えろ!」
杖をコンと床で鳴らし先に青い炎を灯すと、杖を振ってその先をセレスに向ける。
勢いよく吹き出した炎は、しかし難なくセレスの手の中に吸い込まれてしまう。
「くくっ、何とぬるい火よ。」
「くっ!くそ!燃えろ!燃えろ!」
笑うセレスに、次々と炎を繰り出す。
だが、セレスの手は限界がないのか炎はあっと言う間に吸い込まれるように消える。
「無駄な事よ、私の前にお前の力は通じぬ。
そうさな。お前が私の質問に答えれば、その人形なりとも助けてやろう。」
「ふざけたことを。」
「私は至って真面目だよ、リューズ。
お前に指示を出したのは誰だ。
お前自身にはこのように
「そのようなこと、お前にわかろうはずもない!」
「わかるから言うている。
もうあれから三百年たったか?お前がリリサの身体を乗っ取り暴れ回ったのは。
だが、あれは未熟な宿り身の一時の激情だった。
恐怖とおびえと怒り、であったのだろう。
しかしお前自身にその情など元より無い。」
「馬鹿な……事を……お前が知るわけがない!」
「マリサを人間たちに殺され、生き宮を失ったお前は訳もわからず彼女の死体から追い出され、そしてその場の強烈な感情に惹かれたのだ。
マリサの死におびえ、彼女を失った怒りに震えるあの………」
「うるさいっ!お前が何を知るという!消えろ!」
セレスの目の前で空間がひずんだ。
ぐにゃりと圧縮した空間が、次の瞬間はじけて爆発を起こす。
トランの民が聞いたこともないような破裂音が響き、城が地響きを上げて揺れた。
リューズの住まう塔が半壊し、屋根が大きく崩れる。
だが、土煙の向こうでセレスは何事もなかったようにため息をつき、片手を伸ばして手の平をリューズに向けた。
「交渉決裂か。さあ、では、次はお前を飲み込んでやろう。」
手を伸ばし、前に進んで壁が消えてむき出しとなった床にトンと足を付く。
リューズはメイスの人形をかばいながら、杖を振り下ろした。
「ええい!近づくな!」
ズンッと空気が音を立てて、大きな圧力がセレスの身体をはじき飛ばそうとする。
だが、彼は巻き起こる風に目を細めながら軽々とその力を片手で受け止め、まるでボールを返すようにリューズに放り投げた。
「無駄と言うたぞ。」
「なに?!うおおっ!」
そのまま帰ってきたその力を杖で受けた瞬間、リューズの身体が背後の壁や床と共に崩れ落ち、下の階へと落ちてゆく。
とっさに魔導で身体を保護したものの、無様に尻餅をつき歯がみした。
「く、くそっ!メイス、無事か?!」
「はい、大丈夫です。」
身体に落ちた瓦礫を払い、メイスの人形の無事を確かめ杖を付いて身を起こす。
だがその時、杖はブルリと震えて半分がバシンとはじけた。
「つ、杖が!」
「くくっ!なんてこと、お前の大切な杖が壊れてしまった。クスクス……」
輝き照らしながら言う彼に、歯がみするリューズの目が光る。
セレスの背後から白い魔導師達が駆けつけ、宙を飛びながらセレスに向けてそれぞれ力を放った。