第21話
文字数 600文字
家で夕食を食べ終えると若宮さんが先に風呂に入り、あとにボクが入った。そしてボクが聞かなければならない、若宮さんが語ることを渋る不都合な事実を暴く時間が来た。
「それで、あの痣と写真は何ですか?」
若宮さんはいつものようにソファへ横向きで寝そべっている。ボクは若宮さんの頭側の地べたに正座で座り、少し見下ろしはするが顔のほぼ真正面から問いかけた。ボクと目が合うと気まずいのか、体制を変え仰向けになり目を閉じる。
「大したことはないんだよ、本当に。君が気にすることじゃない」
時間がたてばボクが引き下がるとでも思っているか、この人は。仕方がないので、別の角度から攻めることにした。
「まだ、痣残ってますよね? 本当に大したことないか、残念ながらボクには判断できかねます。ボクの知り合いのいる病院で、しっかり検査して貰いましょう。隅から隅まで――」
病院と聞いたとたん、若宮さんは両手で顔を覆った。この人は病院嫌いだ。多くの人であふれかえる待合室で長時間待ち、検査室をあちこち巡り、知らない人間からあれこれ指示され、そしてまた多くの人が待つ待合室で結果待ちをする。基本のんびりしている人だから、待つことは苦ではない。しかし「人、人、人」と、多くの人間と対面することが耐えられないのだ。
考えるだけでも嫌になったんだろう。目は閉じられたままだが、ゆっくりと顔を覆っていた両手をお腹の上で組み、嫌そうに話し始めた。
「それで、あの痣と写真は何ですか?」
若宮さんはいつものようにソファへ横向きで寝そべっている。ボクは若宮さんの頭側の地べたに正座で座り、少し見下ろしはするが顔のほぼ真正面から問いかけた。ボクと目が合うと気まずいのか、体制を変え仰向けになり目を閉じる。
「大したことはないんだよ、本当に。君が気にすることじゃない」
時間がたてばボクが引き下がるとでも思っているか、この人は。仕方がないので、別の角度から攻めることにした。
「まだ、痣残ってますよね? 本当に大したことないか、残念ながらボクには判断できかねます。ボクの知り合いのいる病院で、しっかり検査して貰いましょう。隅から隅まで――」
病院と聞いたとたん、若宮さんは両手で顔を覆った。この人は病院嫌いだ。多くの人であふれかえる待合室で長時間待ち、検査室をあちこち巡り、知らない人間からあれこれ指示され、そしてまた多くの人が待つ待合室で結果待ちをする。基本のんびりしている人だから、待つことは苦ではない。しかし「人、人、人」と、多くの人間と対面することが耐えられないのだ。
考えるだけでも嫌になったんだろう。目は閉じられたままだが、ゆっくりと顔を覆っていた両手をお腹の上で組み、嫌そうに話し始めた。
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