第12話 救助
文字数 1,594文字
乾燥虫まみれの中から真っ先に救い出されたのは王女イルミ・ランタサルなのは騎士らとして当然。
二番手は女騎士ヘルカ・ホスティラなのも騎士らの心情として当たり前。
2人がしきりに唾 を吐き、顔を拭う傍 らで次に助け出されたのが女暗殺者 イラ・ヤルヴァなのに1人最後に回されたアイリ・ライハラが顔に乾燥虫を張りつかせたまま唸 っているのが憤慨 しているからだと騎士らは思っていた。
ぬらぬらだらけのイルミ王女をタオルで一生懸命に拭く侍女 ヘリヤの背後に赤い双眼が音もなく現れるといきなりヘリヤが後ろへ引っ張られ闇に呑み込まれた。
「大変! 誰か! ヘリヤが掠 われました!」
そう叫びイルミ王女が立ち上がり、発光石を侍女 が消えた方へ突きだし照らしたが、続く洞窟 奥にもがきながら引き摺 られてゆく彼女の姿と助けを求める声が響いた。
「ヘルカ! 持ってお行きなさい!」
その方へ騎士ら2人が走りだし追うように駆けだした3人目の女騎士ヘルカへ王女は名を呼び発光石を投げ渡した。
明かりが遠くに消え失せた闇に取り残された王女の傍 らに騎士団長リクハルド・ラハナトスと2人の騎士が警護につくと王女が火打ち石で手持ちの布に火をつけ揺らぐオレンジの明かりが辺りを照らし出した。
顔に張りついた乾燥虫をイラがひき剥 がすと虫の爪に頬 を引っ掻 かれ少女は呻 き口の中のぬめりを吐き出し始めた。
「ヘリヤ、大丈夫かしら──」
王女が呟 くと騎士団長リクハルドがうけあった。
「心配いりませぬ王女。ホスティラと2人の騎士、兵団20人と渡り合える力量があります。まもなく無事に連れ戻すでしょう」
顔を拭 いながらそれを聞いていたアイリはあまりにも安請 け合いなのではと思った。侍女 のことは心配だが、彼女を探しに自分が行けば、今度は王女の身が心配になる。イラに任せてとも考えたが洞窟内にどんなものが潜んでいるかわからない。
第1階層でこのありさまなら、まだまだ何があるかわかったものではなかった。
だけど────。
「イルミ、あんたが残りの騎士と洞窟 の外で待つなら、私が探しに行く」
布切れの炎に浮かび出た振り向いたイルミ王女の表情が痛々しかった。彼女は自分が侍女 救出の足枷 になっていると十分に理解している。
イルミ・ランタサルが少女に返事をしようとした刹那 、騎士らの追って入った洞窟 の奥から凄まじい剣 のぶつかり合う甲高い金属音が響き始めた。そのあまりもの凄まじさにイルミ王女は数多 の兵士がぶつかり合う戦場を思い起こさせた。その思いを断ち切ったのはイラに問いかけた少女の決意だった。
「イラ・ヤルヴァ! イルミ王女を死守できるか!?」
「任せて、アイリ!」
女暗殺者 の返事に押されてアイリ・ライハラは己の長剣 を手に立ち上がると駆け出す前に今一度座り込んでいる王女の顔を見つめた。
「わかったわ、アイリ・ライハラ。外で待ちます。ヘリヤを無事に連れ戻して」
イルミ・ランタサルが少女へ頷 いた瞬間だった。
アイリ・ライハラの立っていた場所から群青の光が洞窟 奥へと突っ走り、残されたもの達は起きた旋風 に顔を庇 った。
ヘリヤへ追いついた女騎士ヘルカ・ホスティラは、侍女 を引きずってゆく背の高いものへ発光石の明かりを振り上げた。
騎士らを見下ろしていたのは動物ではなかった。
ヘルカはそれが何か知っていたが、大きさがまるで違うことに唖然となった。
彼女が2人の騎士らに用心しろと言いかけた寸秒、その魔物が侍女 を放り出し死神が振り回す様な大鎌 を一組振り上げ、襲いかかってきた。
発光石を手にしたままでは剣 を振り回せない。
女騎士ヘルカ・ホスティラは魔物と自分らの中間に光振りまく石を放り出し剣 を引き抜くと先にいる騎士2人よりも素早く進み出て両手に握る剣 で魔物の鎌 2つを受けとめた。
受けとめた須臾 、魔物は振り下ろした大鎌 の左右外からさらに別の一組の大鎌 を騎士らへ打ち込んできた。
二番手は女騎士ヘルカ・ホスティラなのも騎士らの心情として当たり前。
2人がしきりに
ぬらぬらだらけのイルミ王女をタオルで一生懸命に拭く
「大変! 誰か! ヘリヤが
そう叫びイルミ王女が立ち上がり、発光石を
「ヘルカ! 持ってお行きなさい!」
その方へ騎士ら2人が走りだし追うように駆けだした3人目の女騎士ヘルカへ王女は名を呼び発光石を投げ渡した。
明かりが遠くに消え失せた闇に取り残された王女の
顔に張りついた乾燥虫をイラがひき
「ヘリヤ、大丈夫かしら──」
王女が
「心配いりませぬ王女。ホスティラと2人の騎士、兵団20人と渡り合える力量があります。まもなく無事に連れ戻すでしょう」
顔を
第1階層でこのありさまなら、まだまだ何があるかわかったものではなかった。
だけど────。
「イルミ、あんたが残りの騎士と
布切れの炎に浮かび出た振り向いたイルミ王女の表情が痛々しかった。彼女は自分が
イルミ・ランタサルが少女に返事をしようとした
「イラ・ヤルヴァ! イルミ王女を死守できるか!?」
「任せて、アイリ!」
女
「わかったわ、アイリ・ライハラ。外で待ちます。ヘリヤを無事に連れ戻して」
イルミ・ランタサルが少女へ
アイリ・ライハラの立っていた場所から群青の光が
ヘリヤへ追いついた女騎士ヘルカ・ホスティラは、
騎士らを見下ろしていたのは動物ではなかった。
ヘルカはそれが何か知っていたが、大きさがまるで違うことに唖然となった。
彼女が2人の騎士らに用心しろと言いかけた寸秒、その魔物が
発光石を手にしたままでは
女騎士ヘルカ・ホスティラは魔物と自分らの中間に光振りまく石を放り出し
受けとめた