第8話 呪術と盟約
文字数 1,494文字
「な──なんだよ!?」
剣竜騎士団第6位の女が腰を曲げ前のめりに顔を近づけアイリの顔を
「ほんまに騎士団長やわ」
腕振り上げアイリは否定した。
「ち、違う! アイリ──の姉のマイリ・ライハラ────」
「そんなのどうでもようござりんすえ。騎士団長、今のあんたがほんまもん? それとも小娘の時がほんまもんなん?」
「どっちも────あ! あれはあれ、これはこれじゃん」
言い切ったアイリは自分で馬鹿なことを言ってると苦笑いを浮かべ不安になった。
エステルは目尻を下げ指摘した。
「言い方もおんなじやな。まあええ。
ズバリ突っ込まれてアイリは眼を
「す、好きでこうなったのと違う。森の精霊にいいようにされてしまったんだよ」
「へぇ!? 精霊ってそんなんできるんや。わっちも
初見の時に比べてエステルのくだけた話し方でアイリは本心だと思った。
「や、止めておいたほうがいいよ。とんでもなく上乗せされたらどうすんだよ。取り消しできないんだぞ」
アイリが警告すると第6騎士が感心したように
「ところでさぁ。さっき一緒におった
うっ、とアイリは息を呑んだ。
もう誤魔化しようがないとアイリは腹をくくった。自分が引き戻した奴だし責任があると
「さあ、教えたら────ええのに。服従するまで拷問で責め上げたろか」
「な、何を考えてるんだエステル?」
「ちょいばっかり蘇らしたい奴がおるんや。復活の呪法を教えたらええのに」
こいつが言ってる奴がとんでもない手合いで世界の秩序を
アイリ・ライハラ生家の居間で記憶喪失の魔女の
「どうした、イルミ?」
「北の地に──レクセ・テネブリスの────息吹が」
レクセ・テネブリス? 古代語のようだとクラウスは思った。レクセ──確か王だ。何とか王の息吹。どこかの列強が進軍をする前触れかもしれなかったが、テネブリスに覚えがなかったので
「テネブリスってどういう意味だ、イルミ?」
裏の魔女キルシが唇を動かし何かを言いかけ
一気に成人してしまった娘と女異端審問司祭、それとイカレた髪形の女騎士はデアチ国へ戻って行った。ノーブル国へただの
天空の
「なあイルミ、お前が娘に出会ったのも運命。記憶が戻るまでうちで暮らしなさい」
アイリの父がそう告げると記憶喪失の娘がしどろもどろに
「アイリ────アイリは──ファティ────グラディオ」
クラウス・ライハラは頭に包帯を巻いた娘を見つめる
アイリ・ライハラを殺してしまった