第17話 ぐるぐる
文字数 2,139文字
いきなり前を歩いていたアイリ・ライハラの群青の髪のほのかな明かりが登るように上に消えてしまった。
驚いた女騎士ヘルカ・ホスティラは左手につかんでいる発光石を振り上げ顔を強ばらせた。
洞窟 の天井に沿って広がる無数の糸の中央にイルミ王女の乗る馬車 ほどもの大きさをした胴体の手足の長い蜘蛛 がいた──いいや、もうそれは蜘蛛 とは呼べない別な生き物だった。
躯は黒と汚い黄色の縞模様でその模様が手足まで広がっており、躯の表面に人の指ほどもある硬毛が疎 らに生えている。
その尻先から出された糸が前足の爪2本で手繰り寄せられ少女が鼻から下をぐるぐる巻きにされてヘルカらを見下ろしていた。
「アイリ! 待ってろ! 今、助ける!」
女騎士は少女に怒鳴り剣 を引き抜いたがその振り上げた切っ先は蜘蛛 までの半分にも届かない。
どうするのだ!? 跳び上がっても掠 りもしない高さに怪物はいる。
「アイリさん、今、行きます!」
女暗殺者 イラ・ヤルヴァがそう大声で告げいきなり短剣を引き抜くと壁へ向け駆け出し、その勢いで壁を駆け上り腕を目一杯伸ばして斬りつけた。
数百と広がる糸の一本が切れて、同時にイラはそれ以上留まれずに地面に飛び降りた。
どうするかと3人が強張った顔で見上げていると、引き上げられたす巻きのアイリは爪2本に挟 まれて蜘蛛 の口に持ち上げられ始めた。
「2人で1人を持ち上げたら魔物に届くかもしれません!」
若い男の騎士がそう提案したが女騎士ヘルカは頭 振った。
「無理だ! 足にすら届かない!」
「すまんアイリ・ライハラ!」
女騎士ヘルカがそう言って剣 を鞘 に戻し入れたのを見てイラは少女を見捨てるのかと驚いた。
ヘルカ・ホスティラはいきなりしゃがみこんで拳 大の石をつかむと振りかぶり上へ向け投げ放った。その石がアイリを掠 り怪物の顔の脇に命中し、魔物はアイリを落としそうになりじたばたと引き寄せた。
「ごめんなさいアイリさん!」
イラも短剣を左手に握り替え自分の拳 ほどの石をつかむと振り回し上へ投げあげた。
女暗殺者 の放った石はす巻きのアイリの真ん中に命中し少女は眼を引き攣 らせフガフガと怒り始めた。それを見て次の石を投げようとしていた女騎士はぷぷぷと笑いをこらえた。
「ごめんなさい! ごめんなさい!謝って 投げました!」
『誤って の間違いだろうが!』
糸でぐるぐる巻きの下からアイリがフガフガとわめいた。
3人が代わるがわる大蜘蛛 へ投石を続けると魔物はぐるぐる巻きのアイリを楯 に顔は守れたが、大きな腹にぶつかった石で縞模様の腹の下が裂け始めた。
「あそこを狙うんだ!」
そう言って女騎士ヘルカの投げた拳 2個ほどもある石がアイリの顔面に命中し少女は鼻血を吹きだした。
「すまんと言っとるだろアイリ!」
『お前、ヘルカ、ぶち殺す!』
「なんと言っとるかフガフガにしか聞こえん!」
『お前、5回に1回はわざとやってるだろ!』
「やめろアイリ、お前のフガフガを聞くと手元が狂う!」
ヘルカがそう言い訳し投げた石が魔物の顔の側面に命中し落ちてきたその石がアイリの後頭部に命中した。とたんにす巻きのアイリは身をよじって怒りまくった。
40回ほど魔物の腹に当たった石についにその下腹に亀裂が広がり、内臓がドロッとたれ落ちてきて地面に積もり始め3人は慌てて蜘蛛 の下から逃げ出した。
直後、広がった3人を追いかけ小山となった内臓が広がり追いかけ始め、女騎士ヘルカはその黒いものに追いつかれ自分の足に這い上がり始めたそれに顔を引き攣 らせ発光石を振り向けた。
彼女の親指半分ほどの小さな蜘蛛 が多数しがみついていた。
「蜘蛛 だぞ! 追いついているのは蜘蛛 だ! 踏め! 踏み殺せ!」
怒鳴ったヘルカが片手で蜘蛛 の子を振り払い3人は地面に広がった蜘蛛 の子を次々に踏み殺し始めた。
寸秒、大蜘蛛 はアイリを抱いたままするすると地面に降りてくると3人へ尻を振り回し糸を飛ばし始めた。それでもヘルカらは揺れ飛んでくる糸を躱 し蜘蛛 の子を踏み殺し続けた。
