第4話 私は「何故、受験」に失敗したのか?

文字数 1,978文字

 受験に失敗したのは最近の事ではない。そして受験に失敗したのは大学受験ではなく高校受験の時の事だ。高校受験の時だから既に50年以上も前の話しである。そんな昔の事なのにそれでも私は「何故、自分は第一志望の学校に落ちたのか」を今でも考える時がある。
 まず高校受験をした中学時代に私は通っていた中学校に対して不満を持っていた。その不満は中学の授業に対する不満ではなく、入学した時から感じた規則の厳しさだった。具体的には制服の学生服というものが嫌いだった。何故、嫌いになったかはまず中学に入学した時に学生服を購入するのだが、中学3年間の期間、ずっと着られるようにサイズも大きめのサイズにする。それが着る本人にとっては袖は長くて丈も長くてかっこ悪くてしょうがなかった。その自分の身体より大きくて似合わない詰め襟の学生服を毎日着なければならないのかと言う事は不満だった。
 そして他にも何故、中学になると生徒は皆同じ学生服というものをを着なければならないのか?という不満があった。中学生になる頃は自我が芽生える頃であり皆と同じものを着せられるのに抵抗があったのかもしれない。又、学生服は何着も持っている生徒はいなくて大抵は一着の学生服を毎日、同じものを着るのだが不潔ではないか?と思った。上着もそうだが特ににズボンは同じものを毎日着ていれば汚れてくるし何よりも嫌だったのが「テカテカに光ってくる」ズボンだった。その光ってきたズボンをはいて学校に行くのは苦痛だった。
 又、学生帽にも抵抗があって、学生帽はかぶらないで手に持って登校していた。当然、学校の規則としては登下校時には学生帽を着用するのは義務づけられていたから、風紀担当の先生に見つかれば注意されたのを覚えている。
 私が通っていた公立の中学校は、進学に力を入れている学校で私立高校の受験3科目である国語、数学、英語は中2年で中3迄の教科書の殆どは終えて、3年生になると受験勉強に備えるという勉強に厳しい学校だった。先生達は熱心に勉強を教えてくれたので授業に対しての不満はなかった。今でも満足していて良い中学校だったと思うし、担任の先生にも感謝している。
 但し学生服を始めとして、生徒が行動する際の校則が学校の中や外でも細かく決められていて厳しかったのは納得がいかなかった。校則を厳しくすれば生徒は一生懸命に勉強するものではないと思っていた。その為、高校はもっと自由な校風の学校に通いたいと思っていた
 だから、私が受験する高校の志望理由はまず第一に「自由な校風」、そして制服はなければ一番良いのだが制服がない高校は当時殆どなくて、詰襟の学生服でなければ紺のブレザーの制服というのが多かった。私の希望したのは詰め襟の学生服よりもブレザーの学校の方だった。
 そして、大学に入学するのに受験勉強をするのは嫌だったので、推薦で大学に行ける大学の付属高校と言うのも希望する学校の条件だった。さらにもうひとつの志望理由としては「男女共学」だった。その理由は、男子校というのは小学校から中学の9年間男女共学で慣れている自分にとっては抵抗があったからだ。
 以上の理由で第一志望校を決めたのだが親にも中学の担任にも反対された。その理由は第二志望の学校の方が大学に行った時に優位だと言う理由だった。第一も第二志望の学校も共に大学の付属校であり、自由の校風が特長だった。ただし違っていたのが第一志望の高校は制服はブレザーで共学、第二志望の高校は学生服で男子校と言う事だった。合格するのに必要な偏差値はほとんど差はなかった。
 受験の結果は第一志望は不合格で第二志望には合格したので担任の先生や両親の勧めた学校にすんなりと進学した。しかし、私の中ではどうしても第一志望の高校に合格したかった気持ちは捨てきれずに残った。学生服と男子校という私の進学したくない理由はすぐには解消されなかった。これが偏差値でも大きく差がついていて合格する見込みがない学校ならあきらめもついたのだが未練は残ったままだった。
 そして、50年以上経った今でも第一志望の高校に合格したら自分のその後の人生はどうなっていただろう?と今でも時々思う事がある。両校とも付属校で推薦で入学出来る大学も私学の最高峰の大学というわけではない。俯瞰して見ればたいした違いがない高校と大学の事で今でもこだわる必要はないのかもしれない。だから大多数の人にとってはどうでも良い問題かもしれない。
 だが自分にとっては重要な事であり、人生は思うようにならないものだと考える。そして失敗した理由も本人にははっきりとわからないと言う事がある。だが自分が考えているのとは別で思うようにならなかった方が先の結果としては良かったと言う事もある。今の私があるのも第一志望の高校受験に失敗したからかもしれない。
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