第10話  開幕、紅白白黒弾幕勝負

文字数 1,427文字

 あなたが、幻想郷に迷い込んでから、十日ほど。
 神社での生活に慣れてきたあなたは、今日もいつものように、境内の掃除をしていました。

「……あっつぅ」

 本格的に蒸し暑くなってきたのか、神社の巫女である霊夢さんは、日陰でお茶を飲んでいます。

 ボーッと、虚空を見つめてお茶を飲む霊夢さん。

 その姿を見ていると、保護してもらっている身のあなたでさえ、自堕落な気分になっていきます。

「霊夢さーーん、少しは手伝ってくださいよーー……。はぁ……。」

 クーラー、扇風機さえ存在しない幻想郷は、あなたにとって地獄に変わりありません。

「でも、氷はあるんだよな…」

 そんな、ちょっとした謎に首を捻っていると、誰か人がきたのか、鳥居の方から声がしました。

「よう霊夢!きてやったぞー!」

 振り返ると、白と黒の服に身を包んだ、金髪の少女が立っていました。

「そこのお前さん、珍しいな。参拝に来たのか?」

「あ、いや、僕は、……えと」

 魔法使いのような格好の彼女は、ニカッと笑顔を作ると、自己紹介をしてくれました。

「私は、霧雨魔理沙。魔法使いをやってるぜ。よろしくな!」

「あ、僕は村雨、村雨祐也です。…に、人間です」

「あはは、そりゃどこからどう見ても人間だな!」

 クツクツと笑う魔理沙という少女は、それで、と切り出します。

「ここのオンボロ神社には、一人巫女がいるはずなんだが……見てないか?………あ」

「霊夢さんなら、社務所で魂が抜けてます」

「まだ冥界には行きたく無いわよ」

「ヒッ」

 あなたは、小さい悲鳴をあげてしまいます。
 肩に手を置かれて振り返ってみると、不機嫌そうな顔をした霊夢さんが立っていました。

「あはは、……あー、お二人はお知り合いで?」

 冷や汗を手で拭いながら、笑顔で魔理沙さんは一歩、後退します。

「あぁ、そういえば、誰にも話してなかったわね、こいつのこと……こいつ、村雨祐也は、外からきた人間よ。」

「へぇ、なるほど。」

「そういうことだから、うちで保護してるってわけ。」

 霊夢さんは、そう言って肩を竦めます。

「なるほど、じゃあ自己紹介が済んだところで、霊夢、弾幕で勝負だぜ!」

「嫌」

「スペカ四枚、いや、三枚分でいいから!」

「嫌。暑い。」

「やる気が全く起きない日こそ、体を動かすのがいいんだろ!」

「暑いのに動いてどうすんの。馬鹿なの?」

「まあそんなこと言わずに、ちょっとだけ、ちょっとだけでいいからさぁ!」

「嫌」

「祐也もなんか言ってくれってー……」

「えぇ……」

「そんな、あからさま『振ってくるんじゃない』って顔すんのやめろよー……」

 がく、っと肩を落とす魔理沙さん。
 しかしあなたは、その『弾幕ゲーム』とやらを一度も見たことがありません。 
 要は、あなたは少し気になっています、その『弾幕ゲーム』とやらに。

「お、今、興味を持ったな、少年よ!」

「いや、これh」

「よーし霊夢!祐也が弾幕ゲーム見たいってことで、ほら、やろうぜ!」

「………………わかった、わかったもうやればいいんでしょ!手加減はしないからね!」

「よっしゃ!さすが霊夢!よっ、幻想郷一の弾幕ゲーマー!」

「そんなものにはなりたくないわね……」

 そうして、あなたは蒸し暑い昼下がりに、弾幕ゲームを初めて観戦することになりました。
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