第16話 開幕、白黒帽子の魔法使い
文字数 1,481文字
あなたが紫さんにお店をもらって翌日。
『村雨円楽店』は、開店一時間前までには、行列ができていました。
人間はもちろん、妖怪も。
その時になって、あなたは紫さん以外の妖怪と触れ合うことになりました。
烏天狗、河童、魔法使い。主にそんなところでしょうか。
昼の営業は喫茶、夜の営業はバーにする方針にしたため、珍しいお酒が飲めると思ってきた人は、残念そうに帰って行きました。
夜は夜で、大繁盛。
品薄でメニューが少ないにもかかわらず、なかなかの売り上げでした。
まあ、それらは紫さんからもらったものですが。
しかしまあ、なるべくすぐにでも開店しないと、その建造物の意味を為しませんし、いつまで経っても開店しない店なんて、怪しいの極みです。そういう理由もあってのことだったのでしょう。
数週間経つと、客足も穏やかになって行きました。
特に夜のバーは、幻想郷の人間たちにとって、危険極まりないところに変貌するからです。
妖怪は、人間を襲います。
ここ幻想郷では、人間の里では人は襲えない取り決めになっていますが、たくさん妖怪がいたら、どうなるかわかりません。
なので、一部の特殊な人と妖怪しか、夜のバーには来ません。
ある日、夜のバーを閉める直前、珍しく一人の人間が来店しました。
「よー、やってるかー?」
黄色い声に、白黒の洋衣装、そして明るい金髪が、あなたに誰かを教えてくれます。
「魔理沙さん! 一昨日ぶりです。」
魔理沙さんは、定期的に夜のバーに来店してくれる、数少ない人間のお客さんです。
魔理沙さんは、グラスを拭くあなたの目の前のカウンター席に座ります。
「今日は、新しいお酒が入ったんですよ。試してみません?」
「おっ、いいじゃねぇか! 是非飲ませてくれ。」
あなたは、作り置きしてあった肉料理を河童製作の電子レンジ風魔道具で温めつつ、縦長のワイングラスを用意します。
ワインセラーから、なで肩のワインボトルを出し、そのグラスに注ぎます。
「これ……ワイン、グラスで、ワインボトルだよな?でも赤くないぞ?」
「これは、白ワインと言います。ワインの色は、赤、白、ロゼの三種類あります。幻想郷にはなぜか赤しかないんですよね……」
「そうだったのか……あ、ちなみに、幻想郷に赤ワインがあるのは、吸血鬼が好んで飲むんで、それで広まったんだ。」
「えっ、吸血鬼なんかいるんですか?!」
「まあ、見た目幼女で可愛いけどな。」
「幼女なんですか……」
「まあ、そうそう自分の屋敷から出てこないから、出くわさないと思うけどな。」
「ニートじゃないですか……」
幼女のニートとはいかに、そう思ったあなたでした。
それにしても、と魔理沙さんが言います。
「このワイン、赤いやつと違って、何だか私好みだぜ。爽やかというか、何ていうか」
「赤よりはフレッシュですよね。」
「そうそう!そんな感じだぜ。グラスも赤ワインのやつと違うし……」
「香りの感じが違うんです。赤ワインには大きなグラス、白ワインには小さなグラスが適してます。白ワインは、口に含むと『走る』、赤ワインは『広がる』感覚だと思います。」
「私は白の方が好きだな。」
「今ある一番いいやつを開けた甲斐がありました」
「こっちの鶏肉のやつとも相性抜群だな!これ滅茶苦茶うまいぞ?!」
「嬉しいこと言ってくれるじゃありませんか〜!」
蒸し暑い夏の夜。
あなたは、閉店した店内で、魔理沙さんと楽しくお酒に酔うのでした。
『村雨円楽店』は、開店一時間前までには、行列ができていました。
人間はもちろん、妖怪も。
その時になって、あなたは紫さん以外の妖怪と触れ合うことになりました。
烏天狗、河童、魔法使い。主にそんなところでしょうか。
昼の営業は喫茶、夜の営業はバーにする方針にしたため、珍しいお酒が飲めると思ってきた人は、残念そうに帰って行きました。
夜は夜で、大繁盛。
品薄でメニューが少ないにもかかわらず、なかなかの売り上げでした。
まあ、それらは紫さんからもらったものですが。
しかしまあ、なるべくすぐにでも開店しないと、その建造物の意味を為しませんし、いつまで経っても開店しない店なんて、怪しいの極みです。そういう理由もあってのことだったのでしょう。
数週間経つと、客足も穏やかになって行きました。
特に夜のバーは、幻想郷の人間たちにとって、危険極まりないところに変貌するからです。
妖怪は、人間を襲います。
ここ幻想郷では、人間の里では人は襲えない取り決めになっていますが、たくさん妖怪がいたら、どうなるかわかりません。
なので、一部の特殊な人と妖怪しか、夜のバーには来ません。
ある日、夜のバーを閉める直前、珍しく一人の人間が来店しました。
「よー、やってるかー?」
黄色い声に、白黒の洋衣装、そして明るい金髪が、あなたに誰かを教えてくれます。
「魔理沙さん! 一昨日ぶりです。」
魔理沙さんは、定期的に夜のバーに来店してくれる、数少ない人間のお客さんです。
魔理沙さんは、グラスを拭くあなたの目の前のカウンター席に座ります。
「今日は、新しいお酒が入ったんですよ。試してみません?」
「おっ、いいじゃねぇか! 是非飲ませてくれ。」
あなたは、作り置きしてあった肉料理を河童製作の電子レンジ風魔道具で温めつつ、縦長のワイングラスを用意します。
ワインセラーから、なで肩のワインボトルを出し、そのグラスに注ぎます。
「これ……ワイン、グラスで、ワインボトルだよな?でも赤くないぞ?」
「これは、白ワインと言います。ワインの色は、赤、白、ロゼの三種類あります。幻想郷にはなぜか赤しかないんですよね……」
「そうだったのか……あ、ちなみに、幻想郷に赤ワインがあるのは、吸血鬼が好んで飲むんで、それで広まったんだ。」
「えっ、吸血鬼なんかいるんですか?!」
「まあ、見た目幼女で可愛いけどな。」
「幼女なんですか……」
「まあ、そうそう自分の屋敷から出てこないから、出くわさないと思うけどな。」
「ニートじゃないですか……」
幼女のニートとはいかに、そう思ったあなたでした。
それにしても、と魔理沙さんが言います。
「このワイン、赤いやつと違って、何だか私好みだぜ。爽やかというか、何ていうか」
「赤よりはフレッシュですよね。」
「そうそう!そんな感じだぜ。グラスも赤ワインのやつと違うし……」
「香りの感じが違うんです。赤ワインには大きなグラス、白ワインには小さなグラスが適してます。白ワインは、口に含むと『走る』、赤ワインは『広がる』感覚だと思います。」
「私は白の方が好きだな。」
「今ある一番いいやつを開けた甲斐がありました」
「こっちの鶏肉のやつとも相性抜群だな!これ滅茶苦茶うまいぞ?!」
「嬉しいこと言ってくれるじゃありませんか〜!」
蒸し暑い夏の夜。
あなたは、閉店した店内で、魔理沙さんと楽しくお酒に酔うのでした。