わらわらといた蜘蛛 の子が半分ほどになると女騎士ヘルカは剣 を振り抜き、背を向ける魔物に斬りかかった。棘の様な硬毛は刃 を弾いたが、その合間に入り込むと柔らかいほどに切れ込んだ。
数回斬られると、魔物は急激に振り向きアイリを放り出し前足でヘルカに襲いかかった。その両足をイラ・ヤルヴァと若い男騎士が斬りつけ落とした。
後退 さり始めた大蜘蛛 をヘルカ・ホスティラは駆け追いつくと振りかぶった剣 先を横6つその下に2つ並んだ赤い目の間に打ち込むと、魔物はいきなりすべての足を丸めるように折り動かなくなった。ヘルカが剣 を引き抜いた瞬間、大蜘蛛 は風に散る灰の様にバラバラになると卵大の朱石 が残った。
ヘルカが振り向くとイラ・ヤルヴァと若い男騎士が笑顔を向けた。
「アイリさん、今、助けます」
イラがそう言ってぐるぐる巻きのアイリに駆け寄るとヘルカがやめておけと止めに入った。
「ひっくり返してみろ」
女騎士に言われイラが背を向けていたアイリを転がし振り向かせると真っ赤になって眉を吊り上げフガフガと怒っていた。
「解くと暴れそうだ。このまま3人で担いで行こう」
ヘルカに言われイラ・ヤルヴァは苦笑いするとアイリを起こしにかかった。
驚いた女騎士ヘルカ・ホスティラは左手につかんでいる発光石を振り上げ顔を強ばらせた。
躯は黒と汚い黄色の縞模様でその模様が手足まで広がっており、躯の表面に人の指ほどもある硬毛が
その尻先から出された糸が前足の爪2本で手繰り寄せられ少女が鼻から下をぐるぐる巻きにされてヘルカらを見下ろしていた。
「アイリ! 待ってろ! 今、助ける!」
女騎士は少女に怒鳴り
どうするのだ!? 跳び上がっても
「アイリさん、今、行きます!」
女
数百と広がる糸の一本が切れて、同時にイラはそれ以上留まれずに地面に飛び降りた。
どうするかと3人が強張った顔で見上げていると、引き上げられたす巻きのアイリは爪2本に
「2人で1人を持ち上げたら魔物に届くかもしれません!」
若い男の騎士がそう提案したが女騎士ヘルカは
「無理だ! 足にすら届かない!」
「すまんアイリ・ライハラ!」
女騎士ヘルカがそう言って
ヘルカ・ホスティラはいきなりしゃがみこんで
「ごめんなさいアイリさん!」
イラも短剣を左手に握り替え自分の
女
「ごめんなさい! ごめんなさい!
『
糸でぐるぐる巻きの下からアイリがフガフガとわめいた。
3人が代わるがわる
「あそこを狙うんだ!」
そう言って女騎士ヘルカの投げた
「すまんと言っとるだろアイリ!」
『お前、ヘルカ、ぶち殺す!』
「なんと言っとるかフガフガにしか聞こえん!」
『お前、5回に1回はわざとやってるだろ!』
「やめろアイリ、お前のフガフガを聞くと手元が狂う!」
ヘルカがそう言い訳し投げた石が魔物の顔の側面に命中し落ちてきたその石がアイリの後頭部に命中した。とたんにす巻きのアイリは身をよじって怒りまくった。
40回ほど魔物の腹に当たった石についにその下腹に亀裂が広がり、内臓がドロッとたれ落ちてきて地面に積もり始め3人は慌てて
直後、広がった3人を追いかけ小山となった内臓が広がり追いかけ始め、女騎士ヘルカはその黒いものに追いつかれ自分の足に這い上がり始めたそれに顔を引き
彼女の親指半分ほどの小さな
「
怒鳴ったヘルカが片手で
寸秒、
わらわらといた
数回斬られると、魔物は急激に振り向きアイリを放り出し前足でヘルカに襲いかかった。その両足をイラ・ヤルヴァと若い男騎士が斬りつけ落とした。
ヘルカが振り向くとイラ・ヤルヴァと若い男騎士が笑顔を向けた。
「アイリさん、今、助けます」
イラがそう言ってぐるぐる巻きのアイリに駆け寄るとヘルカがやめておけと止めに入った。
「ひっくり返してみろ」
女騎士に言われイラが背を向けていたアイリを転がし振り向かせると真っ赤になって眉を吊り上げフガフガと怒っていた。
「解くと暴れそうだ。このまま3人で担いで行こう」
ヘルカに言われイラ・ヤルヴァは苦笑いするとアイリを起こしにかかった。