第2話 「何故?会社の人事は公正でない」と感じられるのか

文字数 1,241文字

 会社員なら多くの人が「会社の人事」については一度は不満を持った事があると思う。
 会社は決算期を終えて新たな年度を迎える時に新しい人事を行うケースが多い。会社の規則で社長や取締役の任期は何期迄でという決まりがあり任期を終えた役員は退任して、新年度から新たな役員でスタートする。それ以外にも業績の不調な会社が人事を一新して新しい年度から頑張ろうと言うケースもある。そして役員人事に合わせるようなような形で部門長などの人事も行われる場合が多い。
 そして、昇格した人が誰もが納得するような実力のある人で仕事で実績を上げて人望もある人ならば良いが、中には「何故?あの人が昇格するのか?」と言う人が選ばれる場合も多々ある。
 それでは何故会社はそういう多くの人が納得しないような人事を行うのであろう?よく言われるのが会社の事情と個人の事情は一致しないと言う事だ。会社員にとって会社の事情を理解出来れば良いのだが、多くの場合は会社の事情は会社員にとって理解出来ないものである。そして、納得できない人事の後で、昇格した人が頑張って努力して会社の業績がアップすれば良いが、そうならないケースもある。そうなると「やはりあんな人では駄目でないか?」と会社員の会社に対する不満は益々大きくなって自然と仕事に対する意欲も低くなり会社の業績も悪化すると言う事になりかねない。
 これ程、会社の業績に大きな影響を与える会社の人事だが、会社員から見て「何故?不公平な人事が行われるのか」。その理由を考えると「会社は誰の為にあるのか?」と言う問題に突き当たる。会社員にとって会社の仕事が「好きでたまらない」という人もいるだろうが、大多数の会社員にとって会社の仕事は「生活するために必要な賃金を得るため」というのが大きな理由だ。
 それに対して会社という存在は、会社を取り巻く全てのステークホルダー(利害関係者)のためにある。具体的には会社の所有者で株主、そして所有者である株主のエージェント(代理人)として会社経営を行う経営者、それに顧客、取引先、仕入先、金融機関、行政機関、そして従業員と多くの人のためにある。
 従って、わかりやすい例をあげれば会社の「取引先の社長の子息」は会社にとって仕事が出来る、出来ないに関わらず彼の存在自体が会社にとって利益を与える可能性がある。そのため「取引先の社長の子息」を人事で優遇して昇格させれば取引先との関係がより密になり会社に利益をもたらすと考えれば特別の人事が行われる。仕事が出来て会社に利益を与える会社員も有力な取引先の子息も会社にとっては将来、利益を与える可能性があるという観点からは変わりがないのである。
 会社員という立場で会社で仕事をしていると近視眼的に物事を考えがちになる。だが、会社は全てのステークホルダーの為にあると考えれば不公平な人事をされても「納得は出来ない」「腹落ちしない」などの怒りの気持ちも少しは落ち着いて冷静に自分を見つめ直すきっかけになるかもしれない。
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