第13話
文字数 866文字
調査報告
なぜか再び、太斉の怯えが酷くなっていた。
昨日の異様な浮かれ具合からは想像できないほど、怯えきっている。生徒が話しかけようとすると足早に去り、他の教師と会話をしていても一定以上の距離を開ける始末だ。昨日の今日で、いったい何があったのか生徒たちは考えたが、何も思いつかない。
教師の間でも太斉の変貌は不思議がられ、ひょっとして本当に心がまいってしまったのではないかと話し合った。教師という仕事は、表に見える以上に激務だからだ。そんな中、「美術教師」という問題まで抱えてしまったので、本当に休養が必要な状態にまで追い込まれているのかもしれない。だが、学校で起きる問題の全て……というわけではないが、ほとんどの決定権は校長が持っているため、教師たち自身も自分の仕事が手一杯なのを理由に首を突っ込まないことに決めた。何度も言うが、決定権はこちら側にはないのである。
それに太斉は前任の男性理科教師が女子生徒へのわいせつ行為疑いで停職になり、去年転任してきたばかりだった。付き合いは短い。例え太斉が辞めたとしても、またどこからか補充されるだろう。教師だけではない。社会というのは誰かが欠けても、代わりはいくらでも用意されている。教師たちは太斉のことはいったん忘れ、いつまでたっても終わりを見せない仕事にかかることにした。
◇
若宮さんは午前中出かけていたが、お昼までには帰ってきた。
お昼に何か食べたいものはあるか聞こうとすると、若宮さんから高校生へ提出する報告書を手渡される。そこには、ボクが出した間違った答えが記載されていた。
「若宮さん、これ……」
「大丈夫、これであってる」
「でも、首謀者はヱイさんなんですよね? この報告書、太宰鯛蔵が首謀者になってますよ」
「もう一つ、確かめたいことがあるんだ。だから、これでいく」
そこまではっきり言い切られると、もうボクには若宮さんを止める手立てはない――というより、逆らうことができない。これはもう、どうしようもないことなのだと自分に言い聞かせ、再度若宮さんに食べたいものを聞くことにした。
なぜか再び、太斉の怯えが酷くなっていた。
昨日の異様な浮かれ具合からは想像できないほど、怯えきっている。生徒が話しかけようとすると足早に去り、他の教師と会話をしていても一定以上の距離を開ける始末だ。昨日の今日で、いったい何があったのか生徒たちは考えたが、何も思いつかない。
教師の間でも太斉の変貌は不思議がられ、ひょっとして本当に心がまいってしまったのではないかと話し合った。教師という仕事は、表に見える以上に激務だからだ。そんな中、「美術教師」という問題まで抱えてしまったので、本当に休養が必要な状態にまで追い込まれているのかもしれない。だが、学校で起きる問題の全て……というわけではないが、ほとんどの決定権は校長が持っているため、教師たち自身も自分の仕事が手一杯なのを理由に首を突っ込まないことに決めた。何度も言うが、決定権はこちら側にはないのである。
それに太斉は前任の男性理科教師が女子生徒へのわいせつ行為疑いで停職になり、去年転任してきたばかりだった。付き合いは短い。例え太斉が辞めたとしても、またどこからか補充されるだろう。教師だけではない。社会というのは誰かが欠けても、代わりはいくらでも用意されている。教師たちは太斉のことはいったん忘れ、いつまでたっても終わりを見せない仕事にかかることにした。
◇
若宮さんは午前中出かけていたが、お昼までには帰ってきた。
お昼に何か食べたいものはあるか聞こうとすると、若宮さんから高校生へ提出する報告書を手渡される。そこには、ボクが出した間違った答えが記載されていた。
「若宮さん、これ……」
「大丈夫、これであってる」
「でも、首謀者はヱイさんなんですよね? この報告書、太宰鯛蔵が首謀者になってますよ」
「もう一つ、確かめたいことがあるんだ。だから、これでいく」
そこまではっきり言い切られると、もうボクには若宮さんを止める手立てはない――というより、逆らうことができない。これはもう、どうしようもないことなのだと自分に言い聞かせ、再度若宮さんに食べたいものを聞くことにした。
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