第3話 何故、日本においては女性の管理職者の比率が上がらないのか?

文字数 1,625文字

 第2話で「何故?会社員にとって不公平な人事が行われるのか?」という事について取り上げたが日本においてはもっと切実な問題で不公平な人事が会社で行われている。
 それは「女性の管理職者の比率」が一向に高くならない事である。1986年に「男女雇用機会均等法」が施行され30年以上経つが日本においては女性の役職者の比率は10%前後と低いままだ。昨年の2022年は少し改善して13.9%にあがったが、それでもこの数字はOECD加盟国の44か国中、ワースト4位。さらにジェンダーギャップ指数では146か国中116位と惨憺たる数字である。政府の方は女性管理職者の比率を2030年には30%に引き上げる目標をかかげているがこの目標は達成されそうにない。
 それでは女性が男性と比較して仕事をする能力が劣っているか?というと、少なくとも43年間の会社員生活を経験した私からするとそのように感じた事はない。男性でも仕事の出来る優秀な人材はいるし、出来ない人材もいる。女性も同じように優秀な人材もいれば、この人はどういう教育を受けてきたのか?という人もいた。
 しかし、日本でも最近では女性のほうが優秀で仕事が出来る社員が増えてきた気がする。その背景として昔は女性は4年制の大学で学ぶ数が少なかったし、4年制の大学で学んでいても学部は、文学部というケースが多かった。社会に出て仕事するのに文学部出身者が、他学部の経済や法学部の出身者に比べて劣っているとは言えないし、文学部出身者でも大会社の社長になっている人もいる。ただ、根拠のない理由で女性は大学に進学するなら文学部が良いという不文律は存在していたと思う。
 それが総合職で働く女性も増えてくると大学でも経済学部や法学部や社会学部さらには工学部で学ぼうという女性が増えてきた。そして、そうした学部での女性の学業の成績は男子学生と比べて低いと言う事はなく、むしろ平均すると女性の方が成績が良いという大学のほうが多いようだ。その為、信じられない事だが大学の入学試験で点数の良い順に合格者を出すと女子の方が多くなってしまうので、男性の合格する点数を女性よりも低くして男性合格者の人数を多くするという事実もあったようだ。
 しかし、大学を卒業して会社に入社すると女性には「管理職者の比率が低い」という不公平な人事が存在するという厳しい現実が待っている。言ってみれば会社員になったスタート時点で女性というだけでハンデを背負って競争社会の中に入ってくる事になる。
 いつまでもこのような状態を続いていくのだろうか?「知恵ある人類」と呼ばれたホモサピエンスがアフリカのタンザニア地方に誕生したのが約20万年前と言われている。それから人類は狩猟採集生活から農耕牧畜生活と環境の変化に合わせて進化してきた。
 よく言われる事だがICT(情報通信技術)の発達により人類の在り方は今、大きな転換期を迎えている。男性でも女性でもないが人類と同じように学習する知能をもって行動するロボットのような存在も出現してきた。そうした外部環境が変化していく中で、いつまでも男性は外に出て仕事をして、女性は家の中で家事をするという構図は変革していかなければならない。
 男性からすれば今までのように男性優位の社会で会社での管理職も殆ど男性という方が仕事をしやすい環境なのかも知れない。しかし、その居心地の良さになれていい気になっていると「ゆでガエル状態」になっていて、気がついた時には自分も会社もそして社会も倒れて無くなってしまう事になりかねない。特に女性の管理職が10%前半と極端に低い日本の会社で働く男性はその居心地の良さが会社の発展を拒む要因になっている事を自覚すべきである。
 男性とか女性とか性別にとらわれて判断するのではなく、それぞれの個人が持っている違う個性が混じり合って新しい価値を生みだす事が、人間のこれから先の未来を作るのに大切な事になってくると思う。
 
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