第17話 職業、魔法使い

文字数 1,218文字

 このお店の雰囲気にも慣れてきたのか、魔理沙さんは香りを楽しむようにワイングラスを回します。

「郷に入っては郷に従えってな……私もだいぶ、この店の雰囲気に慣れてきたぜ。」

「逆に僕は、酒盛りみたいなワイワイした感じの場所には未だ慣れてません……」

「ありゃ慣れるもんじゃないぜ。成るなもんだ。酒を飲み過ぎたらみんなああなる。」

「二日酔いとか大丈夫なんですか……?」

「全くもってダメだな!二日酔いどころか、ひどい時にゃ五日頭痛が続く時もある。」

「うわぁ……」

 あなたは、絶対に酒盛りはしないと心に誓いました。
 ワイングラスを一口、口に含みます。
 魔理沙さんは、だいぶアルコールが回ってきたのか、顔が少し赤いです。
 いつもの勝気で元気なイメージとは一変、垢抜けた雰囲気が程よいアルコールによって助長され、妙に大人びているように見えます。

「あんたは飲まないのか?」

「僕ですか?」

「こんな美味しいのに……飲まなきゃ損ってもんだ。それに……」

「あぁ、いつも、お店を閉めてからって決めているんです。お客さんに普通に失礼ですしね。」

「そうか……なぁ」

 魔理沙さんは、ニヤリとします。

「差し入れだぜ。」

 そう言って取り出したのは、一本の瓶を取り出しました。
 中身の色は……黄色です。

「それは……リキュール?」

「何かはわからんが、前紅魔館に行った時にとってきたやつだぜ。」

「とってきた?」

「まあ気にすんなって」

「はあ…… これ、もしかしてリモンチェッロですかね」

 ボロボロのラベルを見ながら、あなたは言います。
 外側はボロボロですが、損傷はなく、保存状態は良さそうです。
 あなたは魔理沙さんに、これを開けてもいいか聞きます。

「もちろん、飲むために持ってきたんだからな。あ、」

「どうしました?」

「店、閉める時間じゃないか?」

時計を指して、魔理沙さんはそう言います。

「ほんとだ……ま、魔理沙さんこれは明日にでも」

「ん?ほら、閉めてこいよ。あんたもこれ、飲みたいんだろ?」

「うぐっ」

ニヤニヤする魔理沙さんは、あなたから返されたボトルを目の前に突き出してきます。

「…………くっ。いいんですか?飲ませてもらって」

「まあ、いつもここで飲む酒はうまいから、たまにはギャフンと言わせたいものさ。」

「わかりましたよ……ちょっと待っててくださいね?」

 そう言って、あなたはお店を閉めに行きました。
 外のポップを回収し、店のドアの鍵を閉めます。
 ガス灯の明かりを消にまわり、最低限の明かりで薄暗くなった店内に戻ります。

「せっかくだから、奥で飲みましょうか?」

「あんたの部屋でか?いいのか?」

「はい」

「じゃあ遠慮なく、だぜ」

 あなたは、魔理沙さんがルンルンで奥に行く姿を見届けてから、最後のガス灯の灯火を消しました。
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